未だ“明確なメッセージ”が聞こえて来ないバイデン大統領の「危うさ」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年3月2日 17時40分
4日、米大統領選で優勢となり、デラウェア州で演説する民主党のバイデン前副大統領(ロイター=共同)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月2日放送)にジャーナリストの有本香が出演。トランプ氏が退任後初めて行ったフロリダ州での演説について解説した。
トランプ氏、退任後初の演説で次回の大統領選出馬を示唆
アメリカのトランプ前大統領は2月28日、フロリダ州で演説を行い、「新たな党はつくらない。共和党はかつてなく結束し、強くなる」と述べた上で、2024年の次期大統領選に出馬する可能性を示唆した。ツイッターのアカウントが停止されたトランプ氏が退任後、公の場で演説をしたのは初めてのこと。
飯田)保守政治行動会議(CPAC)というイベントの年次総会で演説をしたということです。
有本)少数ですけれども、日本人でも参加されている方がいらっしゃいますよね。
1期で退任した大統領でここまで注目されるのはこれから先出て来ない
有本)「4年間の大統領時代は、自分や支持者がして来た素晴らしい旅だった」、「旅はまだ終わっていない」と言っていますが、印象的な演説だなと思いました。このトランプ演説をBBC、CNN、それから全米3大ネットワーク、ここでは大きく報じています。そういう意味では、最後にいろいろなことがありましたけれども、1期で退任した大統領でここまで注目される人というのは、これから先もそう出て来ないのではないでしょうか。過去にも例はないと思います。それで、次の大統領選への出馬という含みもあるわけです。これは共和党のなかでも、一部はトランプさんに対して反発があったと言われているけれども、日本のメディアが伝えているように、トランプ離れが大きく進んでいるというのも、どうやら実態ではないようです。
飯田)すぐにまた中間選挙が来ますからね。
有本)それと、各地の共和党の本部、あるいは私の知り合いの支部で役員のようなことをやっている人に聞くと、「あれだけ求心力を持てるリーダーは、いまの共和党のなかにはいない」と言います。次の大統領選挙に絡んで、いろいろな人材の名前は挙がるのだけれど、トランプさんほど「何を目指す」、「何と戦う」ということを、明確にできるリーダーはそれほどいないだろうと。だからみんな、まだトランプさんが好きだし、“We miss Trump”というような思いのある支持者は相当多いということです。いなくなって寂しいということですよね。そういう声がまだあるなかで、この人の動きは、私たちも含めてみんなが注目し続けることだと思います。
バイデン大統領の声が聞こえて来ない
飯田)今回、この演説のなかでバイデンさんへの批判、パリ協定に特にディールもなく復帰してしまったことなど、外交についても注文をつけた場面がありました。
有本)「危険だ。反道徳的だ」という言い方もしていますよね。すごい批判をしているわけですけれども、バイデン政権の現状を見ると、トランプさんはしばらく沈黙があって、休養もしてこのCPACという場で演説をしたのですが、バイデンさんの声が聞こえて来ないというのがすごく対照的だという気がします。
飯田)バイデン政権が発足して1ヵ月半くらいが経ったわけですが、シリアの攻撃等々も意思決定の過程がよく見えていないところがあります。
有本)外交演説というのがありましたが、あれは私たちアジアにいる者にとっても、特に安全保障に影響するので注意深く聞きましたけれども、それくらいであって、おっしゃるように、シリア攻撃などもあまり説明されたという感じがないですよね。
飯田)報道官レベルでの説明があったのでしょうけれども、本人の口からというのは。
有本)ご本人の肉声が聞こえて来ません。これはどうなのだろうという感じがします。
裁判が終わった時点で2020年の大統領選挙についての検証をするべき
有本)それと、例の大統領選挙に絡んで、不正があったということをトランプさん側が激しく糾弾したわけですけれども、この司法における裁判はずっと行われているでしょう。実はその後、続報されていないのですが、かなりの割合でトランプ側の主張が通っているのです。要するに勝っているのです。これはもう1度、裁判が終わった時点できちんと検証がされるべきだと思いますけれども、トランプ政権が終わる間際に出て来たナヴァロレポート。あれを読むと、アメリカの大統領選挙の仕組みからそうなってしまうのだけれど、一部の選挙区で、万単位の票が動いたことによって、選挙人の数が大きく変わってしまったから、当然、そこで全体の選挙結果に対する影響が出ているということなのです。それから、トランプ側がいろいろ告発したことが、それなりに認められているということになると、「あの選挙は何だったのだ」ということにもなるし、ずっと言われて来たアメリカ大統領選挙の欠点を今後も修正しないのですかと。
飯田)選挙人制度で勝者総取りという形だとか。
有本)それから集計のありようなども、州ごとに違うというようなところですね。
飯田)そもそも投票権のある人は、事前に登録しなければいけないと。この辺りの仕組み。
有本)去年(2020年)の選挙はコロナだったので、異例な部分があったのだけれど、それを利用されてしまったような印象もあります。その辺りの問題点を潰して行く必要もあるのではないかと。それこそアメリカの民主主義を守るために。その辺りも含めた、いまの政権の舵取りがどうも見えて来ないですよね。あらゆることをひっくるめて「不道徳だ」と、そこまで強い言葉で言うのは、さすがトランプさんだなと思うけれども、そういう意味合いというのは、何となくわかるなと思います。
メッセージ性がないバイデン大統領
有本)それと、中国とどう向き合うのかというところ、「トランプ政権を引き継ぐ」と、一応、バイデン政権も言っているけれど、そこについても強いメッセージがありません。
飯田)この週末も香港で民主活動家の方々47人が起訴されています。しかも国家安全維持法ということになると、保釈が認められない。人権的に非常に問題がある。イギリスのBBCはウイグルの方々の人権蹂躙、特に女性が暴行を受けているということに関して、かなり詳しく報道しています。各国で議会の議決なども出て来ていますが、アメリカがどこまで動いているのかというところは見えて来ないですね。
国防総省報道官の「日本の尖閣諸島主権支持」発言の撤回
有本)日本と直接関係のあることで言いますと、言っていることが変わって来ているということが、気持ち悪いではないですか。例えば尖閣諸島に関しても、これはカービーさんの単なる間違いなのかも知れませんけれども。
飯田)国防総省報道官の発言修正。
有本)1度は尖閣の主権について、「日本を支持する」と言っておきながら、「ごめん間違いだった」というような話です。
飯田)施政権は認めると。
有本)それはアメリカの従来の主張ですよね。つまり、施政権は日本にあるということをいままで言って来た。「だから日米安保5条の適用範囲内だよ」みたいな。では「施政権が中国に移ってしまったらどうするのか」という話なのだけれども、昔からそういう話がありますが、やはりそこに戻ると。「主権という言葉を使ったのは誤りだった」と言っているわけです。そうかと思えば、ウイグル弾圧、あるいは香港の問題についても、バイデンさん自身も習主席に文句は言ったのだけれど、「それぞれの国に文化的な規範があるよね」というようなことを言ってしまう。メッセージ性がないということと、“ブレ“が危ない感じがします。
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