安倍前総理「増税は絶対にしてはいけない」~コロナ禍での経済対策
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年4月26日 17時45分
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月26日放送)に元内閣官房参与で前駐スイス大使、現TMI総合法律事務所顧問の本田悦朗が出演。安倍前総理が非公開の講演で語ったコロナ禍での経済対策について解説した。
安倍前総理がコロナ禍での経済対策に言及
安倍前総理は4月22日、自身が顧問を務める会合で講演を行い、コロナ禍での経済対策について「間違っても増税はダメだ」と指摘した。安倍前総理は「東日本大震災の復興増税で、その後の日本経済に大きな負担がかかった。そこからアベノミクス構想が始まった」とも説明している。
飯田)「保守団結の会」での非公開の講演でということですが、これ以外にも安倍前総理は議員活動を活発にやられています。
本田)「政治家・安倍晋三再起動」という感じですね。22日に保守団結の会を開催されたのですが、その10日ほど前に、安倍前総理が開催する「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」が開かれて、私はそこで講演をしました。私の右隣が安倍総理で、その隣には岸田さんがいらっしゃって、私の左隣は、アベノミクスの生みの親と言われる山本幸三先生という、そうそうたるメンバーが聞いてくださいました。
復興増税をして財政を直すという発想は絶対にしない~増税はしない
本田)やはり、コロナが終わったあとの経済政策をどうするのかと。凄まじい財政赤字を出しているが大丈夫かと、皆さん、心配しているのです。私は開口いちばん、「復興増税をして財政を直すという発想は絶対にやめてください」ということを申し上げて、すべてそれが出発点です。増税はしないことが出発点で、もちろん消費税増税はしない。できたら一時的に消費税の税率を5%にまで下げるくらいで、デフレ脱却を確実なものにしたい。復興を確実なものにしたい、ということです。
物価安定目標2%~デフレを脱却し、経済が好循環する
本田)何よりも若い人、一般の方に将来に対して明るい展望を持って欲しいのです。明るい展望を保つためには、給与が増えなくてはいけないのです。給与を増やすためには、売り上げが増えなくてはいけない。設備投資も起こっていないといけない。それをすべて壊してしまうのが増税なのです。だから、ある一定のレベル、特に我々が考えているのが、「物価安定目標2%」に近付いて来るとデフレから脱却する。経済の好循環、賃金が上がる、消費が上がる、投資が上がる、売り上げが伸びる、そしてまた賃金が上がる。こういう好循環を回せば国民は明るい展望を持ってくれるのです。それを持つまでは絶対に増税はダメだということなのです。
飯田)絶対にいけない。
本田)しかし、不幸なことに、いまはコロナで大変な財政需要が出て来ています。これは企業、あるいは個人の存亡、生存に関わる費用なので、文句を言ってはいられないのです。必要なものは絶対に出さなくてはいけないのです。
飯田)ケチってはいけないですよね。
本田)命に関わりますから。そんなときに財政再建などと言っている場合ではありません。さすがに財務省もそこは文句を言いません。2020年の1次補正、2次補正、3次補正、すべて入れると90兆円を超える財政赤字を出しました。しかし、世の中で何が起こったかというと、何も起こっていないのです。インフレも起こっていない、金利高騰もない。非常に落ち着いた経済がある。それで救われた日本国民は何人もいらっしゃる。むしろ少ないくらいだということなのです。
いまは非常事態で債務残高は多い~コロナが収束すれば債務残高は下がる
本田)確かに、財政はどこかの段階で改善していないと、いまの債務状況は多過ぎるという気がします。しかし、改善するのはいまではないということです。いちばん大事なのは、いつも申し上げていますが、債務残高を名目GDPで割った値、つまり経済規模に比較して、債務の残高、これまで借金をした累積額がどれくらい大きいかということです。確かに2021年は「ガッ」と増えたのです。
飯田)2021年は。
本田)2021年だけを見ると、危ないという気がするかも知れませんが、いまは非常事態です。ずっとコロナが続くわけではないのです。コロナが終われば普通に戻りますので、債務とGDPの割合を見て、大体並行、あるいは徐々に債務残高の比率が下がって来る。いわゆる収束にもって行ければいいので、何も心配ではありません。
飯田)政府は死なないし続いて行くのが前提ですから。
本田)政府は永遠です。
日本がデフォルトするのではないかと心配している投資家はどこにもいない
飯田)そうすると、そのカーブが少しでも下り坂になっていれば、どこかのタイミングで収束するということがわかっていれば、それでいい。
本田)未来永劫のタイミングで見ればいつかは均衡するのです。ただ、我々は生きていないかも知れないけれども、いつかは均衡する。そうすると、いまの投資家は安心するのです。国債を引き受けてくれるのです。そういう状態にもって行けばいいので何も心配はいりません。
飯田)心配はいらない。
本田)日本がデフォルトするのではないかと心配している投資家は、世界中どこにもいません。まったく大丈夫です。レベルの問題です。日本のGDPは大体500兆円。そして、政府の借金は1200兆円。240%の割合があって、「そういう財政は大丈夫か」という不安があるのですが、大丈夫どころかそれでちょうどいいのです。この経済を見れば。というのは、財務省は、政府の収入と支出だけを比べて財政赤字がいくらとか、それが過去に累積して来るから債務残高はこうだとか、そこだけを気にするのです。つまり自分の庭だけを気にしているのです。
日本は貯蓄超過~政府が投資超過しないとマクロがバランスしない
本田)しかし、日本経済は財政だけではないのです。まず、家計。家計は所得よりも支出が少なくて、残りは貯金するのです。貯金が巡り巡って企業に回り、企業が投資するのです。そして、いま申し上げた家計部門、企業部門。企業部門は大量に銀行からお金を借りて、新しい新規投資をして行くのです。ですから、本当は企業自身は赤字でなくてはいけないのです。しかし、いま企業はほとんど設備投資をしません。むしろ借金返済、コロナの影響もあって、銀行から0金利で借りているのです。ですから、ものすごい貯蓄超過なのです。
飯田)その傾向があります。
本田)そして、海外部門。日本は若干の経常収支黒字です。経常収支黒字ですので、海外部門もお金の流れからすると、貯蓄超過です。そうすると、みんな貯蓄超過、家計も企業も海外部門も、です。バランスしないのです。誰かが投資超過しないと、マクロがバランスしないのです。
財務省のように政府だけを取り出して、均衡を目指すのは基本的に考え方が間違っている
飯田)みんながため込んでしまうと、お金が回って行かないということになってしまいますよね。
本田)それをやっているのが政府なのです。ですから、政府はいま巨額の赤字を出しています。GDPの大体10%くらいの赤字を出していますが、それでもってマクロ経済は成り立っているのです。4つの部門があるなかで、なぜ政府だけ均衡させるのかと。均衡するならすべてでしょうと。家計、企業、海外、政府とすべて合わせて収入支出、あるいは貯蓄投資、このバランスが成り立っているので、財務省のように政府だけを取り出して均衡を目指すのは、基本的に考え方が間違っているということなのです。それをわかって来てくれたと思います。
巨額の財政赤字を出しているからGDPが維持できている
飯田)ドイツを引き合いに出す例もありますが、ドイツは政府も黒字で、その分の赤字を他の国に押し付けているという特異な例ですからね。
本田)そうなのです。ドイツは巨額の経常収支黒字を持っています。日本はマイルドな黒字を持っていますけれども、バランスが取れていて、むしろ、コロナ禍だから巨額の財政赤字を出している。出しているから、このGDPが維持できているのです。もし、無理やり政府の財政を均衡させてしまったら、経済が「ギュッ」と縮まって、小さい形で縮小均衡してしまうのです。そうすると、みんなの給料は下がります。そういう経済が、国民は幸せかと。誰も幸せではないのです。
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