サイバー攻撃には「報復する」という姿勢と能力が必要~政府のデータ流出
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年5月27日 17時37分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月27日放送)に神戸大学大学院法学研究科教授・NPO法人インド太平洋問題研究所理事長の簑原俊洋が出演。外部からの不正アクセスにより、政府のデータが流出したニュースについて解説した。
政府のデータが流出
5月26日、政府関係省庁で使用する富士通の情報共有ソフトに不正アクセスがあり、国土交通省や内閣官房で情報漏洩があったことがわかった。国土交通省では職員など少なくとも7万6000件のメールアドレス、内閣官房ではサイバーセキュリティセンターのシステム機器に関するデータの流出が確認され、富士通はソフトの運用を停止し、影響を調査している。
飯田)政府のデータというか、サイバーセキュリティをやっているNISCという機関も被害に遭ったという話です。
簑原)非常に格好悪い話ですよね。
「報復するのだ」という姿勢と能力を持たなければならない
飯田)この守りについて、どう見たらよいのでしょうか?
簑原)安全保障政策が専守防衛なら、データセキュリティの方も専守防衛でしっかりとやって欲しいです。明らかに防衛が足りていないということではないでしょうか。企業のセキュリティに対するサイバー攻撃も問題になっていますが、今回は政府で、しかもサイバーセキュリティセンターのシステムですので、深刻な状況だと思います。
飯田)専門家の人に聞くと「攻めと守りは一体なのだ」というようなことを聞きますけれども、人材の面も含めて不安になってしまいます。
簑原)ノウハウを持っている方を増やさなければいけないと思いますし、これは私の持論なのですが、最大の守りはオフェンスなのです。攻撃する力。先日、アメリカでパイプラインへの攻撃がありましたが、アメリカは激しく報復したのでしょうね。攻撃した側が「もうこれ以上しません」と。
飯田)解散しましたよね。
簑原)解散しましたので、「日本もそのようにするのだ」という姿勢を示して、その能力を持てば攻撃する側も考えるのではないでしょうか。いまは報復の恐れがまったくないので、やりたい放題です。ペナルティが何もないわけですから。
報復については秘匿性が大事~報復された側のみ痛みをわかればいい
飯田)報復ということですが、特に「公の部分が攻撃能力を持つ」となると、法的な整備も必要になるのでしょうか?
簑原)おっしゃる通りですが、他方でアメリカは何も言っていません。「攻撃しました」も何も。こういうものは秘匿性が大事なのです。攻撃された側のみ痛みをわかればいいのです。
飯田)今回のパイプラインの件では、行動として示されたと。
簑原)顔面パンチをくらったのではないでしょうか。
飯田)アメリカはすでに法的な整理を終えているところがあって、「実害があった場合はもはや自衛権の範囲なのだ」と言っています。
簑原)サイバー攻撃は、極めて深刻な場合もあります。アメリカではガソリンが供給されなくなって、生活に支障が出た。病院であれば命にも関わる問題ですから、真剣に受け止める必要があります。
飯田)「抑止力をどう持つか」ということを、サイバー空間のなかで考えることになるわけですよね。
簑原)「抑止力」がキーワードだと思います。抑止力というのは、オフェンスの能力を持つということですので。
国民のアイデンティティを変えるためには、憲法を変えるしかない~憲法は自分のコートである
飯田)そうなると、日本でこれからどういう法的整理がされるかにもよると思いますが、この話も憲法問題になってしまうのですか?
簑原)憲法を変えるのが、最も合理的な形だと思います。しかし、ずっとできていないわけですから、難しいと思います。憲法改正の重要性は、法的議論云々に入る前に、コンスティテューションではないですか。コンスティテューションというのは、国としてのあり方、形ですよね。
飯田)どういうところを目指すのかと。
簑原)国民のアイデンティティを変えるためには、憲法を変えるしかないのだと思います。安全保障関連の有事法案云々を触るだけでは、一般の人はピンと来ないのです。トーマス・ジェファーソンというアメリカ建国の父が言っていましたけれど、「憲法というものは自分のコートだ」と。国を守るし、自分のアイデンティティでもある。子どものときは小さいコートを着るけれど、大きくなるにつれコートを変えて行かなければならない。憲法なるものはその時代を反映して、国にとっていちばんいい形に変えて行かなければいけないと言っています。コートを新調しなければならない。日本は同じコートをずっと大事に着ているのです。でも、いまや日本は大きな国で、豊かな国で、しかも責任があるではないですか。ですから、コートを変えなければいけないときが来ているのではないかと思います。
飯田)しかも環境も気候も変わって、「分厚いコートを着ないと寒いかも知れないぞ」となって来ました。
簑原)まさしくそうですね。
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