「党内対立」を抱え込むバイデン米次期大統領~日本は独自の安全保障戦略を考えるべき
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年1月18日 17時40分
米東部デラウェア州ウィルミントンで演説するバイデン前副大統領(アメリカ・ウィルミントン)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月18日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。バイデン次期大統領の就任式に向け、ワシントンで異例の厳戒態勢が敷かれているというニュースについて解説した。
アメリカ大統領就任式、首都に州兵2万5000人
バイデン次期大統領の就任式を1月20日に控え、首都ワシントンでは2万5000人の州兵による警備体制が敷かれ、暴力行為などの混乱に備えている。全米各州も州議会議事堂周辺でのデモを警戒し、各州知事は議事堂の閉鎖、州兵の動員を決めている。
飯田)米連邦捜査局(FBI)が就任式前後、全米50州の州議会議事堂を目がけて武装集団によるデモが起こる可能性について警告をしているということです。
須田)ワシントンに2万5000人の州兵を動員するということですが、前回の議会襲撃事件が起こった際には、州兵は340人しかいなかったわけです。それも議事堂を警備していたわけではなくて、近くで交通整理、非対立型の対応というところを徹底させて、武装もしていませんでした。340人から一気に2万5000人に増強したということは、いかにアメリカサイドがこの問題を重視しているかということです。
飯田)そうですね。
須田)法律上、ワシントンD.C.の州兵はワシントン市当局に指揮権がなく、大統領に指揮権があるのです。そして、今回は陸軍長官にそれが委任されるという形が取られるのです。いまは権力の端境期ですから、混乱もあるかも知れません。
議事堂襲撃事件でなぜ、トランプ支持者が議会にまで突入できたのか
須田)議会の襲撃や暴動に備えて、議会警察というものがあります。議会に対する攻撃に対処するためだけに存在しているのが議会警察です。以前、連邦議会へ取材に行ったことがあるのですが、厳戒なセキュリティチェックを受けて、しかも内部は迷路のようになっています。通路も狭く、初めて行った人間はどこに議会があるのかわかりません。その要所に議会警察が立っています。ですから、議事堂が襲撃されたとき、なぜあんなにスムーズに上院議会目がけて突入できたのか、というところは謎とされています。
飯田)確かに。
須田)警備人のなかには、民間で委託を受けているケースもありますから、そのなかに敵を抱え込んでいるのではないかということも言えます。今回はトランプ支持者だけではなく、「Black Lives Matter」のなかで先導していた人がいたということもありますから、どちらにつながっているのか、いまFBIが強硬に捜査をしているという状況にあります。
飯田)そうなのですか。
須田)しかも話は戻りますが、一方で州兵が340人しかいなかったことは、ある反省に基づいているのです。6ヵ月前に議会周辺で暴力的なデモが「Black Lives Matter」によって引き起こされた。そのときに武装した州兵とかなり強硬に、暴力的なぶつかり合いが起こってしまった。それに対して国内から強い批判が出たために、トランプ支持者の議事堂襲撃事件の際には、議会の近くではなく、離れたところで交通整理だけに340人を割いたということもあったようです。
飯田)そういう事情があったのですね。
須田)その辺りの見通しが甘かったのか、それとも、何か特別な力が働いたのかというところも含めて、FBIの調査が進んでいるのだと思います。
飯田)それもあったからこそ、今回は2万5000人も入れてということですか。
須田)厳戒態勢ですね。
民主党内の左派との党内対立を抱え込むバイデン次期大統領
飯田)その厳戒態勢下で始まるバイデン政権ですけれども、パリ協定への復帰等々、初日にはかなり多くの大統領令が出されるという話もあります。
須田)パリ協定への復帰と言われましたが、バイデン新大統領は、環境左派ではありません。環境に関して言うと、民主・共和両方合わせたなかでも中道です。しかし、中道では民主党の指名候補に成り得ない。ましてや大統領選に駒を進められないということもあって、環境左派とオカシオ・コルテス氏、バーニー・サンダース氏等々と手を結ぶという選択を採った。ところが閣僚人事を見てみると、「左派が配慮されていないではないか」という環境左派を中心とする民主党内左派の……左派といっても極左の方なのですが、そこから強い反発が出ている。そのバランスをどう取って行くのか。もちろん上下院、民主党が過半数を占めて、上院は実質的な過半数ということになり、大統領も民主党で、オール民主党になったのだけれども、ただそのなかで党内対立というものを抱え込んでいる状況です。高齢なのでバイデン政権は1期しかありません。その初年度からレームダック状態になりかねない。その上、誰が後継になるのかというところで、次の大統領選、2024年を見据えて党内は動き始めますからね。相当強い政治的な駆け引きが繰り広げられます。ですから、早々に実績を出して行く必要があります。
共和党とどう手を組むのか
飯田)しかも、アメリカの議会には、党議拘束はないと言われているではないですか。そうすると、自分のところの左派と組むよりも、共和党の穏健派との方が組みやすいのではないかとも思いますが。
須田)やはり2022年の中間選挙のことも考えると、まだ議会襲撃の余韻が冷めやらぬなかですから、共和党と組むというのも相当、自分の選挙を考えるとリスキーなのですよ。
飯田)「融和の象徴」だということにはならないのですね。
須田)どういう形で共和党と手を結んで行くのか。バイデンさんとミッチ・マコーネル上院院内総務は個人的に親しいのです。
飯田)らしいですね。
須田)バイデンさんの亡くなられたお子さんの葬儀に、共和党から出席した唯一の議員がミッチ・マコーネルでした。そのコネクションが今後、どう活きるのかということだと思います。
日本独自の安全保障戦略を考えなくてはいけない
飯田)それだけアメリカ政治が内向きになると、東アジアに対してどこまでコミットしてくれるのか。日本としてはいちばんそこが心配ですね。
須田)アメリカに従属するのではなくて、日本オリジナルの安全保障戦略を考えなくてはならない状況に入っていると思います。そのために、敵基地攻撃能力なども含めて議論して行くべきだと思います
飯田)こんなに外交が注目されるということは、戦後70年なかったかも知れませんね。
須田)そのなかで、外交が意外に不得手とされている「菅さんは大丈夫か」と、少し心配になって来ます。
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