コロナ特措法案~入院拒否患者への罰則は効果があるのか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年1月22日 11時35分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月22日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。1月22日に閣議決定された新型コロナウイルス特別措置法と感染症法の改正案について解説した。
新型コロナ特措法案を閣議決定
政府は1月22日の閣議で、新型コロナウイルス特別措置法と感染症法の改正案を決定した。営業時間短縮の命令を拒んだ事業者や入院拒否者への罰則を新たに加え、与野党は週明けにも修正協議に入る見通しだ。
飯田)病院から逃げ出した人や時間短縮を拒んだ人への罰則ということですが。
入院拒否患者への罰則は効果がないのではないか~かつてのエイズの際のキューバでの強制隔離の失敗
佐々木)政府側もなかなか感染が収束しないので、イライラして何とか措置を、ということでこういう法案を出して来たのはわかるのですが、これに「本当に効果があるのか」という疑問の声が出ているのです。公衆衛生学会や疫学会などが反対声明を出しています。話を聞くと、入院拒否に対する罰則を求めると、隠れるだけなのではないかと言うのです。
飯田)そもそもが、と。
佐々木)戦前、ハンセン病で強制隔離という法律があったではないですか。どうなったかと言うと、それを恐れて家族が山のなかに患者を隠して、こっそり食事を運ぶという話がありました。先日、「BuzzFeed」で東大の先生が紹介していたのですが、キューバでかつてHIV患者を強制隔離するという法律がありました。そのころはまだエイズの適切な治療が見つかっていなかったのですが、みんな隠れまくって、逆に感染が蔓延してしまった。ですから、みんながきちんと従って隔離されてくれればいいのだけれども、そこから逃げる人が出ると、ますます街のなかに隠れ感染者が増えてしまうのです。もう1つの問題は、罰則規定ができるということは逮捕することもできるわけです。
飯田)そういうことになりますよね。
保健所から警察に通報~保健所のシステムが根底から揺らぐ可能性も
佐々木)警察権力を入れてしまう可能性がある。そうなると、例えば保健所が「PCR検査で陽性になりましたので病院に行ってください」と言っても、その人が逃げてしまうと保健所は警察に通報しなくてはいけなくなる。日本の誇る保健所は素晴らしい公衆衛生のシステムなのです。それは保健所と一般市民との間の信頼関係に基づいて成立するシステムなのですが、そこに警察通報というシステムを入れてしまうと、保健所のシステムが根底から揺らぐのではないかという危惧も言われているのです。
飯田)市民が保健所を忌避するようになってしまうと。
佐々木)そうです。保健所に連絡をした瞬間に、「警察がやって来るのではないか」という不安感を人々が感じるようになるのはよくありません。実際にそうなるかどうかはわかりませんが、そういう危機感が出ているということを、政府は認識するべきなのではないかと思います。保健所は、長年の地方自治体の財政難でかなり人員が減らされているので、そこをもう1度きちんと交付金を増やして拡充するというのが第1です。また、もう1つは罰則規定を入れるならば、まず補償をしなくてはいけないですよね。
国なのか、知事なのか、責任の所在をはっきりとするべき
佐々木)もう1つ大事なのは、いまコロナ特措法がないので、新型インフルエンザ特措法でやっているではないですか。この問題で以前から指摘されていますが、主体は知事なのです。知事が自粛要請を出す。ところが、政府は知事に対して調整ができると。総合調整という謎の言葉が書いてあるだけですが。ということは、知事は自分たちが主体でやっているはずなのに、いざやろうとすると、政府がいろいろ言って来る。昨年(2020年)の4月に小池都知事が、今回の新型コロナに対して、「自分が社長だと思っていろいろやろうとしたら、天の声が聞こえて来て、中間管理職になったようだった」と名言を吐かれていました。それと同じように、「誰が主体なのか」ということが相変わらず明確になっていないのです。責任の所在をきちんと、誰がリーダーシップをとってやるのか。国なのか、それとも自治体なのか。責任の所在を明確にしなくてはいけないですよね
飯田)しかも今回、緊急事態宣言の前段階として、「まん延防止等重点措置」というグレーゾーン的なものが出て来ています。これにも罰則規定がついている。
日本の法律の「曖昧さ」
佐々木)そうなのです。民主党の玉木さんなどは、緊急事態宣言だけにしろと。
飯田)有事か平時かきちんと分けろと。
佐々木)そこが相変わらず曖昧なのです。日本の法律によくあるパターンで、すべて曖昧なのだけれども、あとは運用で何とかしようというものです。クリアではないが故に、いろいろなものが暴走し始めて、無責任体制のまま戦争に突っ込んでしまったのです。戦前にやっていたことと同じことが起きてしまう。きちんと明文化するものはして行かないとダメだと思うのですが、やはり日本はそういうことがDNAに染み付いているのですかね。
飯田)相変わらず空気で縛ろうとする。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「令和のコメ騒動」不足解消でも楽観できない事情 人口減少社会で「農地改革」が進まない本当の理由
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 8時0分
-
ジョージア、反LGBT法案を可決 進む反リベラル化 EU入りに暗雲
産経ニュース / 2024年9月18日 8時38分
-
バイデン米政権、在香港企業向けの勧告更新、国家安全維持条例施行を受けて(米国、中国、香港)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月13日 10時0分
-
高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 兵庫・斎藤元彦知事が辞任しないのは「元総務官僚」だから...後任「脱官僚」なら石丸伸二氏?
J-CASTニュース / 2024年9月12日 17時0分
-
米カリフォルニア州のAI規制法案に多方面から反対表明(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月30日 0時50分
ランキング
-
1歌舞伎町で若い男女2人死亡 ホテルの外階段から転落か
毎日新聞 / 2024年9月20日 11時17分
-
2「10・27衆院選」は小泉進次郎首相になっても困難か "本命"「11・10」だが、米大統領選後解散の可能性も
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 9時30分
-
3製薬大手元社員の妻は殺されたのか 晩酌の焼酎パックに残された痕跡が語るもの 法廷から
産経ニュース / 2024年9月20日 8時0分
-
4死亡女児「知人に預けた」と説明 殺害疑いの24歳無職父親、群馬
共同通信 / 2024年9月20日 10時58分
-
5遺体の頭を金属の棒で突き、頭蓋骨が崩れる…岐阜市斎苑「きれいに火葬するためだった」
読売新聞 / 2024年9月20日 12時33分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください