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奥川プロ初勝利にみる 高津監督の“心憎い配慮”

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年4月12日 17時20分

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【プロ野球ヤクルト対広島】 5回表、会沢翼を三振に抑えた奥川恭伸 =神宮球場

話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、4月8日に神宮球場で行われた広島戦で、待望のプロ初勝利を挙げたヤクルト・奥川恭伸投手にまつわるエピソードを取り上げる。

【プロ野球ヤクルト対広島】5回表、会沢翼を三振に抑えた奥川恭伸=2021年4月8日 神宮球場 写真提供:産経新聞社

『野手の皆さんにたくさん点を取っていただいて、初勝利を挙げることができた。うれしい気持ちでいっぱいです』

~『サンケイスポーツ』2021年4月9日配信記事 より(奥川ヒーローインタビュー)

星稜高時代は甲子園を沸かせ、鳴り物入りでプロ入りしたヤクルト期待の2年目・奥川恭伸(19)が4月8日、ホーム・神宮で行われた広島戦に今季(2021年)2度目の先発登板。きっちり間隔を取って奥川を「使いながら育てる」方針の高津監督は、前回登板・3月28日の阪神戦から中10日で奥川をマウンドに送り出しました。

奥川にとって広島は昨年(2020年)11月10日に行われたシーズン最終戦、プロ初登板で対戦した相手です。あのときは3回途中で5失点KOと、カープ打線にプロの厳しさを教えられました。しかし負けん気の強い奥川。やられっ放しで済まさないとリベンジを誓い、マウンドに上がりました。

ところが……初回、菊池涼介・田中広輔を凡打に打ち取りながら、そこから5連打を浴び、いきなり4点を献上。また序盤KOか……というムードが漂ったその裏、ヤクルト打線がすかさず反撃します。広島先発・中村祐太から、山崎晃大朗・中村悠平・山田哲人が3連打で無死満塁のチャンスをつくると、村上宗隆の押し出し四球、荒木貴裕・太田賢吾の連続犠飛、西浦直亨のタイムリーで4点を奪い、試合は振り出しに。

奥川は3回、鈴木誠也にソロ本塁打を浴び再び勝ち越しを許しますが、ヤクルトはその裏、西浦が2度目の同点タイムリー。さらに松本友の連続タイムリーで6-5と一気に試合をひっくり返します。4回にも山崎のソロ本塁打、5回も西浦・山崎のタイムリーでさらに4点を追加。

味方のたび重なる援護に奮起した奥川は、4回・5回をヒット1本に抑え、5回10安打5失点で勝ち投手の権利を持ったまま降板。あとはリリーフ4投手の継投でヤクルトが逃げ切り、奥川は1軍登板3試合目で、嬉しいプロ初勝利を挙げました。

今回の初勝利、確かに内容は決して褒められたものではありませんでしたが、試合を観ていて感じたのは「奥川はチームメイトに愛されているなぁ」。そもそも初回4失点、しかも2ケタ安打を浴びたのに勝利投手になるなんて、普通ありえないことです。奥川自身がヒーローインタビューで語ったように、この初勝利はまさに野手のおかげですが、一緒にお立ち台に上がった西浦のコメントがまた印象的でした。

『3安打3打点のヤクルト・西浦はプロ初白星の奥川と一緒にお立ち台に。「“奥川さん”が投げていた。何とか打線で援護しようという気持ちでいきました!」と“奥川さん”3連発。29歳も感心する19歳の粘りの投球でした』

~『スポニチアネックス』2021年4月9日配信記事 より

10歳下の後輩を、何度も“奥川さん”と“さん付け”で呼んでイジった西浦。奥川が“チームの宝”と認識されている証しであり、先輩野手にも可愛がられていることがよくわかるシーンでした。

井口資仁監督がじっくり慎重に育てている同期のライバル、ロッテ・佐々木朗希とは対照的に、高津監督は今季、奥川を1軍で積極的に使って行く方針です。投手陣の台所が苦しいというチーム事情もありますが、もう1つの大きな理由は、奥川が投げるとチームが活気づくからです。奥川を援護した打線の爆発ぶりを見ていると、まさに“お祭り感覚”。こういう雰囲気をつくり出し、開幕3連敗から勝率5割(8日現在)に戻したのは、高津監督の功績でもあります。

そして、ヤクルトベンチの忍耐力も感じた1戦でした。2回には雷雨による1時間近い中断もあり、奥川の初回の出来から考えて、ここでピッチャーを代えて仕切り直す手もありましたが、高津監督は続投を選択。

続く3回、鈴木誠也に勝ち越し弾を打たれ、さらに連打を浴びた時点で、普通なら交代でしょう。しかし高津監督は動かず、自分でピンチを乗り切るよう、奥川をあえて続投させました。台所事情が苦しいとはいえ、なかなかできないことです。

奥川は堂林翔太を併殺打に打ち取り、みごと危機を脱してみせました。ベンチの我慢と、打線のアシスト、そして奥川自身の逆境を乗り越える負けん気……チームが一体となったこの1勝は、ヤクルトにとって何勝分もの価値がある1勝でした。

もう1つ、高津監督のファインプレーがありました。奥川の1年後輩にあたる、星稜高出身のルーキー捕手・内山壮真を1軍ベンチ入りさせ、イニング間の投球練習で奥川の球を受けさせたのです。勝手知ったる後輩が同じグラウンドにいる心強さ。こういう指揮官の心憎い配慮が、選手のモティベーション向上につながっているように思います。

4月16日に20歳の誕生日を迎える奥川。高津監督はまた間隔を空けて奥川を登板させる予定で、次回登板は「成人後初登板」になりそうですが、奥川が投げるたびにチームが活気づき、白星を重ねて行けば、セ・リーグはもっともっと面白くなりそうです。

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