緊急事態宣言、栃木除き1ヵ月延長~残念なメディアの報道内容
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年2月3日 17時30分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月3日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。緊急事態宣言が栃木を除く10都府県で1ヵ月延長されたニュースについて解説した。
緊急事態宣言、栃木を除く10都府県で3月7日まで延長
菅総理)緊急事態宣言について栃木県は2月7日で解除することとし、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、及び福岡県については、3月7日まで1ヵ月延長することを決定いたしました。
菅総理大臣は2月2日、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言について、栃木県を7日に解除し、東京や大阪など10都府県については3月7日まで延長すると表明した。感染や医療状況に応じて期限前の解除も検討するということである。
飯田)1ヵ月延長ということです。
佐々木)各世論調査を見ると、「仕方ない」と容認する声が多いようです。もう少し数字を明確に提示して議論しないと、曖昧模糊としてよくわかりません。「1ヵ月延長して本当になくなるの?」と思っている人は多いと思います。産経新聞の1面では、1ヵ月延長されることについて、
「飲食の場などでの限定的な対策を中心に据えるだけでは、昨秋からの『第3波』を数値上は克服できても、『第4波』の到来を防ぐことはできない。感染源の徹底した封じ込めが今、求められている」
~『産経新聞』2021年2月3日配信記事 より
佐々木)……と書かれています。
メディアは具体的な数字で説明するべき~東京都では陽性者数が500人以下になれば解除
佐々木)言っていることはもっともらしいですが、何の根拠もありません。政府の説明は……これもどこも解説していませんが、いまのステージ4をステージ3に下げたいということです。ステージ4とは、1週間で人口10万人当たり陽性者数が25人以上です。東京だと1400万人いますから、1400万人当たり3500人、これを1週間の7で割ると500人です。いま700人~800人いるので下げなければいけません。500人以下になるとステージ3になるので、ここで緊急事態宣言が終わる要因になります。あとは陽性率や経路不明の市中感染の率など、いろいろあります。ステージ3まで下がったら解除できるのですが、その先の見通しが何なのかというところが実は明確ではありません。
ワクチン接種のスケジュールを含め「数字を出して全体像を見せる」のがメディアの仕事
佐々木)ここでもう1つの要素として、ワクチンが出て来ます。これがいつから始まるのか。イスラエルは約3割が接種しています。2日のBBCの報道では、
「60代以上で2回のワクチン接種を終えた約75万人のうち、検査で陽性となったのはわずか0.07%に当たる531人だった。さらに、この中で入院措置が必要となった患者は、軽症から重症まで合わせて38人にとどまった。一方、これまでに60歳以上の3人がワクチンを打った後に亡くなった。ただしこの3人については、ワクチンで免疫ができる前に新型ウイルスに感染した可能性があるという」
~『BBC News Japan』2021年2月2日配信記事 より
佐々木)……ということです。日本であれば「やっぱり死んだ」と大騒ぎになることでしょう。
飯田)具体的な事例でね。
佐々木)この数字を見ると、ワクチンの効果は出ているのです。そういうことを考えると、2月以降、ワクチン接種のスケジュールがどうなるのかということ。それとステージ3をどのくらい持続できるかということの兼ね合いで考えて行かなければいけません。そこの数字を出して全体像を見せるというのが、メディアに求められている仕事ではないでしょうか。
メディアは現状の数字と共にその後の「展望」を見せる報道をするべき
飯田)断片的なところで見出しが立っていて、「怖い!」ということだけが……。
佐々木)「怖い」と言えば、何となく報道になってしまっているところがある。先日テレビ業界の人と話をしましたが、その人は「政府はちゃんと伝えていないですよ」と言うのです。でも厚生労働省の分科会の人たち、尾身先生や押谷先生はきちんと説明していると思います。でもそれは医療専門家や政治家の説明なので、若干わかりにくいです。これをわかりやすく国民に伝えるのがメディアの役割なのに、「それをしないで“政府は説明責任を果たしていない”と騒ぐのは報道の仕事ではない」と言ったのですが、わかってもらえませんでした。数字をビジュアルで見せて、「いまはこういう状態だ」とわかりやすく説明しなければいけません。実効再生産数も0.8くらいまで下がっているので、このままならば減って行くということ、今後の目論見としてどんな感じになって行くのかということを、数字や絵でみせる。その上で、「もう少し頑張りましょう。この状態で行けば、克服できるかも知れない」という展望を見せるべきです。
事実を正確にメディアが伝えていない
飯田)亡くなった人の数など、諸外国とは2桁違うというところは報じていいのではないでしょうか。
佐々木)それをきちんと言わないから、ネットなどを見ていると、「日本はダメだ、アメリカやヨーロッパを見習え」などと言っている人がいます。アメリカやヨーロッパを見習ったら、感染者、死者が100倍に増えてしまいます。まともにメディアが報じていないからそういう意見が出るのです。
飯田)医療逼迫(ひっぱく)のこともよく言われますが、欧米は既に第1波のときに崩壊していたのではないかと言われています。
佐々木)医療崩壊と言われている問題は確かに重要です。病床数が多いのに逼迫してしまうのは民間病院が多いからだと言いますが、であれば全体の民間病院と公立が持っている病院のバランスを考えるべきだという議論は必要です。そこを議論しないで「医療崩壊だ」とか「たらい回しだ」、「入院拒否だ」などという方向に持って行く。それらに対して医療関係者は怒っています。「単に対応しきれていないだけだ」と言っているのですが、相変わらずそういう言い方で医療関係者の心を刺す報道が多いです。
飯田)そもそも論としてコロナ前から8割~9割の病床が埋まっているという状況があり、「それも問題だ」と一時期は報道されましたよね。
佐々木)そこに関しては、厚労省に責任があります。感染症はいずれパンデミックが起きるということが2000年に入るころから言われていたのだから、その対応をなぜ考えなかったのかという話になりますし、そもそも、財務省が緊縮で医療のところまで財政を絞っていたからだなど、いろいろな議論はあります。全体を見た包括的な議論ではなく、目の前の断片的な情報だけで騒ぐということが、メディアに限らず、世論も多過ぎます。我々はもっとグランドデザインについて議論するべきです。
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