アメリカがここまで「一丸となって台湾をサポート」するのはなぜか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年4月16日 11時35分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月16日放送)に国際政治学者・慶應義塾大学教授の神保謙が出演。台湾・蔡英文総統がアメリカの非公式の代表団と面会したニュースについて解説した。
台湾の蔡総統がアメリカの非公式の代表団と面会
台湾の蔡英文総統は4月15日、アメリカのバイデン政権が派遣した非公式の代表団と総統府で面会した。中国の習近平指導部が台湾に対する軍事的な圧力を強めるなかで、アメリカが台湾を支援する立場を示す狙いがあるとみられている。なお、バイデン政権が代表団を台湾に派遣するのは初めてのことだ。
飯田)日本で知られたところだと、アーミテージ元国務副長官の名前があります。この人選の意味もありますか?
神保)今回は非公式ながら、「バイデン大統領の要請」ということで、バイデン政権の意向が強く表れていると考えていいと思います。あと、人選なのですが、今回訪問したのはリチャード・アーミテージ氏、ジェームズ・スタインバーグ氏、もう1人、元議員がいるのですが、アーミテージ氏はジョージ・W・ブッシュ政権、スタインバーグ氏はオバマ政権。それぞれ共和・民主ですよね。その双方の党の国務副長官を務めたという高位級の重要人物です。
「超党派の関与として台湾にコミットしているということを読み解いて欲しい」というアメリカのメッセージ
神保)ここで込められたメッセージというのは、共和・民主の「超党派の関与として台湾にコミットしているということを読み解いて欲しい」ということだと思います。もちろん、アーミテージ氏は、個人的には過去2回の選挙で共和党に投票していない「反トランプ」ということだったのですが、それでも重鎮ですよね。
飯田)なるほど。
神保)中国からすると、民主党のスタインバーグ氏の台湾訪問は不快感が大きいのです。スタインバーグ氏は、もともと「中国のよき理解者」という位置付けで、トランプ政権の対中政策にも厳しく批判して、オバマ政権時には「戦略的再保証」と言ったのですが、もちろんわかり合えないところはあるけれど、「できるだけ米中が共有する部分を増やして行こう」という推進者だったのです。いよいよそのスタインバーグ氏も「このような形で中国に厳しくなったのだ」ということを印象付ける意味合いが強いということだと思います。
一丸となって台湾をサポートするアメリカ
飯田)このメッセージは中国に向けて「アメリカはもう一丸なんだぞ」ということを見せるということですか?
神保)中国にとって、最も基本となるのは、アメリカが「一つの中国」原則を確認するということで、これ自体は「2月のブリンケン国務長官との電話会談で言質を取った」と中国は言っているわけです。ところが、アメリカはこのあとで、アラスカ・アンカレッジの米中閣僚級協議で報道陣を前に、冒頭から台湾への懸念を表明しましたし、4月9日には台湾とアメリカとの当局者同士の接触規制を緩和したり、実務者会合をよりハイレベルで行えるようにしています。また、軍を見ると、アメリカの太平洋軍の前司令官だったデービッドソン氏と、現司令官のアキリーノ氏という方がいますけれども、双方ともかなり厳しく台湾海峡の軍事情勢に懸念を表明しています。議会を見ても、いま「戦略的競争法」という法律が上院で議論されているのですが、これも基本的には台湾との関係をより強化するということで、アメリカは一丸となって台湾をサポートするということになっているのです。
中国が気候変動担当特使のケリー氏を上海で迎える意味
神保)そのタイミングで、いま、気候変動担当特使のケリーさんが中国に行っているのですが、中国はこれを歓迎するはずがありません。
飯田)今回、上海に飛ぶということが報じられていますが、北京ではなく、上海なのですね?
神保)基本的にケリー級の人が行けば、習近平主席や李克強首相が出るのですが、上海でやるということは、「今回は出ませんよ」ということです。アメリカも閣僚級協議をアンカレッジでやったのだから、中国も少し遠いところでということでしょう。でも、一部には、やはり気候変動で米中は協力するから、アメリカも妥協してしまうのではないかという見方があったと思うのですが、そんな雰囲気は、いまの上海では全然ないと思います。
飯田)ある意味ケリーさんに対しては、相当な塩対応をしているということですか。
神保)そうだと思います。「環球時報」など、中国の新聞を見ても、「これによって米中関係が好転するということはないだろう」と書かれています。あれだけ台湾、人権の問題で中国を押し込んでおいて、他の問題で協力するということはなかなか難しいぞ、ということをまずは示すと。実務的にいろいろ協力のメニューを考えるのでしょうが、雰囲気は相当悪いと思います。
中国に誤った計算をさせないためのアメリカからの強いメッセージ
飯田)にわかに「台湾海峡」というキーワードがいろいろなところで飛び交うようになって来ました。アメリカ側の分析として、「強いメッセージを送らなければ、人民解放軍が判断を誤る可能性もある」と認識しているわけですか?
神保)隙をつくってはいけないということで、特に台湾海峡は、いま中国の軍事力が圧倒的ですし、「これはもしかすると上陸制圧作戦ができて、アメリカの介入を阻止できるのではないか」という自信さえ生まれかねないということで、「そういう計算をして欲しくない」ということだと思います。政治的にも重要な人物がコミットして、アメリカ議会もそれをサポートし、軍も準備ができているぞということで、中国に誤った計算をさせないためのやり方が進んでいるということだと思います。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
トランプ氏が大統領に就任したら台湾の運命は―独メディア
Record China / 2024年11月21日 7時0分
-
米中首脳会談…1年ぶり対面で “トランプ政権懸念”に対話継続確認
日テレNEWS NNN / 2024年11月17日 11時49分
-
米中首脳会談 双方が「対話」と「協力」の重要性指摘、習主席 トランプ新政権になっても「対話維持する努力したい」バイデン大統領「いつも率直な会話だった」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月17日 9時36分
-
米中首脳会談 ペルーで16日開催 北朝鮮兵の参戦問題、台湾周辺も議論
産経ニュース / 2024年11月14日 9時30分
-
中国は米大統領選の行方をどう見ているのか。八つの視点から解説
トウシル / 2024年10月31日 7時30分
ランキング
-
1百条委員長がN党立花氏を告訴=SNSなどで名誉毀損容疑―兵庫
時事通信 / 2024年11月22日 22時42分
-
2【判決】“不倫を続けるため殺害” 妻と1歳の娘を殺害した男に無期懲役 裁判長「酌むべき点は皆無」と断罪 《新潟》
TeNYテレビ新潟 / 2024年11月22日 19時22分
-
3日本一の納豆は?消費量が全国46位の大阪で『全国納豆鑑評会』 会長「納豆のおいしさに、まだ目覚めていただいていない」
MBSニュース / 2024年11月22日 18時0分
-
4【続報】自民・田畑議員巡る疑惑 無断党員登録 複数の事業所で
KNB北日本放送 / 2024年11月22日 20時37分
-
5「スギ薬局」が別患者の薬混入し女性死亡 遺族に調剤ミス認め、4000万円支払いで和解
産経ニュース / 2024年11月22日 17時29分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください