オリンピック競泳メダリスト・スポーツキャスター宮下純一~日本選手が世界で勝つためには
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年5月18日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)にスポーツキャスター・北京五輪競泳メダリストの宮下純一が出演。背泳ぎを選択することになったきっかけについて語った。
黒木)今週のゲストはスポーツキャスターで北京五輪競泳メダリストの宮下純一さんです。子どものころは水嫌いだったけれども、5年後には全国大会に出ていたということですが、そのコーチが面白いことをおっしゃったのですよね。「身体を反対に向ければ順位も反対になるぞ」と。
宮下)競泳の花形種目は自由形だと思っていたので、自由形がやりたかったのです。コーチのなかでは自由形より背泳ぎの方が向いているのではないかというのがあったのですけれど、性格上、「自由形は向いていないから背泳ぎに行く」ということは嫌でした。「やりたいようにやらせてくれ」というタイプなのですが、そのときにコーチが言葉を慎重に選んでくれて、「お前はいま自由形で9番とか10番だろう。背泳ぎでひっくり返したら、順位もひっくり返っていい数字になるから、1回でいいから出てくれないか」と言われたのです。そこまで言うなら出てみるか、と出てみたら、表彰台には乗れなかったのですけれど、4番に入賞できたのです。あれだけ頑張っている自由形で入賞できないのに、頑張ったことのない背泳ぎでいい成績になれてみんなが褒めてくれるなら、背泳ぎの方がいいかなと思って、そこからずっと背泳ぎです。
黒木)そのコーチも洒落たことをおっしゃいましたね。
宮下)幼稚園の先生もそうですけれど、言葉を選んでくださる先生方が多く、恵まれていたなと思います。コーチのなかでは、すごく考えた、私を説得させる一言だったのだと思います。
黒木)いつごろからオリンピックを意識されるようになりましたか?
宮下)小学生のとき、「スポーツ名場面」というような番組でソウル五輪の鈴木大地さんが金メダルを獲られた映像を観て、そのときにもう背泳ぎをしていたのですけれど、幼心に「同じ男子で同じ日本人で、背泳ぎの人が金メダルを獲っている」と思ったときに、「3つも共通点があるから自分も行けるかな」というような簡単な想いからのオリンピックの夢だったと思います。
黒木)そこから週4の練習が週7になったのですか?
宮下)小学校高学年のときには週7でした。日曜日は午前・午後の2回練習。夏休みの記憶はプールしかないですね。
黒木)みんなに注目されたのではないですか?
宮下)鹿児島の大会で優勝すると、全校朝礼で表彰されるので地元では有名でしたけれど、全国区では全然ありませんでした。
黒木)それから大学に行かれて、ずっと続けていらしたということですね。
宮下)そうですね。大学4年生までベストが出なかった年がなくて、少しずつ、地道にタイムが上がって行き、最後の最後で日本代表に辿り着きました。
黒木)やはりアスリートにとって、オリンピックは特別な場なのでしょうね。
宮下)競泳の場合はオリンピックが最も上の大会という認識でみんな目指しているので、オリンピックは特別だと思います。
黒木)次々に新しい選手が生まれて来ているのでしょう?
宮下)次世代の選手が出て来ているので、やはり世界と戦える種目だなと思いますね。
黒木)日本人は向いているのですか?
宮下)必ずしも向いているとは言えないのですけれど、「体が大きいイコールメリット」だけではなくて、大きいと水の抵抗も受けやすくなるのです。水の抵抗の少ない泳ぎを求めて行けば、少ない水のかき方でも速く進むことができるのです。
宮下純一(みやした・じゅんいち)/スポーツキャスター・北京五輪競泳メダリスト
■1983年生まれ、鹿児島県出身。37歳。
■5歳から水泳をはじめ、9歳のときコーチの薦めにより背泳ぎの選手となる。
■鹿児島県立甲南高等学校から筑波大学に進学、体育専門学群で学び、中高教員免許を取得。
■2008年8月、北京オリンピック競泳男子100m背泳ぎ準決勝で53.69秒のアジア・日本新記録を樹立、決勝8位入賞。400mメドレーリレーでは日本チームの第1泳者として、銅メダルを獲得(リレーメンバー:北島康介・藤井拓郎・佐藤久佳)。
■2008年10月、競技者として有終の美と感じられる結果に現役を引退。
■現在は、水泳・スポーツの美と感動、アスリートという人間の心のドラマやストーリーを伝えられるスポーツキャスターとして幅広く活動。日本水泳連盟競泳委員として選手指導・育成にも携わっている。
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