横浜創英中学校・高等学校 工藤勇一校長~荒れた学校を立て直すのに必要なものは「みんなで掃除をすること」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年1月22日 8時10分
![横浜創英中学校・高等学校 工藤勇一校長~荒れた学校を立て直すのに必要なものは「みんなで掃除をすること」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_268328_0-small.jpg)
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に横浜創英中学校・高等学校 校長の工藤勇一が出演。自らが「荒れた学校」を立て直した経験から、いまの日本の教育に必要なことについて語った。
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工藤勇一
黒木)今週のゲストは横浜創英中学校・高等学校校長、工藤勇一さんです。もともと山形の教員でいらして、東京にいらっしゃったということですが、赴任先である学校に行かれたときに大変風紀が乱れている学校だったと。
工藤)ルールというのは、厳しいルールがあってもいいのです。「守らせよう」とするときに問題が起こるのです。少しでも違反をした子どもがいると、教員は注意しますよね。注意を続けると、子供はそこに目を向けます。そうすると、先生がいないときには違反をしようとする。スカートを短くしたかったら、普段は巻いておいて先生が来ると伸ばす。こういうことはどうでもいいはずなのに、そんなところに意識が行くわけです。子どもたちと教員のそんな会話はつまらない会話ですよね。「何が好き、嫌い」とか、「自分の人生をこうしたい」とか、「いまこんな夢を持っているんだ」とか、そういう会話ならいいのに、先生の顔を見たら「髪の毛のことでまた何か言われるかな」と、そんなことにばかり意識が行く。意識をすればするほどそこに意識が集中します。
黒木)時間の無駄だということですよね。
工藤)お互いの関係をとても悪くする。
黒木)金髪や私服で登校する生徒もいるけれど、そこが問題ではないと。信用は行動の積み重ねでしかないと。「勉強ができなくてもいい、スポーツが苦手でもいい、信用を得るために全員で努力をして欲しいことは掃除だ」と、ご自身の著書に書いてありますね。
工藤)天井も穴だらけで、いたるところにタバコの跡がこびりついた学校でした。ここで暮らすのでは、子どもたちの愛着が湧かない。そこにいた先生たちも、保護者も子どもたちもみんながその空間を嫌がっていたのです。みんながこの学校のことをさげすんでいたのですね。それを誰かのせいにしている。でも「自分が掃除をする」という手段で、みんなが一生懸命やり始めたのです。ベニヤ板を打って、そこに壁紙を貼り、床を磨いてタバコやガムの跡を取る。そうすると、「自分たちがこの学校をつくっている」という意識が芽生えて来るのです。教員にも。
黒木)学校をデザインするという考え方の1つですね。
工藤)掃除が大事というよりも、当事者意識を高めることが大事です。そうすると、次から次にみんなからアイデアが出て来るのです。そうすると、どんどん学校がよくなって行きました。本来の目的が見えて来るのです。多くの学校で行われている「荒れた学校を立て直すには、服装頭髪の指導を徹底する」というようなことではなく、その真逆のことをやる。そうすると、きちんと落ち着くのです。
黒木)なるほど。
工藤)その間いろいろな取り組みもしました。荒れているからと守りに入るのではなく、他の学校がやっていないような、いまでは当たり前になった職場体験もしました。早稲田大学と一緒になって人工心臓をつくっている職人のところにみんなで尋ねたり、また来てもらって講演をしてもらったりと。いろいろなことをやりました。そうすると、「世の中ってまんざらでもないな」、「大人ってけっこう素敵だな」と思えるようになる。閉ざされた学校のなかで子どもたちと教員が敵対していると、「大人になりたくない」という子どもたちができます。でも外の世界に開放すると、「世の中って素敵な人だらけだし、輝いているし、ぼくも早く大人になりたいな」と言うようになるのです。その学校の子どもたちもその通りでした。荒れた学校が立て直ったという喜びだけではなく、「世の中に出てみたい」と言う子どもたちがたくさん出て来る喜びです。その延長線上に、麹町中学校があるわけです。いま私は横浜創英にいますから、社会の一部として横浜創英が成長して行くような、全職員のアイデアで学校が変わるような、自分がこの学校をつくっている一員だと、その当事者であるという意識を高めて行くための仕掛けをいまつくっています。
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工藤勇一
工藤勇一(くどう・ゆういち)/横浜創英中学・高等学校校長
■1960年・山形県鶴岡市生まれ。
■1984年から山形県で数学の中学教諭を5年務め、東京都台東区の中学校に赴任。
■その後、東京都や目黒区の教育委員会、新宿区教育委員会・教育指導課長などを経て、2014年に千代田区立麹町中学校の校長に就任。宿題・定期テスト・学級担任制など、これまで日本の学校教育で当たり前に行われて来たことを次々と廃止し、生徒が自律的に学習や活動に取り組む学校づくりを実施。
■麹町中学校で校長を6年間務めたのち、内閣官房教育再生実行会議委員や経済産業省「EdTech」委員などの公職も務める。
■2020年4月からは横浜創英中学校・高等学校の校長に就任。
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