日本の国家システムの欠陥と「平時モード」で凌ぐ日本モデルの限界~緊急事態宣言の連発
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年5月10日 11時30分
JR原宿駅前で、コロナ感染拡大防止のため、不要不急の外出や移動の自粛などを呼びかける都の職員ら=8日午後、東京都渋谷区
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月10日放送)に日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が出演。対象地域が拡大され、期限が5月31日まで延長されることになった緊急事態宣言について解説した。
緊急事態宣言~アクセルとブレーキの両方を踏んでここまで来てしまった
政府は5月7日、新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言について、対象地域を拡大し、期限を5月31日まで延長することを発表した。野村総合研究所の試算によると、宣言の延長と対象地域の拡大により、新たに1兆620億円の経済損失が生じるとしている。
飯田)緊急事態宣言が既存のところは延長となり、さらに12日からは愛知県、福岡県も対象ということになりました。いろいろなところに影響が出ます。
秋田)アクセルとブレーキを両方踏んでここまで来てしまったという感じですよね。特に昨年(2020年)は緊急事態宣言を連発しながら、菅総理は「Go To トラベル」も行った。そして東京五輪を何が何でも開催すると言いながら、感染も抑えなければいけない。すると、我々としても、気合を入れて外出を控えるということがやりづらくなってしまうところが、現状として表れている気がします。
日本モデル「強制できないなかで人々が自主的に協力する」の限界
飯田)前回ご出演していただいたのが1月5日で、まさに2回目の緊急事態宣言が出る直前でした。あのときも意思決定などのお話がありましたが、今回もリークがいろいろとあって「出るぞ出るぞ」と言われていて、同じものをずっと見せられている感じがありますね。
秋田)ここまで来ると医療体制や衛生体制の問題を超えて、日本の国家システムに欠陥があると考えざるを得ないと思います。日本の法律としてはお願いをすることしかできない、強制力のない統治体系で、ここまで来ているのが日本モデルです。
一方で、欧米ではロックダウンをして、外出を禁止したり罰金まで設けている国もあります。死者が少ないので日本モデルが失敗したとは言い切れないと思います。しかし弱点は明らかになって来ましたよね。「強制できないなかで人々が自主的に協力する」という前提のモデルでここまで凌いで来ている。これが果たしてどうなのか、ということを考えて行かなければいけないと思うのです。
「平時モード」だけで凌ぐ日本の限界~優先順位がはっきりしないなかで高まる不満
飯田)うまく行っているうちはいいのかも知れませんが、このシステムは結局のところ、誰が責任を持って意思決定をするのかというところが曖昧にも見えるのですが、どうでしょうか?
秋田)そう思います。同時に議論として、「それならば強制力を持った法律をつくって、外出を抑え込むべきではないか」という意見もあります。私も反対ではないのですが、それは水泳ができない人間に対して、「いろいろな道具を与えてプールに入れば泳げるようになる」と言っているようなもので、いまうまく行っていない原因はもっと根本的なところにあると思うのです。優先順位がはっきりしていないということと、縦割りだということです。ワクチンであれば接種は厚労省、輸送は国交省、そして自治体との窓口は旧自治省の総務省です。各国もバラバラだとは思います。
しかし、アメリカもイギリスも対応がここまで早いのは、準軍事体制に切り替えて、一気に1つのところに権限を集約してやっている。日本は幸いなことに75年間戦争を1度もしていないので、いわゆる単線ですよね。普通は「平時モード」と「危機モード」があるのですが、平時モードだけで凌ごうとしているために、このように限界がある。法律というよりは、縦割りや緊急時に指導力を発揮できる体制、優先順位をはっきりとつける指導力がないままに外出を禁止されても、不満が高まるだけで逆効果なのではないかと思います。
飯田)「自分たちばかり我慢して、何なのだ政府は!」となってしまう。
秋田)優先順位がわからないだろうと。
国民投票法の改正
飯田)それをはっきりさせるためにも、緊急事態に対応するようなものをつくるとなると、これは憲法問題になるかも知れない。そこの部分の議論も出ています。
秋田)そうですね。今後の憲法の改正で必要な、国民投票法のような法律が通った。憲法を変える権限があるのは私たちです。これまでどのように投票すればいいのかという法律もなかったのですが、今回のことは改憲論者にも、憲法を変えてはいけないという人たちにも、両方にとっていいことだと思います。国民が変えたいときに変える法律がないという状態を解消する。当たり前のことですよ。
飯田)ようやくそこまで来たということですね。
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