日銀の金融政策は“バンカーから出ることができないゴルファー”と同じ
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年4月28日 17時35分
記者会見する日銀の黒田東彦総裁=21日午後、東京・日本橋本石町の日本銀行
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月28日放送)に数量政策学者・内閣官房参与の高橋洋一が出演。日銀が大規模金融緩和策の維持を決定したニュースについて解説した。
日銀~大規模金融緩和策の維持を決定
日本銀行は4月27日までの2日間、金融政策決定会合を開き、短期金利をマイナスにするとともに、長期金利がゼロ%程度で推移するよう、国債を上限なく買い入れて市場に潤沢な資金を供給するいまの大規模な金融緩和策の維持を賛成多数で決めた。
飯田)緊急事態宣言が4都府県に出ておりますが、必要があれば躊躇なく追加緩和に踏み切るとしております。
下方修正するのならば日銀は思い切ってやるべき
高橋)日銀ももう少し経済の状況に応じて、いろいろなやり方をしてもいいのですけれどね。
飯田)物価変動の見通しについては、下方修正して来ていると。
高橋)下方修正するのであれば、「ドカンと行けばいいのに」と冷やかしているのです。日銀は「セントラルバンカー」と言うでしょう。「でもバンカーショットは下手だね」と。怖がっていて、大きく振れない。だからずっとバンカーのなかにいるという状態なのです。
飯田)いつまでたっても脱出できない。
高橋)「ホームランでもいいから外に出た方が楽ですよ」と言うのだけれど、ずっとバンカーのなかにいて、「打ち方はああだこうだ」と講釈ばかりしているという感じですよね。
飯田)理屈付けはするけれども、結局、何もしないという。
グリーンオーバーしてもいいからまずはバンカーから出るべき
高橋)私はインフレ目標について理解のある人だから、雇用が確保できていれば、そんなにこだわることはないという言い方をしています。それにしても、1回くらいバンカーショットで「ドカン」とホームランでも打って、外に出たら景色が変わるではないかと、いつも思いますけれどね。それができない。だからいいところまで行くのだけれど、「最後の打ち方が」などと言っていて、バンカーから出られない。あとはマスコミネタのようなものを提供するのです。日経新聞などは、そんなところを書いていますが、本当のことは全然書いていない。
飯田)アメリカはコロナ対策というと、財政も金融も「ドン」と出しています。いまインフレになっているという感じですけれど、ある意味グリーンをオーバーしてもいいという感じでやっている。
高橋)グリーンオーバーしてもいいから出すと。それでインフレになったら、そのとき考えればいい。仮にグリーンオーバーしてしまったら、あとはアプローチだろうと。「まずはバンカーを出るのが優先だろう」とやればいいのに、ずっとバンカーのなかに入っているのが日本銀行ですよね。
飯田)結局何がしたいのか、ギャラリーが見ていてもまったくわからない。
高橋)わからない。要するに金融機関の方を向いているわけです。すぐに「副作用だ」などと言うでしょう。全体の経済がよくなれば副作用など関係ないのですよ。「全体の経済を考えて、とりあえずバンカーを出るのが先だろう」といつも言うのですが、やらないのですよね。
「携帯電話の料金プランの値下げ」は物価が上がらない理由にはならない
飯田)バンカーのなかにいる、要するにインフレに行かずデフレのままの状態が心地いい人たちも、なかにはいるということですか?
高橋)わかりませんけれどね。小細工でまた携帯電話の料金が下がるから、という言い方をするでしょう。それを物価が上がらない理由にする。
飯田)物価が上がらない理由に、「携帯電話の新しい料金プランが」ということを言っていました。
高橋)確かに携帯電話の料金は下がったのです。私だと年間6万円くらいで、うちの家族全員だと20万近く下がります。そのお金で何をするかと言うと、他に使うわけです。他に使うということは、他の物価が上がるということです。だから総合物価で考えているときには、「何かの価格が下がった」というのは理由にはならないのです。理由にならないことでも平気で喋るでしょう。マスコミは質問したらいいのですよ。「余ったお金はどこかで使うでしょう。そちらの物価が上がるのではないですか?」と質問すればいい。ミルトン・フリードマンという人は、「個別物価の動きは全体の総合物価には関係ない」と言っています。経済学のことで、「個別物価の動きというのは、一般物価に影響がない」ということの典型例です。携帯電話の料金が下がったら、下がると思うでしょう。でも20万円があったらどこかに使うではないですか。それで上がりますよ。
飯田)全体としては、使ってくれれば上がる。
長期的な金融政策で大きいのは「マネーの量」
飯田)全体の物価というのは、やはり個別の政策云々ではなく、マクロ経済の政策、マネーの量。
高橋)総需要と総供給の差で決まるのですが、総需要の金融政策で大きいのがマネーの量です。もちろん財政政策も関係はありますが。しかし、長期的にはマネーの量です。そう考えると、個別の話は関係ないとわかるはずなのに、どうもそこだけに行ってしまう。それで「携帯の料金が下がりますから、物価が下がります」という記事になってしまうけれど、違うのですよ。
「マネーの量を増やす」のは中央銀行しかできない~携帯電話の料金が下がったことにするのは責任転嫁
飯田)むしろマネーの量ということを考えると、まさにそれをコントロールするというのが日銀というか、中央銀行の役割ですよね。
高橋)お金を刷るのは中央銀行しかいないのだから、マネーの量は中央銀行しかやりようがない。
飯田)ということは、そこで物価の見通しが下方修正されたということは。
高橋)「マネーを増やす」ということを考えなければいけないのだけれど、全然考えていません。
飯田)本当はそこを考えなければいけない。「自分たちは仕事をしていないではないか」というのが数字に表れているにも関わらず、別に責任転嫁をして、「携帯の料金が下がっているから」と言っているということですか?
高橋)そこをマスコミが記者会見のときに「違うではないですか」と言えばいいだけなのですよ。そのくらいはマスコミさんもやったほうがいいと思いますよ。
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