オリンピック競泳メダリスト・スポーツキャスター宮下純一~人生に必要なものはすべて水泳から学んだ
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年5月19日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)にスポーツキャスター・北京五輪競泳メダリストの宮下純一が出演。水泳から学んださまざまなことについて語った。
黒木)今週のゲストは2008年北京オリンピック競泳メダリストでスポーツキャスターの宮下純一さんです。もともと教員免許も持っていらっしゃるではないですか。
宮下)大学で取りました。
黒木)そちらの道は考えなかったのですか? 水泳に携わって行くということの方に重きを持っていらしたのですか?
宮下)もともと教員になりたくて筑波大学に進学したので、教員という道も頭にはありましたが、現役時代からいまでも所属しているホリプロの最初のマネージャーさんが勧誘に来てくれて、「社会人をやりながらホリプロに所属しないか」という話をくださいました。そのときに「出社せずに競技に集中する」という環境を整えてもらい、そのまま現役を続けました。
黒木)引退なさったあとは?
宮下)引退したあとは、アスリートをマネージメントするのに、競技を経験した人を雇いたいということを言われて、「スポーツ文化部」というところに所属しました。
黒木)スポーツ文化部。
宮下)「メダリストとして、お世話になった水泳界に恩返しという道があるのではないか」と社長から提案を受けたのです。いろいろと考えたのですが、多くの方々から、「メディアに出るのは選ばれた人しかできないし、1度しかない人生だからやってみたら」と言われました。セカンドキャリアをチャレンジしてダメだったら、サードキャリアでまた先生に戻れたらいいなという考えがあったので、1つチャレンジしてみようということで、この世界に飛び込みました。
黒木)大学時代のコーチから、「水泳は人生の予行練習だ」と、「水泳から人生を学べ」と言われて元気をもらったという記事を読みましたけれども。
宮下)水のかき方とか、キックの仕方しか勉強しなかったかというとそうではなく、先輩との関わりやコーチとの関わり、ライバルとの関係や礼儀など、すべてのことを水泳から学びました。現在の芸能活動のなかでも、いろいろな引き出しを水泳のなかから増やしてもらったなというところがあります。「人生に必要なものをスポーツ、水泳で教えてもらった」と思います。
黒木)水泳の魅力は何でしょうか?
宮下)「タイム競技」の魅力ですかね。1分00秒の自己ベストを持っていたときに、59秒99になった瞬間、「過去の自分を超えた」ということがはっきりわかるのです。そういうタイム競技である部分が水泳の好きなところです。練習は本当に面白くないのですよ。会話も呼吸もできないし。でも試合に出て、あの緊張感のなかで泳ぎ終わったあと、電光掲示板を見たときに、「どうなの、どうなの? あ、自分は成長したんだ!」ということがあの一瞬でわかる。あの瞬間のためだけに、苦しい練習に耐えられたなというのはあります。
黒木)スタミナからメンタルから、いろいろな練習法があるはずですよね?
宮下)選手によっては、練習のときにすごく強いけれど、本番になると別人のようになってしまう人も。
黒木)いらっしゃるのですか?
宮下)いますね。でも、練習では全然ダメだけれど、試合になったら別人のように速くなる人もいるのです。やはり気持ちというのはすごく大事だと思います。練習中も緊張感を途絶えさせないように、試合と同じ雰囲気でやるなど、練習の工夫もしました。1発勝負なのですよね。「1分」にどれだけ自分のパワーを注げるかどうか。人から「努力したね」と言われたとしても、自分が納得する努力をしないといけません。実際にその場に立って恐怖心が来るのは自分なので。それを打ち消すくらいの「納得した努力をいかにやれているかどうか」が重要になります。
宮下純一(みやした・じゅんいち)/スポーツキャスター・北京五輪競泳メダリスト
■1983年生まれ、鹿児島県出身。37歳。
■5歳から水泳をはじめ、9歳のときコーチの薦めにより背泳ぎの選手となる。
■鹿児島県立甲南高等学校から筑波大学に進学、体育専門学群で学び、中高教員免許を取得。
■2008年8月、北京オリンピック競泳男子100m背泳ぎ準決勝で53.69秒のアジア・日本新記録を樹立、決勝8位入賞。400mメドレーリレーでは日本チームの第1泳者として、銅メダルを獲得(リレーメンバー:北島康介・藤井拓郎・佐藤久佳)。
■2008年10月、競技者として有終の美と感じられる結果に現役を引退。
■現在は、水泳・スポーツの美と感動、アスリートという人間の心のドラマやストーリーを伝えられるスポーツキャスターとして幅広く活動。日本水泳連盟競泳委員として選手指導・育成にも携わっている。
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