三浦瑠麗氏「中国は自信を深めて意思も強めてしまった」 日本も巻き込まれる“台湾有事”への現在地
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年4月24日 12時7分
国際政治学者・三浦瑠麗氏が4月22日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に生出演。4月16日に行われた日米首脳会談を受け、「台湾有事」に備えた考え方について語った。
日本が巻き込まれることまで想定していなかった「台湾有事」
飯田浩司アナウンサー)三浦さんにまずお伺いしたいのが、日米首脳会談についてで、現地4月16日、ワシントンで行われました。すでに、会談の前から中身について、「台湾」(の文言が)が出るのではないかとか、いろいろなことが言われていましたが、三浦さんはどうご覧になりましたか。
三浦)非常に実務的な内容なので、総理との相互の信頼関係というのは副大統領経験者ですしそんなに時間をかける必要はなかったのかなと。共同声明の中身としては過不足ないのですが、ただ、いままでの状況とはちょっと違う日米関係。つまり(声明の中で)中国を名指さざるを得なくなってしまった現在において、ある意味で中国に押し込まれてきているわけですよね。押し込まれているということの認識をちゃんと共有するし、日本もあまりうやむや言わずに、そのポジションをしっかりととるというのは、菅さんの考え方と一致しているのではないでしょうか。
飯田)現実を見れば、こうなるというのがだいたい出てくるというか。あとは、日本の行動というか肉付けの部分で、それこそ、安保法制は通ったと。いまの憲法上では、最大限できることはやれるようにしてあるということになっていますが、じゃあ、台湾で何かが起こったときにどうするかとか、国民の覚悟も含めてできているかというところですかね。
三浦)そうですね。台湾有事は、本来は我々としては一線を引いていたわけですよね。だけれども、台湾有事が実際にどのような形で起こるのかと。つまり、台湾を威嚇している状態では、さすがに米中の実戦にはならないだろうという話で、我々はやっぱり「台湾海峡危機」並みのところまでしか想定していなくて、それはもちろん言葉では非難するけれども、我々の有事ではないという感覚だったと思います。ただ、もし、本当に熱戦が行われるようなことがあるとするならば、当然、日本も巻き込まれるだろうということです。この巻き込まれるだろうというのは、単に日本がポジションを取っているからということではなく、中国の行動がそこまでしかねないという判断になってきているということです。
飯田)何か、日米の2プラス2しかり、クアッド、日米豪印の首脳でオンライン会議しかり、「やるなよ」「俺たちは本気なんだからな」と必死にアメリカもメッセージを出そうとしているように見えるのですが。
三浦)それはそうで、やっぱり1990年代といまのいちばんの違いというのは、いままで中国が甘い考えで非常に主観的に台湾問題を捉えていたのに対して、当時実力の差を見せつけられた中国は、その後、海軍力の増強に舵を切るわけです。ですから、すでにいわゆる“アサーティブ”なんて言い方をしますけれども、自信を深めて、意思も強めてしまった中国に対して、どれだけ抑止ができるかという話です。
現実問題として言うと、実は、ロシアのクリミア併合もそうなのですが、台湾事態において流血の惨事が起きないようにするというところは最低ラインだとしても、併合を望む人たちが台湾のなかで多数派を占めるようになったときに、我々は武力併合を阻止できなくなります。つまり、台湾が一丸となって、それこそ中国の武力進行に断固反対すると。最後の一兵卒まで戦うという立場であれば、さすがに、あれだけの規模の地域を併合するというのは無理ですよね。クリミアの教訓というのは、そこにいる住民たちの多数派がロシアへの編入を望んでいる場合に、その人たちが実際に少数意見、3〜4割かもしれなくても、この過半数に満たない人たちを、武力で押さえつけ、そして言論の自由を奪って、どんどん物事を進めていくというのがいちばん怖い問題なので、そこは台湾にしっかりしてもらうしかないというところです。
香港の活動家たちの「限界」
飯田)香港はそもそも論として完全に民主的な選挙ではないから、民意がどこまで反映できるのかというところがありますけれども、そのシナリオって、その地域を治めている政府が結局そっち側に舵を切って、結局そこへ流れていくというのは、経験済みですね、中国は。
三浦)そうですね。ただ、香港に関しては、我々は返還後の香港を生きているので、それに関しては、要は単に中国政府が認めてきた自治の中身を変更するということに過ぎないので、そこは一線を引けるのだと思います。(台湾は)完全に違う行政権が行使されているわけなので、それは。
やはり香港というのは、逃亡犯条例が引っ込められた時点で、学生側が手打ちをすべきでした。手打ちをしていたら、それは、いままでは例外的な勝利だったわけです。だとすれば。そうすると、徐々に改革、開放の方へ舵を切っていくこともできなくはなかったはずなのに、やっぱりそこを見誤りましたね。
飯田)たしかに、日本から研究者の方も何人か行かれていますけれど、(香港中文大学大学院生の)石井大智さんにお話を聞いたときに、やっぱり長老がいないと。妥協できる人がいなかった。そこに持っていけるような、政治的に力を持っている人がいなかったということを指摘しています。
三浦)やはり、特に彼らの“限界”ということで言うと、香港経済に打撃を与え、香港を意味のない存在にすることによって、交渉力を得ようとしたことです。だけど、何らかの達成すべき目的がしっかりと定義されていないと、外圧を使うと危険なのです。つまり、外圧を使ったことによって、中国全土の人たちが、ウイグルとか少数の人たちではないメインストリームの中国人民が、香港の活動家たちを「国賊だ」と考えるようになったわけじゃないですか。中国経済にダメージを与えようとしている。これは持ちませんよね。
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