1年前の安倍総理とは「似て非なるもの」~菅総理の施政方針演説
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年1月19日 17時35分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月19日放送)にジャーナリストの有本香が出演。衆参両院の本会議で行われた菅総理の施政方針演説について解説した。
菅総理、就任後初の施政方針演説
菅総理)これまで1年近くの闘いの経験に基づき、効果的な対象に徹底的な対策を行っております。飲食店については協力金を180万円まで引き上げ、20時までの営業時間の短縮を徹底します。こうした対策により感染を抑え込み、減少傾向に転じさせます。緊急事態宣言のレベルとする「ステージ4」を早急に脱却いたします。
1月18日、通常国会が召集され、菅総理大臣は衆参両院の本会議で就任後初の施政方針演説に臨んだ。菅総理は新型コロナウイルスについて、「この闘いの最前線に立ち、この難局を乗り越えて行く決意だ」と表明。また、夏のオリンピック・パラリンピックの開催については、改めて決意を示した。20日から各党の代表質問が行われ、与野党の論戦がスタートする。
飯田)いろいろな政策を並べるような演説となりました。気になるところはありますでしょうか?
1年前の安倍総理とは「似て非なる施政方針演説」~外交が過去に戻ってしまった
有本)施政方針演説というのは、「この1年間こういうことをやります」というものを短冊的に並べるものであると言われます。1年前の、安倍政権のときの施政方針演説と比べてみました。機械的に比べてしまうと確かに同じ単語は出て来ます。安倍政権から菅政権に引き継がれて、「基本路線は引き継がれている」と言われていますが、ここまで似て非なる施政方針演説はないなと驚きました。我々は機械ではないので、文章と文章を文脈として読むではないですか。文脈として読むと、こんなに違う文章はありません。
飯田)文脈として読むと。
有本)安倍さんの場合は、ストーリーを持って来ているのです。成功事例、つまりロールモデルを登場させて、「いま自分たちがこの政策をして目指そうとしているのは何であるか」を最初に言い、そこから具体的な短冊に入るのです。それが菅さんの場合は特にない。それと、私が重要であるなと思ったのは、去年(2020年)は「積極的平和主義」ということを言っていて、これは安倍政権の外交のキーワードだったのです。この積極的平和主義という主義を受ける形で、インド太平洋、例えば4ヵ国……Quadですね。あのような枠組みで受けるということになっているのですが、そういうストーリーが今回外されてしまい、「多国間主義」と言っているのです。これは「外交方針が過去に戻ってしまった」という印象を受けます。先ほど言ったように、機械で検索すれば同じ単語がちりばめられていますが、実はぜんぜん違うものになっている。
飯田)確かに、多国間主義と言うと、言葉としては誰も反対できないものではありますが、一方でどこの地域に重みをつけるということがない。
有本)戦後の多国間主義は、要するに戦勝国であるアメリカが中心となり、国連や世界銀行、またIMFなどを設立し、多くの国々がそこに一緒に入りなさいと。つまり戦後レジームのなかでやって来ていることです。その単語をあえていま持って来るというのは、「またそこに戻ってしまうの? 戦後レジームからは脱却しないのですか?」と言いたくなります。それから、アメリカがバイデン政権になるということを意識し過ぎではないかと思います。
バイデン政権を意識し過ぎていないか
飯田)バイデンさんも同盟国重視や多国間主義ということは言っていますね。これはそれに対応したものですか?
有本)そうではないでしょうか。だいぶ忖度しているのではないかなと思いました。
飯田)グリーンとかその辺が表に出て来るあたり。
有本)このグリーンも結局、「外資も呼び込む」と言っています。環境政策と言っているけれど、環境というよりもインフラに直結する産業分野ですよね。そこに外資を呼び込むというのは非常にリスクがあります。去年(2020年)、中国人の投資家が日本で太陽光発電をやっていて、30億円くらいの脱税がありましたよね。この人は5ヵ所くらいの太陽光発電をやっている。この電力分野にこのような外資が入って来るのは、喜ばしいこととは思えませんね。
飯田)表向きは日本の企業となっていても、そこに資本関係として入って来るというね。土地の買収に関しても、ペーパー的なフロント企業が土地を買うことも含めて、規制する方向でようやく議論して来ているところですけれども。
グリーン政策~「ブレーキをどこで踏むか」ということも決めるべき
有本)グリーン政策を進めて行くのであれば、「どこに歯止めをかけるのか」を決めて欲しいです。進める一方だけでなく、ブレーキはどこで踏むのかということです。もう1つ、これもバイデン政権に似ているなと思ったのが、企業のコーポレートガバナンスを進めて行くということ。これは25年前から言われていることですが、そのなかで企業価値を高めて行く方向の1つとして、大企業に対して、管理職を登用するのに女性、外国人などの採用の目標数値の公表を求めると。これは企業価値というものをどう判断するかによりますが。
飯田)「役員の3分の1以上を独立社外取締役とし、女性、外国人、中途採用者の管理職への登用について目標の公表を求めることとします」と。これですね。
有本)目標を公表しろということですよね。そういう枠をはめるということは、バイデン政権が「女性や人種、多様性などをそろえました」と言っているのと同じようなものですよね。行政と企業は違うわけで、企業は適材適所でなければ競争に負けてしまいます。企業価値は競争だけではないかも知れませんが、競争力を持てなければ話になりません。そんな足かせを企業にはめるということを、政府としてやっていいのだろうか、どうしてそこに行くのだろうかと疑問に思います。仮にコーポレートガバナンスを強化するとしても、もっと別の方法があると思います。
飯田)目立つ属性がある人たちがピックアップされることはありますが、大多数のコツコツやっているサラリーマンは、「一生ピックアップされないのか」となりますよね。その不満は、「これまで一生懸命アメリカを支えて来た俺たちがないがしろにされている」というアメリカの白人層に通じるものがありますね。
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