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ブラインドサッカー国際大会 東京パラ出場5ヵ国が集結、日本大躍進!

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年6月10日 21時50分

写真

IBSA WGP2021

-新行市佳のパラスポヒーロー列伝-
ニッポン放送アナウンサー・新行市佳が、注目選手や大会の取材などを通して、パラスポーツの魅力をあなたと一緒に発見していきます

日本代表チーム(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

「Santen IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2021 in 品川」

5月30日~6月5日に「Santen IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2021 in 品川」が開催されました。以前、この「パラスポヒーロー列伝」で大会前の抽選会や強化合宿の模様をお届けしましたが、今回は日本代表の大躍進についてお伝えします。

3回目の開催となるワールドグランプリの参加国は、日本(世界ランク12位)、アルゼンチン(1位)、スペイン(3位)、タイ(13位)、フランス(14位)の5ヵ国でした。

フランス戦(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

私はYouTubeで生配信された試合を観戦し、試合を終えた選手や監督とZoomでつないでのインタビューに参加して、オンライン取材をしました。

5月30日、初戦のフランス戦。開始1分、田中章仁選手からのパスを受けた川村怜選手が左45度からシュート、先制点を挙げます。

川村怜選手(フランス戦)(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

選手1人1人の能力が高いフランスチームに対して、日本はコンパクトな陣形で組織的なディフェンスを展開。日本代表はヨーロッパ勢とは2年以上対戦しておらず、ボールに伸びて来る足に苦戦もしました。

ドリブルで突破したと思っても、粘り強く足を出して来るフランスチームにシュートのタイミングをずらされた場面もありましたが、日本のディフェンスがフランスの得点を許さず1-0、白星スタートを切ります。

フランス戦(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

初戦で勝ち点3を獲得した日本は勢いに乗り、翌31日のタイ戦でも勝利を飾ります。試合開始から30秒で、川村怜選手がドリブルで相手選手を引きつけ、空いたスペースにパスを通します。

壁際でパスを受けた黒田智成選手がペナルティエリア内に侵入して、左足を振り抜きゴール。2戦連続で日本が開始早々、先制点を挙げました。

黒田智成選手(タイ戦)(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

日本のスターティングメンバーは、フランス、タイの2戦連続で川村怜選手、黒田智成選手、佐々木ロベルト泉選手、田中章仁選手、ゴールキーパーの佐藤大介選手。初戦で黒田智成選手と佐々木康裕選手のメンバー交代はありましたが、この5人の選手が連戦ほとんどフル出場状態でした。

暑さもあり疲労を心配する声が報道陣から挙がりましたが、黒田智成選手は「代表チームで低酸素トレーニングを取り入れていて、早く回復することができるようになって来ました。フルパワーで出し切ってもすぐに回復できるようになったのかなと思います。タイムアウトやプレーが切れたときに、呼吸を意識して早く回復するようにみんなで声を掛け合いながらプレーしていました」と、持久力アップの要因について明かしました。

2戦目のタイとの試合でも、1-0で試合を終えました。

タイ戦(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

2連勝で迎えた世界ランキング3位の強豪・スペイン戦。この試合でも日本が先制点を決めます。後半8分、佐藤大介選手のゴールスローを受けた黒田智成選手がドリブルでスペインのディフェンスを突破し、シュートを決めます。

「スペインはシュートを打ったあとに後ろのスペースが空く。そこで選手は相手選手よりも早く戻り、キーパーは思い切り投げる、選手は走る。スペインのウィークポイントだと分析していました」(高田監督)

日本のトランジション(攻守の切り替え)の早さが発揮された瞬間でした。しかし後半残り2分のところで、スペインがフリーキックを決めて同点に持ち込み、1-1の引き分けで試合を終えました。

佐々木ロベルト泉選手(スペイン戦)(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

この試合で特に際立ったのは、日本のバックパスからのフィードでした。ゴールキーパーに一度ボールを戻し、前線の選手につなぐ戦略です。

ゴールキーパーの佐藤大介選手は、「初めのころは上手く行きませんでしたが、練習していると効率よくボールを前のスペースに付けることができます。攻撃の起点にできるし、1つの武器だと思います」と語りました。バックパスを効果的に使うことで、選手がドリブルでボールを運ぶ時間を短縮することができます。

「選手みんながいい距離感で1対1を繰り返して、事前に防いでいるのが得点を抑えられている要因です。シュートが飛んで来ても、みんながコースを限定してくれているので、自分は(コースが)見えている。ビッグセーブをしているわけではなくて、みんなが走ってくれているんです」

佐藤大介選手(スペイン戦)(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

予選最後の相手は、世界ランキング1位のアルゼンチン。ゴールスローからオフェンスに向かう日本の戦略を分析し、対策をして来ました。

前半早々、日本の壁際へのゴールスローを次々カットします。高田監督はアルゼンチンに日本のスタイルの1つが分析されていることを察知して、川村怜選手を中心にドリブルで突破する形に戦略を変えました。

圧倒的な技術とスピード、フィジカルの強さを持つアルゼンチンの猛攻に耐える日本。個々のスキルが高いアルゼンチン選手に対して、日本はひし型の陣形をつくってスペースと時間を与えないような守備を展開します。

アルゼンチン代表のエース、マキシミリアーノ選手の突破力とパワー。そしてパディージャ選手のドリブルとパスワークの多彩さに唖然としました。

壁際での攻防 左からマキシミリアーノ選手、佐々木ロベルト泉選手、田中章仁選手(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

ブラインドサッカーのボールはシャカシャカと音が鳴ります。パディージャ選手はドリブルで揺さぶりをかけて、急にボールを止めて無音にしてからリーチの長いパスを出したり、ループパスを出してボールの位置を察知されないようなプレーが光りました。

そんなループパスをカットしたのが、田中章仁選手。

「(ループパスを)出して来ることは事前情報でわかっていて練習して来たので、慌てずにバウンドしてから音を聞いて対応できたと思います」

日本は粘り強く最後まで守りきり、得点を許さず0-0で試合終了のホイッスル。初の決勝進出となりました。ワールドグランプリが初めて開催された2018年、日本代表は5位、2019年は4位という結果でしたが、ついに決勝行きの切符をつかみました。

試合を終えた高田監督は、「勇気のいる判断ではありますが、全部抑えるのは難しいので、(シュートを)うたせるならどこでうたせるのかというのが、選手は上手く判断できていたと思います」と語りました。

アルゼンチン戦(予選)(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

決勝、再び王者アルゼンチンとの闘い。スターティングメンバーは予選全試合と同じ川村怜選手、黒田智成選手、佐々木ロベルト泉選手、田中章仁選手、ゴールキーパーの佐藤大介選手。

前半9分、ゴールスローを川村選手がとろうとしたところを、マキシミリアーノ選手がボールを奪い、日本の守備陣3人をかわしてそのままシュート。先制点を挙げました。

続く前半15分、壁際での競り合いでこぼれたボールがマキシミリアーノ選手に渡り、再び同じような形で、マキシミリアーノ選手がドリブルで切り込んでゴール。

マキシミリアーノ選手と佐々木ロベルト泉選手(アルゼンチン戦・決勝)(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

2点ビハインドで迎えた後半、日本は攻撃に転じます。川村怜選手が果敢にシュートを狙い、3トップでアルゼンチンディフェンスを崩しにかかる時間もありましたが、そのまま点を加えることはできず、0-2で日本は準優勝となりました。

「悔しいというより、惜しい。もったいないなというゲームでした」と高田敏志監督。

「予選でのディフェンスを100%とすると、今回は98%。ディフェンスにほころびがあったその2回を突かれて、さすが世界ランキング1位というところでした。予選のアルゼンチン戦に比べてゴール前に入る機会は増えたと思いますし、ただフィニッシュ、決定力がないというか。シュートはうっているのだけれど、強いシュートがうてない。遠い、入らないというところがあるので、前半のうちに1点を入れていれば、もっと流れが変わったかなと思うのですけれど」と、今後の課題を挙げました。

川村怜選手(アルゼンチン・決勝)(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

田中章仁選手は失点について、「1点目は、壁際で抑えに行かなければいけないところで、カットインされて入って来られてしまって。もう少し強く寄せた方がよかったかなと思います。2点目は私がボールを壁際でキープしたところに、連携ミスがあって、黒田選手にもたせようとしたボールを(相手選手に)とられてしまったというところです」と振り返りました。

一方で、2年前にアルゼンチンと対戦したときは耐えることに必死であったのに対し、この試合後半の展開については、「前に出ながら攻撃する機会もあったのですが、そのなかでも失点しなかったというのは評価できるのではないかと思います」と、高田監督は今大会での収穫について語りました。

キャプテンの川村怜選手は、「身体を張って戦うのは以前に比べて、どの国相手でもかなり通用したと思います。どのポジションに(自分が)配置されても、プレーを変えながらチームの戦術を実行できました」と手応えを感じていました。

高田敏志監督(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

試合終了後、互いの健闘を称え合う日本とアルゼンチンチームの選手やスタッフの皆さんの姿には、胸が熱くなりました。東京パラリンピックの前哨戦として開催された「Santen IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2021 in 品川」で、日本代表チームがパラリンピックに出場する各国と試合できたことは、間違いなく本番に活きて来るのではないでしょうか。

無観客で開催された今大会、画面を通してたくさんの人が日本代表と各国の選手の皆さんにエールを送りました。チャット欄には応援の文字と、息をのむようなプレーの数々への驚きと称賛の言葉が。

なかには初めてブラインドサッカーを観る人へ、チャット上でルールを解説されている方もいました。現地で観られない寂しさはありましたが、オンライン応援の面白さを感じた気がします。

「Santen IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2021 in 品川」の模様は、YouTube上で観ることができます。日本代表の活躍と各国のスーパープレーを、ぜひ体感してください!

日本代表チーム(写真提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

■「Santen IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2021 in 品川」公式ホームページ
https://www.wgp-blindfootball.com/

■「ブラインドサッカー Blind Football」YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCzfemHfCRGlOpylhditYFSA

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