ウィッグを必要としない“偏見のない世の中”にするためにも「ヘアドネーション」の正しい知識を
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年5月27日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)にNPO法人「JHD&C(ジャーダック)」代表理事の渡辺貴一が出演。ヘアドネーションの先にある最終的な目標について語った。
黒木)今週のゲストはNPO法人「JHD&C」代表理事の渡辺貴一さんです。寄付された髪の毛からつくったウィッグを、何らかの事情で髪に悩みを抱える子どもたちに提供するヘアドネーションですけれども、渡辺さんがおっしゃっているのは、「ウィッグを渡したらそれで終わりではない」ということです。「その先に私たちが考えなければならない問題がある」とおっしゃっています。
渡辺)ヘアドネーションは最初に申し上げた通り、ウィッグをつくるための1つの手段でありまして、受け取ってくださる人たちにおつなぎするというだけのことです。
黒木)そうですね。
渡辺)ウィッグがなぜ世の中に必要であるのか、ということを考えると、根深い問題があります。髪の毛がないということは、その人たちに何の責任もないのに、生まれたときからずっとコストを払い続けているというのが現状です。その子は自分が大きくなり、学校に行って友だちができるたびに、それを説明しなくてはなりません。成長して大人になり、職場に行ったら、また同じことを言わなければならないのです。
黒木)そういうことになりますよね。
渡辺)ヘアドネーションという活動をしていると、「ただウィッグを渡していれば問題解決するのだろうか」という壁に当たります。ウィッグを渡し続けなくてはならない世の中というのは、あまりいい世の中ではないと思うのです。今年は150台渡しました、来年は200台渡しました、再来年は300台渡しました……これでは世の中がよくなっていないのではないかと思うのです。ではどのような活動を私たちは展開すべきか。ウィッグを必要としていらっしゃる人たちのことを、もう少し知っていただく必要があるのではないかと思うのです。
黒木)皆さんに情報を共有していただく。
渡辺)ウィッグを受け取った人たちは、ウィッグを被れば問題がすべて解決するわけではありません。使うことによって、強風で飛ばないだろうかとか、激しい運動や、体育の授業で外れないだろうかなどと、違う種類の心配事が出て来ます。それに対処しなくてはならないので、病気が治らない限り、一生終わらないのです。
黒木)病気が治らなければ終わらない。
渡辺)ウィッグは自分の意思で付けたいときに付けられて、「夏場はちょっと取りたいよね」というときには取れるような社会にできないものか。皆さん、ご存知ないだけなので、差別意識とまでは言えないかも知れませんが、そこを緩和できればウィッグをしなくてもいいような世の中にできるのです。
黒木)ヘアドネーションの活動のなかから、社会というものをもう1度見直して、私たちがそこまで知るということが必要ですし、私たちの意識も変えなければいけないと思います。
渡辺)ウィッグを使っている人が居心地のいい社会であれば、私たちもおそらく居心地がいいと思います。ヘアドネーションには皆さん優しい気持ちで取り組まれているので、もう1歩だけ進んでもらい、ヘアドネーションによって、相手を思いやることを考えていただけるきっかけになれば、大変嬉しいです。
渡辺貴一(わたなべ・きいち)/NPO法人「JHD&C(ジャーダック)」代表理事
■NPO法人「JHD&C(ジャーダック)」代表理事。
※特定非営利活動法人「Japan Hair Donation & Charity」
■1971年、宮崎県生まれ。
■日本初のカラーリスト(ヘアカラーのスペシャリスト)として、1996年から活動開始。
■2008年、THE SALON(現・KNOW HAIR STUDIO)を設立。
■2009年、NPO法人「Japan Hair Donation & Charity(ジャーダック)」を設立。脱毛症やがんの治療などで「頭髪に悩む子どもたち」のために、ヘアドネーションによる献髪のみでつくったメディカル・ウィッグを無償提供。
<ヘアドネーション>
■寄付された髪の毛から作ったウィッグを、 脱毛症や乏毛症、小児がんの治療など、何らかの事情で髪に悩みを抱える子どもたちに提供する活動のこと。ジャーダックでは、寄付できる髪の毛の長さを「31センチ以上」と規定。
<NPO法人「JHD&C(ジャーダック)」>
■2009年に2人の美容師が設立。
■寄付された髪だけでつくったメディカル・ウィッグを、髪に悩みを持つ18歳以下の子どもたちに無償で提供する「ヘアドネーション」の活動を日本で初めて開始したNPO法人。
■初の監修本『31cm』が2021年6月に発売予定。
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