緊急事態宣言延長を後押しした「2つの事実」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年3月5日 17時30分
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月5日放送)にソシエテ・ジェネラル証券 経済分析担当の会田卓司が出演。首都圏の緊急事態宣言が2週間延長されるというニュースについて解説した。
首都圏、1都3県の緊急事態宣言延長、3月5日決定
政府は3月5日、新型コロナウイルス対策として、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県に発令している緊急事態宣言の再延長を決定する。3月7日までの期限を21日まで2週間延ばす方向だ。
緊急事態宣言の延長を後押しした2つの事実~世論とワクチン接種の遅れ
飯田)政府の諮問委員会が開かれまして、西村担当大臣が期限を21日まで延長するという方針を示したということです。この緊急事態宣言延長、経済面も含めてどうご覧になりますか?
会田)緊急事態宣言の延長は、2つのものに後押しされたのだと思います。1つ目は世論。各紙世論調査を見ても、「緊急事態宣言を延長するべきだ」という声が圧倒的に多く、「政権もこれに従わざるを得なかった」というのが1点。2点目は、ワクチン対応が遅れていることです。コロナを収束させる決定打となるべきワクチンがこのままであれば、オリンピック前までに全国民に行き渡らない可能性が出て来る。オリンピックを控えているわけですから、そこまでにコロナを封じ込めなくてはいけない。この2点に支えられているのだと思います。
緊急事態宣言下で分断される国民~「再延長」の声が所得を失っている人の声をかき消している
飯田)この世論の部分というのが、3月1日の日経新聞の世論調査で、
『緊急事態「再延長を」8割
内閣支持率、横ばい44% 本社世論調査』~『日本経済新聞』2021年3月1日配信記事 より
……という見出しが立ちました。よく見ると、感染拡大している地域で「延長した方がいい」と答えた人がかなりの部分であり、きちんと空気を掬い取っているのかという感じもありますが、どうでしょうか?
会田)国民のなかで分断が起こっているのだと思います。コロナが拡がってから1年以上経ちまして、緊急事態宣言下でも所得が痛まない、賃金が維持されるという安心感を持っている方と、飲食、宿泊、サービスを中心に相当苦しんで雇用を失って、所得がなくなってしまった方、この2つに分断されているのだと思います。ではどちらが多いのかというと、賃金が維持されている方が多いわけですから、世論調査をすれば当然、「緊急事態宣言を延長すべき、コロナを封じ込める」という声が大きくなってしまう。苦しんでいる方の声がかき消されてしまうようなことが起こっているのだと思います。
飯田)確かに、飲食やサービス業、宿泊業、この辺りは非正規雇用比率も従来から高かったところではありますよね。
会田)そういう方々の声というのは、なかなか届きづらいです。これが過半数を超えないと、世論は「緊急事態宣言の延長、ビジネスや経済をある程度抑制することが必要だ」という流れになってしまうのではないかと思います。
最終的にはすべての人に悪影響を及ぼす
飯田)その辺りの分断というのが、アベノミクスよりもっと前の、年越し派遣村などが問題になったあの時代と似ているという印象を受けるのですが、正社員雇用や年金の受給など、確固たる収入がある人も最終的には影響を受けますよね。
会田)おっしゃる通りです。今回苦しんでいる方々の支出が落ちれば、それが全体のビジネスのパフォーマンス、状況にも悪影響を及ぼし、それが回り回って正社員の賃金も上がらなくなる、または下がって行き、雇用を失うという形になります。やはり経済が痛まないように、現在コロナ禍で苦しんでいる方々を経済政策で支える必要があります。もう一度給付金をやってもいいでしょうし、大胆な政策がまだ必要だと思います。
飯田)確かに政府がまったく政策を出していないわけではありません。雇用調整助成金や個人への給付もやるということにはなっていますが、希望的な面はどうでしょうか?
会田)現在、コロナの問題が収束はしていませんが、緩和はしています。それに伴って政策も尻すぼみになってしまう、これはよくないと思います。コロナ問題が緩和に向かうとともに政策は強化して、最終的に「コロナの収束宣言とともに政策が終わる」という形にして行かなければいけないと思います。
次の補正予算を含んだ経済対策に踏み出すべき~2桁の規模で
飯田)雇用を支えるとか、いろいろ困窮しているところに、給付金などが道具立てとしてはあるのかも知れませんが、なかなか必要とする人に伝わっていない、予算も積み残しているというデータもあります。
会田)予算の執行はしっかりすべきだと思います。現在、衆院を来年度予算案が通りましたので、年度末までに、来年度の予算が国会を通ることが確実になっています。次の補正予算を含んだ経済対策に踏み出す1つの重要な局面に来ているのではないかと思います。
飯田)本予算が通って新年度になったところで、すぐにでも補正は審議した方がいいと。
会田)した方がいいと思います。
飯田)どれくらいの規模でしょうか?
会田)規模感はいろいろな議論があるのですが、前回の補正と同じくらいの規模のものをやっていいと思います。
飯田)前回の補正というのは、第3次補正。
会田)はい。
アメリカを見習い額も内容も充実させるべき
飯田)そうすると、全体で本予算も含めて30兆ということが言われましたけれども、2桁兆規模はやらなくてはいけないと。
会田)はい。2桁兆規模はやるべきだと思います。これは日本だけでなく、アメリカでもそういう動きがあります。日本もアメリカを見習って、しっかり政策を出し惜しみせずに、額も内容も充実させて行くべきだと思います。
飯田)ヨーロッパも実はけっこう財政出動をしていますよね。
会田)していますね。
飯田)緊縮でよく見習えと言われるドイツですら、確か税金を下げていますよね。
会田)下げていますし、ヨーロッパの場合は大枠として、財政赤字をGDPに対して3%以下に収めなくてはいけないという抑制があるのですが、そういう抑制自体も緩和して行こうという動きが出ています。
財政出動をして国民を支えて行く
飯田)そうなのですね。あれがネックになって、かつての財政危機のときにギリシャやイタリアが苦しみましたよね。
会田)それが足かせとなって、これまで財政政策が自由に打てませんでしたが、今回はまだコロナの問題が続くわけですから、形として財政政策をしっかり出せる政策、お金を出せるフレキシブルな形を維持して行こうという動きがあります。
飯田)なぜこういうときに「欧米を見習え」とみんな言わないのですかね?
会田)お金を使わない、借金を減らす、財政をよくするということに関しては、「欧米を見習え」という声が多いのですが、こういうしっかり使って国民を支えて行くという局面では、なかなか欧米を見習えという声が出ないのは残念だと思います。
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