岸惠子に渡仏を決断させたイヴ・シァンピの言葉
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年6月22日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(6月15日放送)に女優の岸惠子が出演。空襲の経験からパリへ飛び立つまでを語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。6月14日(月)~18日(金)のゲストは女優・岸惠子。2日目はイヴ・シァンピ監督と共に生きる道を選んだ経緯について—
黒木)現在は横浜にお住みになっていらっしゃる。もともと横浜育ちで。
岸)横浜育ちです。
黒木)出版された自伝のなかにも書いてありましたけれども、その横浜にお帰りになった。
岸)そうです。実家に帰って来ました。実家と言っても、産まれた家ではありません。空襲で家は直撃弾で焼けてしまったので、それから越した家なのです。でも、もう70年くらい住んでいます。父が買った家ですので。
黒木)このご本のなかにもありましたけれども、空襲に遭われた12歳のときに、自分は大人になった。「防空壕に入りなさい」と言われても、そこから飛び出した。それが命拾いしたということですが。
岸)そうなのです。皆さん、ほぼ亡くなったのです。土砂崩れと、煙にむせて。だって、穴を掘っただけで養生のしていなかった防空壕でしたから。それを見た途端に、「こんなところで押し潰されて死ぬのは嫌だ」と思って、公園の松の木に登りました。それで、自分の家が燃えていくのを見ていました。
黒木)その描写も本のなかに書かれてありますけれども。
岸)はい。書きました。
黒木)そのときに大人の人が言ったことを聞かずに防空壕を出て行った。そのとき、「私は大人になった」と感じたと。
岸)「もう、子どもでいるのはやめよう。大人の言うことを聞いたら、私は死んでいた」と思って、「きょうで子どもはやめる」と思いました。
黒木)そういったことから女優になられるまでの経緯もあり、女優を1度お辞めになって、24歳でフランスに行かれたのですけれども、そのときのイヴ・シァンピ監督が「待っています」ということだったのですね。
岸)そうですね。合作映画を撮ったときに私、男の人に惹かれることはあっても、敵わないなと思ったことはなかったのです。この人はとんでもなくすごい人だと思ったのが初めてで、いろいろなことを教えてもらったし、感動することがたくさんあったのです。細かいことは書けませんでしたけれども。そして、何となくずるずると惹かれているときに、「あなたは日本だけで留まっていてはもったいない。好奇心がありそうだから、僕がアフリカや中東、ソビエトも見せてあげたい」と言ってくれて、「あら、もしかしてこれはプロポーズかしら」と思いました。「でも、私は一人っ子だし」と思ったその複雑な表情を見て、「卵を割らなければオムレツはつくれない。人生には時折、二者択一のときがあるんだ」と言われて、「卵を割ろう」と思いました。
黒木)それで、5月1日とご自分で決められたのですね。
岸)そう。「5月1日に行きます」と手紙に書きました。そして『雪国』が最後の私の女優としての決別の映画だったのです。私にとっては、祖国、両親、友だちたちへの別れの禊だったのです。そして、終わったときは4月の確か末でした。27日に終わったような気がするのですが、そうすると5月1日までに着くには1日しかないのです。それを延ばして貰えばよかったのに、「こんな一大事を延ばしては女が廃る」と思って、無理して、本当に慌ただしく行きました。つまり、覚悟です。決めたのだからやろうという覚悟はなくてはならない。その覚悟を持って、私は羽田を飛び立ちました。
岸惠子(きし・けいこ)/ 女優 作家
■1932年神奈川県生まれ。
■1951年公開の「我が家は楽し」で映画デビュー。「女の園」、「君の名は」が大ヒット。「亡命記」では東南アジア映画祭最優秀女優主演賞を受賞した。
■24歳で結婚のため渡仏。仏語・仏文化の専門校「アリアンス・フランセーズ」卒業後、ソルボンヌ大學にも進学。その後、「おとうと」「黒い10人の女」「約束」「細雪」「かあちゃん」など、多数の映画に出演されている。
■作家としても活躍され、『巴里(パリ)の空はあかね雲』で文芸大賞エッセイ賞を受賞。『ベラルーシの林檎』では日本エッセイストクラブ賞を受賞した。
■小説『風が見ていた』『わりなき恋』『愛のかたち』を発表し、そのほか数々のエッセイも出版。
■2004年旭日小綬章を受章。2011年にはフランス共和国政府より芸術文化勲章コマンドールを受章。
■2021年5月には岩波書店より『岸惠子自伝— 卵を割らなければ、オムレツは食べられない』を出版。
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