GAFAを反トラスト法違反で調査~共同勢力にどこまでバイデン政権が踏み込めるのか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年1月22日 17時40分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月22日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。アメリカ司法省と連邦取引委員会(FTC)がGAFAを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで調査しているというニュースについて解説した。
GAFAを米独占禁止法違反の疑いで調査
アメリカ司法省と連邦取引委員会(FTC)は、グーグル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、アップル、いわゆる「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業を反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで調査している。1月19日のロイター通信の報道によると、バイデン政権が反トラスト法に関連した問題を担当するポストを新たに設けることを検討しているということだ。
飯田)まだ検討段階ということですけれども。
佐々木)GAFAはお金をばら撒いていますから、どこまでバイデンさんがそこに切り込めるか。GAFAはいったい誰の味方なのかと考えると、よく言われるのは無料でフェイスブックをみんな使っていますが、その代わりにプライバシーを利用されているということです。我々が製品でそれを広告主に売るための材料にされているだけであると。しかし、一方でフェイスブックやグーグルを使うことで、道に迷わなかったり、何年も会っていない友人に連絡を取れたり、メリットもあるのです。だから、そこは必ずしも、プライバシーを奪われているだけで批判を続けるのも違うのではないかと思います。どちらかと言うと、過剰に富を蓄積しているのではないか。「その富が誰に回るのか」ということを考えなくてはいけないのだと思います。
飯田)富は蓄積していますね。
GAFAが蓄積した富はどこに行っているのか
佐々木)リーマンショックの前に、リーマン・ブラザーズやゴールドマン・サックスなどの投資銀行がものすごくお金を貯めていたではないですか。我々はものをつくって、それを売って、買って、GDPが増えるという、実体経済のなかにいますが、投資銀行がその上澄みのようなところを奪って行っていたという状況に対して、批判が大きく、結局、破裂してリーマンショックになった。GAFAも同じように、どこから出て来たのかわからないお金を貯めているのですよ。しかも、それがきちんと税金として払われていない。例えばヨーロッパなどが有名ですが、タックス・ヘイブンがたくさんあるので、ああいうところを経由することで税金をあまり払わないようにしている。
飯田)そんなところもありますね。
佐々木)プラットフォームという業態自体が雇用をあまり生まない。少数でいいのですよ。例えばアップルにはたくさん人がいますが、大半はアップルストアの店舗スタッフで、本社にあるデザイナーや製品開発をしている社員はものすごく少ないと言われています。少人数で大量のお金を生んで、そのお金がどこに行っているのかわからない。
飯田)そうですね。
佐々木)このGAFA群が生んでいるお金を国家がどうやってきちんと税金として徴収し、格差社会が進むなかで貧困層に回すのかというところを考えなくてはいけないのですが、その対応が国ごとではもはや追いつかなくなっている。例えば、アメリカが規制を厳しくしたらどうなるかというと、本社をどこか別のヨーロッパやアジアに移してしまえば、それ以上追いかけられない。だから、経済学のトマ・ピケティは「国際社会で徴税する仕組みをつくらない限り、この格差化の進行を食い止められない」ということを前から言っているのです。
飯田)国際所得税というものをつくるということを言っていますね。
サンフランシスコのホームレス対策のための法人税増に反対したGAFA企業
佐々木)そうなのです。セールスフォースというアメリカの大手IT企業があって、そこのマーク・ベニオフという創業者が『トレイルブレイザー』という本を書いて、昨年(2020年)東洋経済から日本語版が出ました。シリコンバレーにそのセールスフォースの本社があるのですが、その本社の上のほうに行くと、豪華なカフェがあって、社員たちが美味しいものを飲んだり食べたりしている。しかし下に降りて外に出れば、ホームレスがいるのです。けれどGAFAの企業はホームレスにまったく目を向けない。それではダメだということで、マーク・ベニオフはサンフランシスコの市議会に交渉して、法人税を増やし、その増やした分をホームレス対策に回しましょうと、そういうものを提出したら、他のGAFA企業はこぞって反対したということです。
飯田)自分たちの利益が減ってしまうと。
佐々木)もともとグーグルもそうですが、「デビルにならない、邪悪にならない」ということを言っています。アップルも、もともとヒッピーのような、西海岸の自由思想のようなところから生まれていると言っていたにもかかわらず、いまやお金持ちの味方になってしまっている。貧乏人には目も向けない。「それは構造としておかしいのではないか」とマーク・ベニオフは言っているのです。これは、まさにアメリカの民主党や、日本のリベラルが置かれているところと同じではないでしょうか。本来は「貧しい人を社会包摂しよう」と言っていたはずなのに、気がついたら、お金持ちの高尚な趣味のようになってしまっているのではないかということが、ずっと言われているのです。
「バイデン政権誕生でアメリカは元に戻る」は本当か
佐々木)アメリカでバイデン政権が生まれて、「これでアメリカは元に戻る」と言っていますが、別にトランプ大統領が元凶だったわけではなくて、その背景に格差社会の進行で「捨て置かれる白人貧困層の問題」がたくさんあったわけです。それを体現して生まれたのがトランプ政権だったということを忘れて、まるで「元のアメリカに戻ればすべて治る」ということを言っているのがおかしいのですよね。
飯田)多様なエリートの党というようになっているのですね。
サンダース氏がラフな格好で大統領就任式に出席した意味
佐々木)そうなのです。そこには貧しい人が誰も入っていないのです。だから、バーニー・サンダースさんがバイデン大統領の就任式にラフな格好で出て来て、「ラフすぎるおじいちゃんが近所の銀行に行くような格好だ」と言われていましたが、周りが高級なスーツを着ているなかで、1人田舎のおじさんのような格好で出ていたところに、私はバーニー・サンダースさんの矜持のようなものを感じました。
飯田)強烈なアンチテーゼなのですね。彼だって当然きれいな格好もできるはずですが。
佐々木)エスタブリッシュメントにまた戻って行くアメリカに対して、「オレはいつまでも貧困層の味方をする」とサンダースさんが突きつけているのだと感じました。
飯田)そこについている若者も非常に多いはずですよね。
エスタブリッシュメントの民主党と握手するGAFA~バイデン大統領がどこまでGAFAを排除できるのか
佐々木)そうですね。社会主義を期待している若者が増えているという話もあるのです。GAFAの問題で考えると、結局、エスタブリッシュメントの民主党と仲がいいわけで、そこがガッチリ手を握って、トランプ排除をSNSでこぞってやったというのも、まさに民主党とGAFAの共同勢力なのです。それをバイデン大統領がどこまで排除できるのか。もう1度そこで格差問題に立ち向かうのかというと、少し疑問だと思います。
飯田)確かに、それって日本では報じられていないですが、完全な既得権擁護の行動なわけですよね。しかも政と財が組んでと。
佐々木)そうなのですよね。だから、ここはどうやったら変わるのかというと、トランプさんがよかったとは思わないし嫌いですが、一方で白人貧困層という忘れ去られた人たちの味方をしてくれる人が誰もいなくなったアメリカは、いったいどうなのだろうかと。
飯田)そちらの方がより不満のマグマが溜まり、危険な状況になって行く。
佐々木)そうなのですよね。トランプさんよりもクレバーな、ファシストみたいな人間が出て来たら、そっちに走るのではないかという感じも少しします。
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