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極左から極右までいる“烏合の衆”連立政権樹立へ~今後が不透明なイスラエル政局

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年6月5日 17時50分

極左から極右までいる“烏合の衆”連立政権樹立へ~今後が不透明なイスラエル政局

 20日、イスラエル・エルサレムの首相公邸前で、ネタニヤフ首相の退陣を求めるデモに参加し、国旗を振る女性ら(共同)

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月4日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。連立政権が樹立し、ネタニヤフ首相の退陣が濃厚となったイスラエルについて解説した。

20日、イスラエル・エルサレムの首相公邸前で、ネタニヤフ首相の退陣を求めるデモに参加し、国旗を振る女性ら(共同)=2021年3月20日 写真提供:共同通信社

イスラエル連立政権樹立でネタニヤフ首相の退陣が濃厚

政治混乱が続くイスラエルが大きな変化を迎えようとしている。2021年3月の総選挙を受け連立協議を進めていた中道野党「イェシュアティド」党首のラピド元財務相は6月2日夜、8党による連立政権樹立に合意したとリブリン大統領に報告した。国会の承認を経て新内閣が誕生すれば、通算15年間首相を務めるネタニヤフ氏が退陣することとなる。

飯田)イスラエルの選挙は比例代表なのですか。

宮家)比例代表で、日本のような小選挙区とは違うので、小さな政党がたくさん存在し、どんぐりの背比べをしているのです。全部で120議席あるのだけれど、どこも過半数が取れなくて、常に連立政権です。しかも2党~3党ではなく、4党~5党の連立でやって政権を維持するということです。

12年連続で務めるネタニヤフ首相

宮家)ネタニヤフさんが最初に首相になったのは1996年です。私は中東第二課長としてイスラエルに出張し首相の側近に会うことができたのだけれど、あれから何年経っているのですかね。最近では12年連続でしょう。

飯田)12年連続。通算で15年間ということになります。

宮家)しかし、12年続けば権力は必ず腐敗します。実際に彼にもいくつか汚職の疑惑があって、それに対抗する形で、彼の立場から見れば、ずっと頑張って来たのです。けれど、今回は「反ネタニヤフ」でみんなが結束したということです。実際には極左から極右までいる烏合の衆のようなものです。そういう反ネタニヤフのグループができつつあって、今の時点では連立が組めそうな予感がするということです。

極右のベネット氏がネタニヤフ氏を裏切って中道のラピド氏についた

宮家)マスコミは「濃厚」という書き方をしていますけれども、イスラエルの政権づくりは複雑です。6月7日とか14日などと言われていますが、実際に国会で投票をしてみなくてはわかりません。当然ネタニヤフさんも巻き返しを図りますから、何が起こるかわからないわけです。現地からの報道を読んでいると、反ネタニヤフでできた新しい連立は、もともとネタニヤフさんの盟友だった極右の人がどうも寝返ったようですね。ネタニヤフさんからすれば裏切りですよ。

飯田)ベネットさんという人ですか。

宮家)ベネットさんが今度首相をやるのだけれど、もう1人ラピドさんという人がいて、この人は中道なのです。この中道の人が今回の組閣作業の中心にいたのだけれど、なかなか過半数が獲れなかった。そこでネタニヤフさんについていたベネットさんが裏切り、ラピドさんについたのです。どうやら多数になりそうだという話なのだけれど、私から見ればあくまでも烏合の衆ですよね。

外交やパレスチナ問題では水と油の関係

宮家)外交方針として、「パレスチナ国家などとんでもない、どんどん入植地を増やそう」と言っている人たちがいる一方で、もう片方は「パレスチナ独立国家」を求める普通の人たちですから、両者間の政策作りがうまく行くわけないのです。仮にそういう政権ができても、やれるのは国内経済や医療や福祉の問題など合意しやすい分野だけで、外交やパレスチナとの関係をどうするかということについては、まったく水と油です。

ネタニヤフ氏が返り咲く可能性も

宮家)ですから、連立政権ができ上がるまで、「ネタニヤフさんの時代が終わった」と言うのは早いと思います。仮に新政権になっても、水と油であれば、いずれは元に戻るわけです。それまでにネタニヤフさんがまだ政治生命を持っていれば、次の一手を考えるでしょう。当然過去二年間で5回目の選挙でまた首相に返り咲こうとすると思います。その意味では、仮に新しい政権ができても、ネタニヤフさんに対する汚職の問題を含めた法的な訴追がどれくらい進むかにかかっているでしょう。

飯田)息の根を止めようとするかどうか。

宮家)息の根を止めるのか、逆にネタニヤフさんがそれを凌いで、「烏合の衆」政権の分裂を待ち、また次の一手を打つのか。これは非常に関心が高い。あまり日本には関係ないけれど、中東和平という観点から見れば、とても重要な動きだと思います。

 

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