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緊急事態宣言再び……政治家のスタイルとは

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年1月12日 17時25分

緊急事態宣言再び……政治家のスタイルとは

「報道部畑中デスクの独り言」(第228回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、2021年1月7日に再発令された緊急事態宣言について—

2021年1月7日、会見を行う菅総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202101/07kaiken.html)

年始は仕事始めと言ってもしばらくは“おとそ気分”が抜けないものですが、今年(2021年)は早々、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の再発令などで、濃密な1週間となりました。

1月7日、菅総理大臣は首都圏1都3県を対象区域とする緊急事態宣言を再発令しました。期間は1月8日~2月7日までの1ヵ月間。この日、午前の諮問委員会で西村経済再生担当大臣は「昨年春以来の経験」「国内外の研究の知見」と述べ、“一定の学習効果”の上での再発令であることを強調しました。

今回の再発令は前回の宣言と違い、「経済活動を幅広く止めるものではなく、感染リスクの高い場面に効果的な対策を徹底して行く」とされました。

具体的には飲食店への対策を軸とし、「飲食店の営業時間は午後8時まで」「酒類の提供は午前11時から午後7時まで」を要請。応じない場合は施設名を公表し、要請に応じた場合は、飲食店に対して協力金が支払われます。金額はこれまでの1日4万円から、6万円に引き上げられました。

その他、不要不急の外出・移動自粛の要請、特に午後8時以降の外出自粛の徹底。イベントについては観客人数5000人、かつ収容率50%以下の制限。さらに職場への出勤者を7割削減するテレワークの徹底が盛り込まれています。

一方、学校については小中学校・高校に対して一斉休校は求めず、部活動については大声を出したり、身体に触れるスポーツなどに関しては一定の制限を加えるとしています。

【東京都らが緊急事態宣言を要請】面談後、報道陣の取材に応じる小池百合子都知事(右)、西村康稔経済再生担当相=2021年1月2日午後、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

諮問委員会終了後、出席した経済の専門家からは「ひと月でできるかどうかはわからない」「短期的に経済にコストがかかっても、感染者を減らして行く必要がある」という声がありました。諮問委員会、国会事前報告、対策本部会合と、その手続きは粛々と進められた印象です。

「今回の世界規模の感染の波は、私たちが想像していたものを超え、厳しいものになっている。もう一度、皆さんに制約のある生活をお願いせざるを得ない」

菅総理は夕方の記者会見でこう述べた上で、「1ヵ月後には必ず事態を改善させる。感染拡大防止をするために全力を尽くし、ありとあらゆる方策を講じて行く」と、終息への決意を強調しました。飲食店を軸とする対策になったことについては、「東京の(感染者の)約6割が感染経路不明、その大部分が飲食店に起因する」と、その理由を述べました。

再発令に至るまでを振り返ると、いくつか気になることがありました。再発令の検討が表明されたのは、1月4日の菅総理の年頭会見。本来は年頭の所感が中心となるところですが、発言は「コロナ中心」となりました。

再発令検討の理由について、「首都圏の1都3県では12月に人出があまり減らなかった。正月三が日も感染者が減少していない。こうした状況を深刻に捉え、より強いメッセージを発出することが必要と考えた」と述べました。発言の端々からは「時短要請しても聞かないから業を煮やした」……そんな思いがにじんでいたように感じます。

これに先立つ1月2日には、1都3県の知事が西村担当大臣に緊急事態宣言の速やかな検討を要請していました。

「さっそくご対応いただいた」

東京都の小池知事は総理会見のあと、話していましたが、自治体の立場から見れば「国が強いメッセージを発しないから感染者が減らない」という主張になります。双方の発言を聞いていると、政府と自治体、とりわけ菅総理と小池知事とのギクシャクした空気は、いまだ続いているようにも見えます。

ここで押さえておきたいのは、政治家としての“スタイル”です。小池知事はメディア出身ということもあり、身振り手振りを交え、わかりやすいフレーズを繰り出し、国民に語り掛けます。

政治家は「言葉が大切」と言われますが、まさにそのテクニックを駆使しているように見えます。それは毎日のようにメディアで取り上げられることもあり、強調されて行きます。

出邸する菅義偉首相=2021年1月7日午前、首相官邸 写真提供:産経新聞社

一方、菅総理については以前、「死んだ眼」をしていると小欄でお伝えしたことがありました。この「死んだ眼」は表情を殺し、相手に手の内を悟らせないという、ある意味、政治家に必要な資質の1つとも感じます。だからこそ、無表情ななかでの「1ヵ月後には必ず事態を改善させる」という決意は、重みがある発言と言っていいでしょう。

政治家にはそれぞれのスタイルがあり、どちらがいいかということは言えません。ただ、これを“対決構図”と捉えたり、そのイメージだけでよし悪しを判断することは、本質を見誤る可能性がある……冷静な見方が必要だと思います。

もう1つ気になったのは、国会の事前報告にあたる1月7日午後の衆参両院の議院運営委員会で総理が出席せず、西村担当大臣が答弁に立ったこと。昨年(2020年)4月の発令の際は安倍総理(当時)が出席しており、野党からはやはりその点を突かれました。

「直接、国民にお礼やおわびをする。これこそがリーダーではないか。国会がいちばん重要な場。自覚が欠けていることを残念に思う」(立憲民主党・枝野代表)

夕方の対策本部会合、記者会見で総理は発言しています。ニッポン放送を含むメディアはこれらを生中継し、国民に広く伝える結果にはなりました。しかし、対策本部は法律に基づき、閣僚に対して表明した内容をメディアが入って中継するもの、記者会見はその名の通り、メディアの記者を通じて伝えるもの。いずれも間接的な伝達手段であり、それを伝えるかどうかの主体はメディアにあります。

“直接”国民に伝える手段は何か? 選挙という民主的な仕組みで選んだ国民の代表……議員に対して伝えるというのが本来の筋であると考えます。枝野代表のように強い言葉で指摘するつもりはありませんが、菅政権が発足してから初めての発令だっただけに、むしろ政権にとって「チャンス」にもできたと思うのです。

通常国会は1月18日に召集される予定ですが、まずは特別措置法の改正が最大の焦点になるでしょう。菅総理は「罰則などにより強制力を付与することによって、より実効的な対策を可能にしたい」と会見で語りましたが、罰則については野党や専門家からも慎重な意見があります。

“選良”を前に総理は何を語るのか……国会での発言は、より一層の重みが求められるところです。(了)

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