栗林と平良 防御率0・00の「無失点リリーバー」の“以外”な共通点
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年6月1日 17時20分
【プロ野球交流戦西武対阪神】9回を締めた西武・平良海馬 =メットライフドーム(西武ドーム)
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、防御率0・00の快投劇と開幕からの無失点記録を続ける2人のリリーバー、広島カープ・栗林良吏投手と埼玉西武ライオンズ・平良海馬投手にまつわるエピソードを取り上げる。
いま、プロ野球ではセ・パともに「無失点記録」を続けるリリーバーが注目の的です。
セ・リーグでは広島東洋カープのルーキー、栗林良吏投手が新人記録となる「開幕から19試合連続無失点」を継続中。従来の新人無失点記録が2019年のソフトバンク・甲斐野央投手の「13試合連続」だったことを考えると、いかにすごい記録かがわかります。
5月28日の試合では今季10セーブ目を記録。新人投手の無敗10セーブは史上2人目、防御率0・00での到達は史上初の快挙です。その試合後、栗林投手はこんなコメントを残しています。
『勝ちたいっていう気持ちが一番だったので、勝てる投球を、と思ってマウンドに上がりました』
~『デイリースポーツ』2021年5月28日配信記事 より
一方、パ・リーグの無失点リリーバーといえば、西武ライオンズの平良海馬投手です。29日の試合で今季初登板から「26試合連続無失点」を記録。開幕からの連続試合無失点でパ・リーグ歴代タイ記録を成し遂げました。その試合後、平良投手はこんな言葉で偉業を振り返っています。
『1試合1試合、危ない試合も何試合かありましたけど。継続していきたいです。ピッチャーで勝てる試合を頑張って作っていきたい』
~『日刊スポーツ』2021年5月29日配信記事 より
「勝てる投球を……」「勝てる試合を……」と似たコメントを残しているところに、失敗が許されない極限状態でマウンドに上がり、結果を残し続ける男同士の奇妙なシンパシーを感じます。
そんなコメント以外でも、快進撃を続けるリリーバーには共通する点があります。1つは高校時代まで、投手よりも「野手」としての評価が高かった点です。
実は、栗林選手が投手を始めたのは高校2年の秋から。そのため、当初「特待生」での進学を予定していた大学では、投手と野手の二刀流での起用が前提だったと言います。しかし、栗林投手は自ら希望して特待生ではない名城大学に進学。投手に専念する道を選んだのです。
『「名城大学に進んだのは僕の大きなターニングポイントです」。才能のあった野手にこだわらなかったことが、いまの新人記録到達につながっていった』
~『スポニチアネックス』2021年5月4日配信記事 より
一方の平良投手も、沖縄・八重山商工で3年間指導した末吉昇一監督がこんなコメントで「野手能力」を高く評価していました。
『正直言って、高校からピッチャーでプロに行くとは、最初は夢にも思ってませんでした。逆に、野手としてのほうが将来が広がるのかな……って。タイミングが合えば130m、140m飛ばすし、ああ見えて打球に対する反応なんてすばらしく敏捷ですから。ウチは部員が少ないせいもあるんですけど、投げない日はショート守ってましたよ』
~『Number Web』2020年6月30日配信記事 より
実際、交流戦を見据えた打撃練習で平良投手は柵越えを連発。二刀流が注目される時代にあって、その能力を投手に集中させているからこそ素晴らしい結果を出すことができている、とも言えるのではないでしょうか。
彼らの共通点、2つめは「捨て去る勇気」を持っている点です。勝利のためであれば、それまでの自分の武器を捨てることにも躊躇がありません。
栗林投手といえば、いまや代名詞とも言えるフォークボールが決め球ですが、大学時代まで得意としたのはスライダーでした。
しかし、大学通算32勝、大学日本代表にも名を連ねながら、2018年ドラフトではまさかの指名漏れ。失意のうちに進んだトヨタ自動車で自らの殻を破るべく取り組んだのは、それまで武器としていたスライダーに代えてカーブとフォークを磨くことでした。
『「もっと良くなる。カーブを磨いた方がいい」と助言をしてくれたのが、DeNAやソフトバンクでプレーした細山田捕手。持ち球としていたスライダーを捨て、フォークを代名詞にするのもこの時期からだった』
~『スポーツ報知』2021年5月5日配信記事 より
自分の強みであっても固執しない……この点で平良投手に当てはまるのは「160キロのストレート」へのこだわりを脇に置き、変化球に磨きをかけたことです。
平良投手といえば、昨季、日本人選手6人目となる160キロを記録。このストレートを武器に中継ぎとして54試合に登板。1勝0敗33ホールド1セーブ、防御率1・87という抜群の成績を残し、新人王を受賞しました。
周囲からは大谷翔平選手に並ぶ日本人最速165キロへの挑戦も期待されるなか、今季の開幕前には「脱直球宣言」とも取れる、こんな言葉を発していました。
『(昨季は)変化球でストライクが入らないから仕方なく真っすぐを投げるところもあった。今年はキャンプで変化球をたくさん投げてきた。その成果が出ればいい』
~『西日本スポーツ』2021年3月23日配信記事 より
実際、2021年の投球比率では変化球が増加し、ストレートは減少。変化球の切れ味が抜群であることはもちろん、相手打者の頭に「160キロのストレートがある」という先入観もあって、的を絞らせていないのです。
『今季はスライダー、カットボール、チェンジアップを中心とした変化球の割合が増えており「それが今年(のスタイル)だと思います」という。「真っすぐだけだと絶対打たれる。何キロ投げても打たれると思うので、変化球をどのように組み合わせるか重要になる」』
~『サンケイスポーツ』2021年5月14日配信記事 より
「防御率0・00」のとんでもない成績でブルペンを支える2人。その異次元の投球がどこまで続くのか、広島と西武の試合はゲームセットの瞬間までますます目が離せません。
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