おかえりなさい野口さん! 星出さんも無事交代
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年5月7日 17時20分
Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA) astronaut Soichi Noguchi is helped out of the SpaceX Crew Dragon Resilience spacecraft onboard the SpaceX GO Navigator recovery ship after he, NASA astronauts Mike Hopkins, Shannon Walker, and Victor Glover, landed in the Gulf of Mexico off the coast of Panama City, Florida, Sunday, May 2, 2021. NASA’s SpaceX Crew-1 mission was the first crew rotation flight of the SpaceX Crew Dragon spacecraft and Falcon 9 rocket with astronauts to the International Space Station as part of the agency’s Commercial Crew Program. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
「報道部畑中デスクの独り言」(第246回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、国際宇宙ステーションで同時滞在した2人の日本人宇宙飛行士について—
先月(4月)下旬から今月(5月)初めにかけて、国際宇宙ステーションでは、2人の日本人宇宙飛行士が同時滞在しました。
4月23日、星出彰彦さんを乗せた新型宇宙船「クルードラゴン運用2号機」が打ち上げ、危なげない飛行で翌日には宇宙ステーションに到着しました。
そして、昨年(2020年)11月から滞在している野口聡一さんと再会。2人は8日間、宇宙で時間をともにしました。
入室の際、星出さんは絶叫に近い状態で、「お久しぶりです!」と再会を喜んだようです。満面の笑みが印象的で、高揚感が伝わって来ました。4月26日には日本の実験棟「きぼう」の前で、2人そろって記者会見しました。
「素晴らしい体験だった。ありがたいことに、私の代わりの人がここに来た。軌道上で、日本人宇宙飛行士同士でタスキリレーができることをうれしく思っている」
野口さんはこう話し、赤と青の“リバーシブル”のタスキを星出さんに渡しました。その上で「宇宙空間で、日本語でやり取りしつつ、地上のチームも含めて日本人同士で仕事ができるのはうれしい」……“同胞”がいると気分も違うようです。
星出さんは今後の船長としての重責をかみしめながら、「待っていた仲間の笑顔に対する感謝、懐かしくうれしく思った」と話します。また、約9年ぶりの宇宙ステーションで、ものの多さを感じたそうです。
「ケーブル、実験装置、コンピュータ……何がどこにあるか理解して実験に臨みたい」と意気込みを語りました。
確かにNASAテレビを見ていると、野口さんらステーション内のクルーは星出さんたちを迎える通路を確保するため、たくさんの荷物を移動させていました。
JAXAの担当者は、「普段は物置として使っている場所。できるだけスペースを効率的に使うために、直前まで物置になっていた」と話します。9年前に比べてステーションの様子は随分と変わっているようです。
一方、「クルードラゴン」や新しい宇宙服に話題が及ぶと、2人とも目を輝かせます。星出さんは、「打ち上げのときは全員が遊園地にいるような状態で、『ウォーウォー』と絶叫していた。スムーズでダイナミックな宇宙船だと思う」と語りました。
本当に宇宙が楽しくて仕方がないという表情でしたが、その上で「狭い空間で過ごす。お互いに気を使いながらオープンな関係を保たなければならない」と配慮を見せました。
宇宙服について語ったのは野口さん。「着るのが楽。ワンピースで一体構造になっている。今後、民間の旅行客ミッションが増えて行くなかではシンプルイズベストだと思う。宇宙服も必要最低限な機能を、より簡単に達成するという方に行くのではないか」と話していました。
記者会見では今後の展望についても触れました。今年(2021年)秋の新たな宇宙飛行士募集に期待するのは星出さん。
「今後、また日本人がどんどん飛ぶという意味で、新しい人材が必要になる。多くのチャレンジをしたいという意志を持っている人に応募して欲しい」……その上で宇宙飛行士の条件として、「チームワークが大事。宇宙飛行士は1人では何もできない。お互いの長所を持ち寄って、短所を補うことのできるすばらしい仕事」と話しました。
そして、野口さんも「宇宙飛行士だけでなく、民間の方がどんどんいらっしゃる時代になる。われわれもそれをサポートしたいと思っている」と語ります。
星出さんは約半年間、宇宙に滞在する予定です。数多の実験のなかで注目されるのは、日本が開発している水再生システムの実証実験でしょう。
尿やエアコンの水を再生するシステムは、これまでもNASA開発のものがありました。以前、若田光一さんが宇宙滞在中、再生水の入った容器を手に「cheers(乾杯)!」と祝っていたことを思い出しますが、JAXAによると、今回は装置の大きさが半分になった他、消費電力は30%減少、水の再生率は80%から92%以上に向上しました。
そして、宇宙飛行士にとってありがたいのが、装置の保守点検。現在は定期的にフィルタなどの消耗品を交換する必要がありますが、今回は通常、定期交換品となるイオン交換樹脂を再生することでメンテナンスフリーとなっています。ここにも日本ならではの技術が生きています。
そして、将来の月、火星探査を見据えた取り組みでもあります。
野口さんは星出さんと交代する形でその後、「クルードラゴン運用1号機」で地球に帰還しました。
悪天候の影響で実施が2度延期されたものの、アメリカ東部時間5月1日午後8時半過ぎ(日本時間2日午前9時半過ぎ)に、運用1号機は宇宙ステーションをスムーズに離脱。約6時間後、メキシコ湾上空でパラシュートが次々と開いて海面に近づきます。
5月2日午前3時前(日本時間午後4時前)、アメリカの有人宇宙船としてはアポロ8号以来、53年ぶりの“夜間着水”となりました。
着水の瞬間、NASAテレビから「Splash Down!」とアナウンス。夜間なので相当見にくいのではないかと思いましたが、超高感度のカメラが見事に追跡、着水地点では投光器に照らされ、その光景はスマートで美しく見えました。
宇宙はもはや飛行士だけのものではない……新時代への香りを随所に感じる、日本人宇宙飛行士の「交代劇」であったと思います。(了)
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