高齢者と若者が住む多世代型アパート「ノビシロハウス」の画期的な仕組み
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年5月7日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に株式会社「あおいけあ」代表取締役の加藤忠相が出演。高齢者が若者とコミュニケーションをとりながら住むことができる多世代型アパート「ノビシロハウス」について語った。
黒木)今週のゲストは株式会社「あおいけあ」代表取締役の加藤忠相さんです。新しい事業として、「ノビシロハウス」というものがあるということですが。
加藤)もうできています。
黒木)「ノビシロハウス」はどのような事業なのでしょうか?
加藤)これは介護保険の事業ではなくて、実はただのアパートなのです。いろいろなところで講演などをするので、いろいろな事業をやっている人と仲よくなるのですが、不動産をやっている人に話を聞くと、高齢者はいまほとんど部屋を借りられないのです。大家さんも管理会社さんも、高齢者に部屋を借りられると孤独死などのリスクを考えてしまうのです。それはおかしいではないですか。この先あと20年経つと、日本は独居世帯が40%以上になるのです。一人暮らしが増えるのに、アパートを高齢者が借りられないのはおかしいので、借りられるアパートをつくろうと思いました。
黒木)それはおかしいですね。
加藤)ただ、高齢者アパートはつくりたくないので、「多世代型アパート」として取り組みました。仕組みとしては、お年寄りでも借りられるのですが、2階の8部屋中の2部屋だけに若者が入り、家賃が半額になっています。その半額分は高齢者が出してくれる形になっています。家賃が半額になる条件は、その部屋に住む人は朝、会社や学校に行くときに「行ってきます」と声をかけてから行く。カフェもついているのですが、月に1回のお茶会を開く。それが半額の条件です。逆に、「声を掛けるな」とか、「お茶会なんか出るか」という高齢者は入れません。そのようにして「何かあっても安心だよね」という環境をつくるのです。
黒木)孤独死というのは社会問題にもなっていますけれども、困窮するお年寄りのための「ノビシロハウス」を設立なさってみて、いかがですか?
加藤)できたばかりで、いまちょうど募集をかけ始めるところなのです。若い子はすぐに飛びついて、2人決まっています。1人は高校生です。
黒木)そうなのですか。高校生で一人暮らしを。
加藤)学生起業家さんで、独立したいと言って住んでいる子もいます。
黒木)頼もしいですね。でも、そういう子たちとお年寄りの方々が一緒にコミュニケーションを取って生活するのですね。
加藤)帰ったときに「ちょっとこれ食べな」と言って、おかずをもらうようなことが普通に起こる場所にしたいと思っています。
黒木)日本は超少子高齢化社会に進んでいて、世界が「日本はどう乗り切るのか」ということで注目しているわけですよね。その辺りは加藤さんのご活躍が必要です。
加藤)まだヨーロッパなどでは、どちらかというと認知症の方を集めて暮らすということが多いのですが、私は逆だと思っています。90歳以上になったら、認知症になるのは当たり前ではないですか。その人たちが地域社会で暮らせることは当然のことです。それをどのように早く認識を変えて行くのか。「認知症の人を施設に入れろ」という発想の人がまだ多いですよね。でも「普通じゃないか」という認識に変えるためには、5年~10年かけて地域を練って耕すような覚悟が必要です。それをゆっくり、時間をかけてやって行こうと思っています。
黒木)1人ひとりの意識を変えなければ、これからの日本社会はうまく動かなくなるということでしょうか?
加藤)相当しんどくなって来ると思います。
黒木)「あおいけあ」のようなところが全国にたくさん増えるといいですね。
加藤)若手の仲間たちが増えていて、その人たちが広げてくれています。仲間たちが試行錯誤をしながら、たくさんつくって行くというのがいいなと思います。
加藤忠相(かとう・ただすけ)/「(株)あおいけあ」代表取締役
■1974年生まれ。東北福祉大学社会福祉学部社会教育学科卒業。
■大学卒業後、特別養護老人ホームに就職するも、介護現場の現実にショックを受け、25歳のときに神奈川県藤沢市で「株式会社あおいけあ」を設立。代表取締役。「グループホーム結(ゆい)」「デイサービスいどばた」の運営を開始。また2007年より小規模多機能型居宅介護「おたがいさん」を開始。
■「あおいけあ」ならではの地域を巻き込んだ独自のケア事業がメディアで紹介される他、2017年公開の映画『ケアニン~あなたでよかった~』のモデル事業所に。
■2019年2月には「アジア太平洋地域の高齢化に影響を与えている最も影響力のある指導者」に選ばれる。
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