「1番・投手」大谷が先頭打者アーチ! 5年前の奇跡の再現なるか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年3月24日 17時45分
アスレチックスとのオープン戦に先発し、力投するエンゼルスの大谷翔平投手=5日、アメリカ・アリゾナ州メサ
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、日本時間の3月22日に行われたMLBのオープン戦に「1番・投手」でスタメン出場し二刀流復活ののろしを上げた、エンゼルス・大谷翔平選手にまつわるエピソードを取り上げる。
いよいよ3月26日から、プロ野球が開幕します。昨シーズン(2020年)は開幕が3ヵ月延期・試合数削減・無観客開幕・11月までレギュラーシーズン開催とイレギュラーな1年になりました。今シーズン(2021年)も、延長戦を行わず9回打ち切り制が決まるなど変則的ではありますが、昨年行われなかったセ・パ交流戦を含め、143試合がフルで行われる見通しなのは野球ファンとして嬉しい限りです。
一方、MLB(米メジャーリーグ)も開幕の足音が近づいて来ました。こちらは現地時間の4月1日に開幕戦が行われます。大谷翔平が所属するエンゼルスは本拠地・アナハイムのエンゼルスタジアムにホワイトソックスを迎え、ナイターで開幕(日本時間2日午前11時5分試合開始)。大谷は、オープン戦から注目を浴びています。
バッティングは絶好調。24日(日本時間)のレンジャーズ戦で10試合連続安打をマーク。この試合を終えた時点で、オープン戦の打撃成績は25打数15安打、4本塁打、7打点。打率はジャスト6割! これだけでも凄いことですが、恐ろしいのは、その2日前に大谷は先発登板しているのです。しかも「1番・投手」で。
「メジャーでも二刀流」を掲げてメジャー移籍した大谷は1年目の2018年、快調に4勝を挙げますが、6月にヒジのじん帯を痛め、オフにトミー・ジョン手術を受けました。2019年は打者に専念。2020年は二刀流復活を目指しましたが、今度は「右屈曲回内筋群損傷」で登板は2試合にとどまり、0勝でシーズンを終えました。
今シーズンは故障も癒え、オープン戦で再びマウンドにも立っている大谷。思い切り腕も振れるようになり、160キロ台の速球も披露しています。22日(日本時間)に行われたパドレス戦、エンゼルス・マドン監督は指名打者(DH)を使わず、大谷を「1番・投手」でスタメン起用しました。二刀流・本格復活宣言です。
策士として知られるマドン監督は、カブス監督時代の2018年、左腕と右腕、2人のリリーフ投手を交互に起用するため、1人に投げたら左翼を守らせ、再びマウンドへ送るなどの奇策を見せています。昨シーズンから、エンゼルスの監督に就任。この指揮官が大谷をどう使うのか注目されていました。大谷ともコンディションについて何度も話し合いを重ねた上で実現した「1番・投手大谷」は「待ってました!」です。
大谷も監督の期待に応えます。打っては第1打席でセンター前、第3打席でレフト前にヒットを放ち2打数2安打(2打席目は四球)。投げては4回を2安打1失点に抑え、5奪三振。3回にはメジャー移籍後自己最速となる101・9マイル(約164キロ)を計測しました。
マドン監督は公式戦本番でも、DHを解除して「1番・投手」で大谷を起用するプランを考えているのでしょう。ただしホームの試合だと、1回表のマウンドを終えて、その裏すぐに打席が回って来るため、この策はビジターでの試合に限られます。敵地でのパドレス戦は格好のテストになり、大谷はしっかり結果を出してみせました。
ところでこの「1番・投手」、もし公式戦で実現すれば「歴史的事件」になります。エンゼルスの公式発表によると、レギュラーシーズンで先発投手としてマウンドに上がった投手が、投げながら打者として1番で出場するのは、1901年、ジャイアンツのジム・ジョーンズ選手以来、120年ぶりになるとか。つまりほぼ前例がない、ということです。
もっとも大谷は、日本ハム時代に「1番・投手」を公式戦ですでに経験済みです。2016年7月3日、敵地ヤフオクドーム(当時)で行われたソフトバンク戦で、栗山監督はDHを解除。「1番・投手」で大谷を先発させました。ざわつくスタンドを、大谷はさらに騒然とさせます。1回表、先頭で打席に立った大谷は、何と、プレイボール直後の初球を振り抜くと、打球は右中間スタンドへ飛び込む10号ソロに!「先発投手が先頭打者ホームランを放つ」という、まるでマンガのような快挙をやってのけたのです。
しかも投げては、強力ソフトバンク打線を相手に8回を5安打10奪三振、無失点に抑え、自身7連勝となる8勝目を挙げました。こうなるともう、マンガを超えています。しかも日本ハムは10連勝で2位に浮上。シーズン終盤、ソフトバンクとの熾烈な争いを制してリーグ優勝、日本一を勝ち取る起点になったのは、大谷の「1番・投手」でした。
大谷はこのとき、試合後にこう語っています。
「『5番だったら(初回に)回ってくるか分からないし、1人出たら準備もしなくてはいけない。(1番は)最初から先頭ということでやりにくくはなかった』」
~『日刊スポーツ』2016年7月4日配信記事 より
「1番・投手」は、つまり理にも適っているのです。大谷のような強打者がプレイボールからいきなり1番で出て来ると相手投手もやりにくいでしょうし、マドン監督も当然、5年前の実例をふまえての起用でしょう。「先発投手・先頭打者ホームラン」の奇跡がメジャーでも再現されることを期待しましょう。
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