ワクチン開発の妨げになった“戦後から続く日本の問題”
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年4月21日 17時30分
Illustration of a syringe and the logo of the american laboratory Pfizer which, following its clinical trials, announces a vaccine against covid 19. Paris on 18 November 2020. Photograph by Magali Cohen / Hans Lucas. Illustration d une seringue et du logo du laboratoire americain Pfizer qui annonce suite a ses essais cliniques un vaccin contre le covid 19. Paris le 18 novembre 2020. Photographie par Magali Cohen / Hans Lucas
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月21日放送)に慶応義塾大学教授・国際政治学者の細谷雄一が出演。新型コロナウイルスの感染が拡大している東京都・大阪府・兵庫県を対象に、特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令する方針を政府が固めたというニュースについて解説した。
政府、東京・大阪・兵庫の3都府県に緊急事態宣言発令へ
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政府は4月20日、新型コロナウイルスの感染が拡大している東京都・大阪府・兵庫県を対象に、特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令する方針を固めた。宣言が発令されれば、2020年4月、2021年1月に続いて3度目となる。
飯田)大阪に関しては要請をすでに正式決定しているというところですが、東京・兵庫もということになります。
感染の拡大を抑える「集団免疫7割」に近付きつつある英米
細谷)世界ではワクチンが広がって、イスラエルやイギリスでは、マスクを外して歩いています。イスラエルではビーチで泳いでいる人も出て来ているのです。新型コロナウイルス感染症で今回明らかになっているのは、集団免疫を人口の7割が持つ必要があるということです。そのためにどのようにしてワクチンを広げて行くか。アメリカやイギリスは感染拡大してからワクチン接種までが早かったので、比較的、「集団免疫7割」に近付いています。
飯田)人口の7割が免疫を持てば、感染が拡がりにくくなる。
細谷)日本の場合は、感染の数は少ないけれど、ワクチン接種はまだこれからという段階です。もう1年が経過して、国民も自粛疲れということが出ているなかで、どのようにして感染拡大のための努力を続けるかというのは、本当に難しい段階に来ているのではないでしょうか。
国民の生活を守るためにも、従来とは違う法制度を取り入れることが必要
飯田)2020年4月に最初の緊急事態宣言が出されました。あの当時から「やっている策が同じだ」という指摘もありますが、私権の制限ができないこの国では、こういうことをやるしかないのですかね。
細谷)例えば大震災があっても、書類がなければ被災地に行けないとか、集団的自衛権のときもいろいろな厳しい制限があって、自衛権も行使できないということがありました。日本は戦後、「民主主義・平和主義」ということで、国民の権利に対して非常に敏感だった。これも戦前の反省から来ているわけです。ところが個人の人権を尊重し、民主主義を尊重し、また平和主義を尊重する、どれも日本にとって必要なものではあるのですが、これに対して過敏になった結果として、自衛権の行使もそうですし、震災もそうですし、今回のような感染症もそうですが、国民の生命や生活を守れないほどに制約が厳しいわけです。そういうものに対して、いろいろな形で従来とは違うような法制度を取り入れることが必要だということも考えるべきではないでしょうか。
英米にできて日本にできないワクチン開発でのリスク対応~戦後日本が続けて来た大きな問題
飯田)平時ではこれで回っていたのかも知れませんが、有事対応ができていないということになってしまうわけですからね。
細谷)ワクチンにしても、どの企業も大変なお金を投じてやるのですが、訴訟リスクがあります。イギリス・アメリカは政府がその訴訟リスクを相当程度肩代わりすると。さらには、アメリカもイギリスもワクチンを開発するときに治験をかなりスキップして、短いプロセスで許可している。これは平時ではなくて有事であるから、それだけ縮めてとにかくワクチンを普及させ、問題が出て来たらあとで対応するということです。
飯田)有事だということで。
細谷)ところが日本の場合、仮に日本製のワクチンで副反応が出て、それによって亡くなった方が出たら大変な問題なわけです。つまりワクチンで1人でも副反応で亡くなる方が出るということであれば、もしかしたらそれで数千人、数万人の命が救えるかも知れないけれども、それは怖いからやれない、というのが、日本が戦後続けて来た大きな問題なのではないでしょうか。
飯田)全体としてリスクとメリットのようなものを天秤にかけるということが、かつて「人命は地球より重い」と言った総理大臣もいましたけれども、そちら側の思考に傾いてしまう。
細谷)リベラルな側から見ると、ワクチンによって数万、数十万の命が救えるかも知れないけれども、仮にワクチンによって1人の人が亡くなるとしたら、そのワクチンは開発すべきではない、使うべきではないということです。イギリス・アメリカではワクチンは流通しているのに日本では流通しない、それは日本の企業にとって、国際競争で負けるということになってしまいます。
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