北朝鮮の弾道ミサイル発射で、日本は「遺憾だ」「抗議だ」を繰り返すだけではいけない
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年3月27日 11時35分
25日、北朝鮮の国防科学院が発射した新型戦術誘導ミサイル
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月26日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射したニュースについて、元航空自衛官で軍事評論家の潮匡人氏を電話ゲストに迎えて解説した。
北朝鮮が弾道ミサイル2発を発射、その狙いはいかに
政府は3月25日、北朝鮮が25日午前7時4分ごろと同23分ごろ、北朝鮮の東部・宣徳(ソンドク)付近から日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下したと発表した。北朝鮮による弾道ミサイル発射は2020年3月29日以来、1年ぶり。菅総理大臣は警戒監視態勢を強化し、4月上旬の日米首脳会談で北朝鮮問題を主要議題の1つとする考えを示している。
飯田)東方向に飛んだ2発の弾道ミサイル、北朝鮮側の発表では変則軌道であるとか、新型だと言っていますけれども。
北朝鮮が非核化ではなく、核保有国として交渉して生き残ろうとする一環の行動
宮家)北朝鮮としては、自らを核保有国として世界に認めさせて、非核化ではなく軍備管理をやって、制裁を解除する交渉をして、何とか生き残ろうということです。今回もその大きな流れの一環です。トランプさんがいる間は変則的なことがあったけれども、基本的には、北朝鮮のやり方は変わらないと思います。しかし、バイデン政権には、経験者がたくさんいますから、簡単には騙されませんよ。みんな、「ああ、またやったか」ということで、冷静に対応するでしょう。批判はあるでしょうが、では他に方法があるのか。北朝鮮に対し強く出るということも案としてはあるのですが、そうすれば戦争になり、当然被害が出ますし、大きなコストもかかります。
飯田)アメリカ側が。
宮家)アメリカも韓国も、ですね。そういうことを考えたら簡単にはできません。クリントン政権の1994年に北朝鮮危機がありましたが、「あのときに一気にやっておけばよかった」と個人的には思った時期もありましたけれど、なかなかそれはできませんよ。結局、北朝鮮は中国に頼りながらアメリカと対峙して、必死で核保有国になって、軍備管理をやることで生き残る、ということだと思います。今回のミサイル発射もその一環でしょうし、その1つ1つに過剰反応していると、大変なことになると思います。
「イスカンデル」と同タイプのミサイルか、「ディプレスト軌道」のものか
飯田)この飛んだものが一体どういうものだったのかということも含めて、軍事評論家の潮匡人さんに電話でお話を伺います。潮さん、おはようございます。
潮)よろしくお願いします。
飯田)北朝鮮の発表では、変則軌道であるとか、いろいろなことが出て来ていますが、飛んだものはどういうものだと考えられますか?
潮)北朝鮮のメディア発表、政府発表を額面通りに受け止めると、「新型戦術誘導弾の発射実験」ということですので、従来からあるスカッドミサイルという見方もありましたが、そうではなく、新たに開発したものの実験を行ったということです。いちばん可能性が高いのは、2021年1月の軍事パレードでお披露目された、新しい短距離であろうと思われる弾道ミサイルです。
飯田)いままでのミサイルも、原型はロシア、または中国の技術であるなどと言われています。今回のものも、どこかの技術が入っているのでしょうか?
潮)2019年に何度も撃たれたロシアの「イスカンデル」というミサイル、これと同じようなタイプではないかという可能性も残っています。これは「素直に変則的な軌道で飛んで行く」というものになるのですが、NHKの報道によると、通常の軌道だったということです。しかし、フジテレビでは、あえて低く撃つ「ディプレスト軌道」だったと報道しています。今回、短距離と言われているわけですが、低く抑えても450キロまで飛んでいるという見方をすると、通常の撃ち方をすればもっと飛びますので、そうなると、準中距離弾という可能性も考えられます。今回撃った新型がどういう性能なのかは、今後の分析を待つということだと思います。
このまま次々に新型を発射することになれば、再び激しく対立する米朝
飯田)通常で撃つと射程がそれだけということになると、韓国だけではなく、我が国も、ということになりますか?
潮)そうですね。我が国も一部射程に入る可能性が十分あるだろうと思います。定期的に北朝鮮は軍事パレードで新たな武器をお披露目して、お披露目したものを実際に発射するということを、この10年繰り返しているわけです。今回使用されたのではないかと思われるもの以外に、ICBM(大陸間弾道ミサイル)や、潜水艦から発射する弾道ミサイル(SLBM)なども軍事パレードでお披露目されています。特に「火星16」などと呼ばれている、非常に大型のICBMは、トランプ政権ですら「これはダメだ」と、発射は許さないと言って来た「レッドライン」を大きく踏み越えることになります。「状況がエスカレートするのであれば、我々は対応する」とバイデン大統領は記者会見ではっきりとおっしゃっているわけです。このまま彼らが新型を次々と発射することになれば、かつてのトランプ政権のように、米朝が激しく対立し、緊張する方向に突き進んで行くのではないでしょうか。
今後も北朝鮮は手を変え品を変えてやって来る
飯田)なるほど。スタジオには宮家邦彦さんもいらっしゃいます。宮家さん、どうでしょうか。そういう方向に行くのでしょうか?
宮家)北朝鮮としては、戦争に至らない範囲内で、しかし、できるだけ相手に振り向いて欲しい、構ってほしいわけですから、「こんな武器を持っていてすごいでしょう。こんなことをしたら大変なことになるでしょう。だったら経済制裁をやめたらどうですか」というような形に持って行こうと必死なのだと思うのです。特にコロナで北朝鮮の経済も混乱していると思うので、喉から手が出るほど経済支援が欲しいはずです。おそらく手を変え、品を変えてやって来るのでしょう。そして、幸いなことに、今回の米政権は素人ではないですから、それをもうアメリカの人たちだってよくわかっている。
中距離以上のミサイルは「断固として許さない」、「非核化」を日米で合意して北朝鮮に突きつけるべき
飯田)潮さんは今後の展開をどうご覧になっていますか?
潮)日本も大きく関係している国ですので、例えば4月の日米首脳会談などで、日本政府がどういう働きかけをするのかということにも、大きく左右される問題です。日本は人ごとのように論評してはいけないだろうと思います。日本としては、日本を射程に収めるような、中距離以上の射程のものについては、「断固として許さない」ということ。そして最終的には、北朝鮮の非核化というゴールを日米間で決して変えないのだというところを、きちんと合意をした上で、北朝鮮に対して突きつけて行く。それは最低限必要なことだと思います。これまでと同じように「遺憾だ」とか、「抗議だ」とか、口で言うだけではいけないと思います。
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