「遠慮がちな優等生」ではいけない日本~安倍前総理が語る「自由で開かれたインド太平洋」構想
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年6月17日 19時20分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月17日放送)に安倍晋三前総理大臣が出演。総理大臣在任時に悩み、実行したさまざまな事柄について語った。
第1次政権時のインド国会での演説「2つの海の交わり」が「インド太平洋」の原点
安倍前総理が特別インタビューとして6月14日(月)~18日(金)のニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に毎日出演。ここでは安倍政権のレガシーの1つである「自由で開かれたインド太平洋」構想について訊いた。
飯田)まさに価値観の部分、自由で開かれたインド太平洋というもの。この概念は、第1次政権のときから安倍さんの心のなかにあったのですか?
安倍)第1次政権のときに、インドの国会で「2つの海の交わり」という演説を行いました。残念ながら、日本ではそれほど報道されなかったのですが、インドでは大々的に報道されました。いまでもモディ首相を含め、あの演説を覚えている方がたくさんいらっしゃるのですが、それまでは皆さん、「アジア太平洋」という名称を使っていました。日本だけではなく、米国もそうです。
日本は海という公共財があって、貿易立国として成り立つ
安倍)でも、アジア太平洋という認識は少し狭いのではないか。「インド太平洋」、この広い海。これは私たちの公共財です。この公共財があって、初めて文化が交わり、交易が発展し、人々の生活はより豊かになって行くのです。その概念を発表させていただきました。
飯田)我々の公共財であると。
安倍)私のこの「インド太平洋」という考え方において、「2つの海の交わり」という演説が原点であったということは、アメリカが発表したNSC(国家安全保障会議)のレポートにも書いてあるわけですが、まさにこの公共財があって、日本は貿易立国として成り立つわけです。例えば日本は、いま天然ガス、石油等、多くを輸入しています。これは中東からです。その海は、みんながある一定のルールのもとに自由に使えて、活用できるものでなければならない。そして、開かれている。かつそれは、世界が決めた海洋法条約を結んでいます。そのルールが支配するなかにおいて、みんなが活用できるものにしなければならない。こういう考え方に同意する皆さんが協力し合うことが大切だろうという概念なのです。第2次政権をつくったあと、2016年のTICAD(アフリカ開発会議)の会議で、この概念をケニアで発表しました。
ケニアでのTICADの会議で発表した「自由で開かれたインド太平洋」構想
安倍)アジアではなく、アフリカで発表した意味は、「世界的な広がりを持つものである」ということなのです。例えば、日本がアフリカの発展のために、アフリカの産物を輸入しようと思っても、海を通って来るということになるのです。
飯田)まさにインド洋を通って来る。
安倍)ですから、その後、米国も「アジア太平洋軍」という名前を「インド太平洋軍」に変えました。そして、この構想はトランプ政権からバイデン政権にも引き継がれて、いまや国際的な大きな構想になったと思います。
日本が旗を立てた「自由で開かれたインド太平洋」
飯田)そこに太平洋諸国や直接的にコミットする国々だけではなく、イギリスが空母を出して来る。ドイツも「インド太平洋戦略」を打ち出してフリゲート艦を出して来るなど、注目が集まって来ています。これまで、「自由で開かれたインド太平洋」構想のように、「日本が先行して旗を立てる」というようなことはなかったと思います。
安倍)日本は戦後、どちらかと言うと慎み深い国だったのです。憲法の前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあります。「皆さんに任せますよ」と。ですから日本は、みんなが決めたことはきちんと守って、戦後は優等生で来ていました。「私たちはどういうルールをつくるか、どういう世界をつくろうとしているのか」ということを、世界に向かってあまり述べて来なかったのです。遠慮がちだった。
国際的な場において、堂々と日本の考え方、理想を述べて来た
安倍)私は、そうであってはならないと思うのです。日本こそがアジアの国として、「アジア太平洋のみならず、インド太平洋がどういう地域であるべきか」ということを世界に発信するべきだと考えました。
飯田)世界に向かって。
安倍)日本は経済力においても世界で3番目の国です。G7では2番目です。ですから、日本が言えば、世界は聞くのです。私は安全保障に関わることにおいても、堂々と述べます。それこそ、私が述べて来た「積極的平和主義」に合致するのではないかと思い、G7においても、G20においても、さまざまな国際的な場において、堂々と日本の考え方、理想を述べて来ました。
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