介護事業所「あおいけあ」加藤忠相~介護の仕事はマニュアルではできない
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年5月3日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に株式会社「あおいけあ」代表取締役の加藤忠相が出演。介護事業所「あおいけあ」を立ち上げることになった経緯について語った。
黒木)毎日さまざまなジャンルのプロフェッショナルにお話を伺う「あさナビ」、今週のゲストは神奈川県藤沢市で介護事業所を運営されている、株式会社「あおいけあ」代表取締役の加藤忠相さんです。よろしくお願いします。
加藤)よろしくお願いします。
黒木)加藤さんは大学卒業後、特別養護老人ホームに就職なさったのですが、その介護現場の現実にショックを受けて、ご自分で株式会社「あおいけあ」を設立されたのが25歳のときです。そして高齢者自身の介護度が維持、改善されていることもあって、とても注目を集め、2019年2月には、「アジア太平洋地域の高齢化に影響を与えている最も影響力のある指導者」にも選ばれたということですが、ご自分でどのように思われますか?
加藤)20年経ったのですが、不思議ですね。ごく当たり前のことをやったつもりだったのですけれど、こんなに評価していただけるということに驚きました。
黒木)『世界が注目する日本の介護』、この本を読ませていただいたのですが、漫画仕立てでわかりやすく書いてあるのです。本当に当たり前のことを当たり前にやっているだけで、職員の方々にも「こうする、ああする」という決まりもなければ、自分で考えるという方法を取られているのですね。
加藤)マニュアルがあると、それをやることがトップゴールになってしまいます。そうするとお風呂に入れることがゴールとなり、お風呂に入れられないと失敗になってしまうではないですか。しかし、なぜお風呂に入りたくないのかと考える方がよほど大事ですよね。だから、まず関係性をつくることをトップゴールにして、それが明確になるような職場にしたいと思っています。
黒木)どういう取り組みをやっていらっしゃいますか? まず「あおいけあ」が運営する介護事業所の概要を教えていただけますか?
加藤)25歳のときに始めたグループホームと、小規模多機能型居宅介護という、介護保険では平成18年にできた新しいサービスがあるのですが、これをやるようにしています。
黒木)普通、施設というと決められた時間にご飯が出て来て、決められた時間にお風呂に入って、というイメージがありますが、まったく違うのですよね。
加藤)お風呂に入る時間は決まっていませんし、逆にご飯も何時に食べても構わないと言っています。
黒木)できることは皆さんにやっていただくということでしょうか?
加藤)来た方が、「誰が利用者さんで誰がスタッフかわからない」とよく言われます。実際、スタッフの最高齢は76歳ですので、本当に利用者さんなのかスタッフなのかわからないくらい、おばあちゃんもおじいちゃんも動き回っているというのが特徴です。
黒木)最初に就職された介護現場で、マニュアルがきつくあったのですか?
加藤)そうですね。5分単位でやることが決まっていて、トイレの時間や、離床という起きてもらう時間、エプロンを洗う時間など、ものすごく細かく決まっていたのです。
黒木)そうすると、介護福祉士の人も大変ですよね。
加藤)そうですね。それをこなすことが仕事になってしまって、お年寄りに呼ばれても、「ちょっと待ってて」と言って、そのまま放置してしまうということがありました。やっていても切なくなってしまいますし、何のために仕事をしているのかわからなくなってしまうというのが現実でしたね。
黒木)介護福祉士の方は重労働ではないかと思いますが、労働ではなく、やりがいのある仕事として受け入れてもらえるというのが、いちばん最高のことなのですよね。
加藤)よく介護の現場、医療の現場でも、「生産性や効率性」という言葉が使われるのですが、それは基本的にものづくりの発想ではないですか。私たちが見ているのは、工場でものをつくっているわけではないし、不良品を出さないように仕事をしているわけでもありません。きちんと人の幸せに直結できるような現場をつくることが介護の仕事だと思っています。
黒木)「あおいけあ」を立ち上げようと思われたときに、「そうはなりたくない」という自分の介護に対しての理想があるわけではないですか。
加藤)反面教師というか、マニュアルもガチガチで、春の施設に桜が咲いているときに、「私の休憩時間でいいから、1人1人外を駐車場まで連れて行って桜を見せてあげてもいいか」と聞いたら、「キリがないからやめろ」と言われたのです。それが引き金となって、「もうここでは働けない」と思って辞めてしまったのです。
加藤忠相(かとう・ただすけ)/「(株)あおいけあ」代表取締役
■1974年生まれ。東北福祉大学社会福祉学部社会教育学科卒業。
■大学卒業後、特別養護老人ホームに就職するも、介護現場の現実にショックを受け、25歳のときに神奈川県藤沢市で「株式会社あおいけあ」を設立。代表取締役。「グループホーム結(ゆい)」「デイサービスいどばた」の運営を開始。また2007年より小規模多機能型居宅介護「おたがいさん」を開始。
■「あおいけあ」ならではの地域を巻き込んだ独自のケア事業がメディアで紹介される他、2017年公開の映画『ケアニン~あなたでよかった~』のモデル事業所に。
■2019年2月には「アジア太平洋地域の高齢化に影響を与えている最も影響力のある指導者」に選ばれる。
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