政府のワクチン対応は「半歩も一歩も遅れている」~政治家がリスクを負ってやるべき
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年5月14日 17時30分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月14日放送)に前統合幕僚長の河野克俊が出演。河野大臣が企業にワクチン接種の協力を要請したニュースについて解説した。
河野大臣が企業にワクチン接種の協力を要請
河野太郎行政改革担当大臣は5月13日、経団連の冨田哲郎副会長と会談し、企業の診療所や産業医を活用した新型コロナウイルスワクチン接種の促進を要請、地域の高齢者らに対する接種にも協力を求めた。経団連の冨田氏は会談後、記者団に対し「企業にとってもワクチン接種は重要な課題だ。最大限協力したい」と述べ、加盟企業に対し早期に働きかけを行う考えを示している。
飯田)大規模接種会場、クリニック等々での個別接種、さらには企業も使ってということが出ていますが、全体としてのワクチン接種の状況をどうご覧になりますか?
「いまは有事」という認識を持って対応するべき
河野)よくこれも言われていることですが、平時と有事の切り分けをしたら、いまは有事だと思うのです。有事のときは、平時のときと価値観を変えなくてはいけないのです。河野大臣が企業にオールジャパンで協力要請したというのは、適切だと思います。オールジャパンでやるべきです。この問題でみんなが認識しなくてはいけないのは、ワクチンが遅れれば遅れるほど助かる命がなくなって行くということです。それくらい重いということです。平時とは違う認識を持って対応するべきだという考えがベースにないと、さまざまなことが間違った方向に行くのではないかと思います。
最悪の事態を想定して手を打つべき
飯田)有事ということで言いますと、現役時代も有事に直面し続けていらっしゃいましたが、どこに第一優先を置くべきですか?
河野)やはり戦略を立てるということです。最悪の事態を想定して、それに至らないように手を打って行くということです。「9条があるから日本は平和だ」という言い方をされる方がおられますが、そうなると、そこで思考が止まってしまうわけです。当たり前ですが、「9条があっても、日本には有事がある」ということを前提にして最悪の事態のシナリオを考えるべきです。「有事を考えると有事になるのだ」という言霊信仰のようなものは最悪です。そうなると、それが起きたときは想定外になってしまうのです。やはり最悪の事態を考えて手を打って行くべきだと思います。新聞等で私の発言がずいぶん出たと思います。
法律改正がワクチンの承認に必要であれば、政治家がリスクを負ってやるべき
飯田)話題になりましたよね。
河野)私が申し上げたかったのは、今回自衛隊を使います。
飯田)大規模接種会場で。
河野)先ほども申し上げた通り、有事ですから自衛隊は活用するべきだと思いますし、自衛隊は世のため人のためなら喜んでやるという体質がある組織ですから、みんな士気高くやってくれると思います。では政府がいままでやって来たワクチン対応にまったく問題がないかと言うと、そうは言えないと思うのです。しかも世紀の祭典であるオリンピックを控えているわけです。そして日にちも決まっている。「人類がコロナに打ち勝った証としての東京オリンピック」という設定を、2020年の段階でされたのです。
飯田)そうですね。
河野)そうなれば7月23日ですから、2020年の時点で、「6月末までには重症化リスクのある高齢者は打ち終わる」という目標設定です。ここが最低限必要だという設定をする。そうなれば、それに向けてどうやって行くかということを考えたとき、いまよく言われているように、薬の承認が外国と比べて遅いのではないかという問題。厚生労働省からすれば、「法律で決まっているから仕方ない」ということになるのだと思いますが、いまは有事だということです。官僚組織の方々はリスクを避けられるかも知れませんが。
飯田)あとで何か言われたら自分の責任になってしまうと。
河野)有事ですので、ここは政治がリスクを取る。政治責任を負えるのは政治家ですから、そういう覚悟で。法律改正が承認に必要であれば、やればいいと思うのです。現にインフルエンザ等の特措法は変えたわけですよね。まずはこれが必要で、そうなればEUが囲い込みをする前に取れたかも知れませんよね。
ワクチンの打ち手が足りなくなることは2020年の時点でわかっていたはず
河野)そうやって計算をして行ったときに、打ち手がこれで足りるのかということは、2020年の時点でわかっていたはずです。変数は変わらないわけですから。
飯田)お医者さんの数はいきなり増えたりしないですものね。
河野)打ち手が足りなければ、歯科医の方や医学部の学生にも広げなくてはいけないという話も出て来ますし、つい最近の注射器の問題、これもその時点で目標を設定すれば問題点は全部出て来るはずなのです。それで手を打って、それでもこうなってしまったというのならわかりますが、政府は「一生懸命やっていた」と言うかも知れないけれども、現在の状況では、国民にそうは見えませんよね。自衛隊をもっと前に活用するという選択だってあり得るわけです。私は自衛隊を活用してもらっていいと思っているのですけれども、国のワクチンに向けての体制について、まったく問題がなかったとはやはり言えないですよね。
必死でワクチンを取りに行ったのか
飯田)諸外国の例などを見ると、いち早く製薬会社と交渉をして「データを全部渡すからうちにくれ」というイスラエルのような国もあれば、イギリスは打ち手が足りないのなら、ネットで研修をしたボランティアにも打ってもらえるように法改正をするということをしています。
河野)オリンピックのためにワクチンを取りに行くというわけではないのですが、日本はオリンピックを開催するという、世界に対する責任があるわけです。ここは製薬会社にも言えると思うのです。日本はこういうものを抱えているのだと。端的に言えば全力で、必死でワクチンを取りに行ったのかということを私はお尋ねしたい。言った趣旨はそういうことです。
企業への協力要請は2020年の段階でできたはず~半歩も一歩も遅れたのではないか
飯田)我々の普段の生活もそうですが、コロナが「いろいろなものをやらない言い訳」になってしまっているところもあり、果たしてそれでいいのかということですよね。
河野)河野大臣の企業に対する協力要請というのも、いまですよね。例えば6月末までに高齢者の接種を終わらせるという目標を設定したのならば、2020年の段階から要請をやってもよかったと思うのです。河野大臣が任命されたのは1月です。その段階から河野大臣にやっていただいて、進めて行く。やはり「半歩も一歩も遅れたのではないか」というのが私の印象です。政府の方々はいろいろな問題を抱えて一生懸命やっていらっしゃると思いますが、そういうことです。それが多くの国民の感覚ではないですかね。
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