「思いやり予算」とは何なのか~在日米軍駐留経費「現行水準」1年延長へ
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年2月19日 17時45分
菅義偉首相、バイデン米大統領(ロイター=共同)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月18日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。日本政府が米軍の駐留経費を現行の負担額維持で合意したニュースについて解説した。
日本政府がアメリカ軍の駐留費、現行の負担額維持で合意
政府は2月17日、2021年度以降の在日アメリカ軍の駐留経費負担、いわゆる「思いやり予算」をめぐるアメリカとの協議で合意した。2021年度は暫定的に現行の特別協定を1年延長し、2017億円を日本が負担。2022年度以降については、改めて協議となる。
飯田)3月末に協定が失効してしまうというタイミングだったのですね。
「思いやり予算」~合意した上で決めるもので「思いやり」ではない
宮家)最初から喧嘩を売るつもりではありませんが、「思いやり予算」と言うのをやめましょう。思いやり予算というのは、金丸(信)さんが最初に使った言葉なのですが、当時は協定のなかに、アメリカが払わなければいけないもの、日本が払わなければいけないもの、そしてどちらでもいい条項があった。そのどちらでもいいものについて、日本が部分的に払い始めた。それが「思いやり」なのかも知れないとは思います。しかし、今はもう限界に達していて、それ以上の部分については、特別協定を新たにつくっているわけですから、当然、交渉して合意した上でやること、それは「思いやり」でも何でもないのです。
飯田)きちんとした取り決めであるということですね?
宮家)はい。そこには貸し借りもあり、金額以外の日米の役割分担など、相互的に決めるものなのです。私は長くその「思いやり」予算を担当して来ましたが、「思いやり予算」という言葉は絶対に使いません。それは本質ではないと思うからです。いずれにしても日本の憲法のシステムを考えると、日本が他のNATOの同盟国と同じような形の貢献はもちろんできません。微妙に違う形になる。それで駐留軍経費というものを負担するようになった。これは韓国とも異なる日本特有のことです。
新政権となり、1年延長は仕方ない~役割分担も含め全体的に見直す
宮家)今回は1年延長ということですが、バイデンさんが新しい大統領になったのですから、これは仕方がないのではないでしょうか。その前の大統領は「4倍に増やせ」などとふっかけて来たのですからね。でも、そんなことができるわけがありません。4倍払うとなると、米軍の兵隊の給料も払うことになる。そうなると彼らは日本の傭兵ということになります。傭兵ならば、「日本に指揮権をよこせ」ということになります。そうなれば絶対にまとまることはありません。今回は「ようやく元に戻ったけれど時間がないよね」ということで、1年延長になったわけです。
飯田)そうですね。
宮家)おそらく2021年の後半から、本格的な交渉が始まるのではないかと思います。そのときに大切なことは、ただ単にお金の問題だけではないということです。先ほども申し上げましたが、アメリカ国防総省のなかでは、中国についてタスクフォースをつくって、対中政策を全面的に見直しをしています。そのときには、同盟国との調整も当然、検討対象に入る。今度の駐留軍経費の問題というのは、単にお金の問題だけではなくて、役割分担も含めて全体的に見直すなかで決まって来るものだと思います。だから1年かければいいのです。
何処までアメリカ軍と連携するのか~場合によっては覚悟も必要になる
飯田)その役割分担というのは当然ながら、自衛隊が有事の際や平時の際にどう動くのかというところも含めて、どこまでアメリカ軍と連携してやるのか、場合によっては覚悟も必要だということになりますよね?
宮家)その通りです。そのための同盟なのですから。いま米国は韓国と若干揉めていますが、本来ならば、北が攻めて来たら、米韓の連合軍で誰が指揮権を持つのか……これについては今はアメリカが持っているのですが、これを韓国に戻すのか戻さないのかということも含めて、両国は議論を続けているのです。
飯田)ここ20年ぐらいやっていますね。
宮家)日本でも有事にどう対応するかは当然米国とやっているはずなのですが、そこについては国民の関心が見えて来ません。秘密の部分も多いので、なかなか言いにくいのかも知れませんが、本当はそのようなことを議論すべきなのです。そうでないと、相手が抑止されませんからね。ただ単に書類上で処理するのではなく、実際に連合軍として動くのですから。
飯田)その方針が決まって、それに沿って、演習をするというようなことがすべて決まるということですね。
宮家)それがあるべき姿です。それをしなかったら、何のために同盟をやっているのかがわからなくなる。
飯田)そこについては国民的な議論が必要で、日本をどう守る、日本の主権をどこまで残すのかという、「主権国家としてどこまで行動するか」ということが必要ですよね?
宮家)ただこれについては、自衛隊が米軍の指揮下に入るわけではありません。日本は日本の指揮下で当然戦うということになります。そこの部分で韓国とは微妙に違う戦い方になると思います。
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