岸惠子が離婚を決心して切った、夫 イヴ・シァンピ監督への“啖呵”
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年6月24日 12時5分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(6月17日放送)に女優の岸惠子が出演。夫であったイヴ・シァンピ監督との離婚について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。6月14日(月)~18日(金)のゲストは女優・岸惠子。4日目は、3つ目の卵を割ることになった夫・イヴ・シァンピとの別れについて—
黒木)5月に出版された『岸惠子自伝— 卵を割らなければ、オムレツは食べられない』のこのなかにも書かれてありますけれども、イヴ・シァンピ監督のいらっしゃるフランスへ行かれて、日本でもまた映画を撮られたりと、行ったり来たりなさっていて、そういうなかでご主人の……。
岸)私の不在が長かったのですよ。
黒木)映画のスタッフのようなこともやられて。そのあいだにある女性の方が現れて、離婚を決意なさったのですね。
岸)そうです。その人はイヴ・シァンピが好むようなタイプの女性ではなかったのですよ。2度も離婚した経験のある方だったのです。だから私は胸を開いて迎え入れてあげました。
黒木)この自伝にも書かれてありましたけれど、『巴里の空はあかね雲』に詳しく書かれている、「別れる」と決心なさったときおっしゃった啖呵。これをぜひ岸さんの言葉で聞きたいのですか、よろしいですか?
岸)私の好きな啖呵の調子で読めるかわかりませんが、行きます。
(以下、岸惠子による“啖呵”)
「月とスッポン、美女に醜女。誤解のないよう但し書きを付加しますと、月と美女は、このワタクシ。スッポンに醜女がアチラさま。あんな女でコト足りるなら、あたら短いこの命、なにがかなしくパリくんだりで、女を捨ててあくせくと、裏方さんの裏方で、内助の功と取っ組んで、朝は早よから夜おそくまで、ケイコの料理は絶品と、おだて、すかされ喜んで、あげくの果ての愛し子の、失踪事件で報らされた、アッと驚く夫の事情。虚ろなあなたを充たしてくれた、百戦錬磨の名優さまに申しあげて下さいませ。
はばかりながらこのわたくし、役者風情の末席けがす、金波銀波のヨコハマ生れ、タダの芝居は打ちませぬ。ざっくりと高いギャラをいただいて、はじめて演技をいたします。ましてやヒトの御亭主さまを、頂戴つかまつるその手管、ペシャペシャ泣いたり叫んだり、嘘八百のおべんちゃら、あたしゃ聞いちゃあおられんたい」
夫と出会った長崎の、撮影終了の打ち上げパーティで地もとの人々がうたった「おてもやん」を、うすぼんやりと思い出していた。私は、ケタケタと笑っていた。
「ケイコ、どうしたんだ。日本語で言われてもぼくには分らない。フランス語を話してくれ。フランス語で言ってくれ」
「あたしゃあんたに惚れちょるばい。惚れちょるばってん、言われんたい」
さびしさが、かなしさが、あまりにもとめどなく、次から次へと押し寄せて、凍えた体が溶けてきた。
その日、八月十一日、私の四十一回目の誕生日であった。
~岸惠子『巴里の空はあかね雲』(新潮社)より
(ここで“啖呵”終わる)
岸)……3つ目の卵を割ったときに読みました。
黒木)……本当に映像が浮かんできますし。
岸)まだ41歳でしたから、私も女盛りですから、41歳なんて。何かたまらない思いでした。
黒木)損得で考えないで、とにかくスプーン1本も持たないで家を出たという描写も書いてありますけれども。
岸)紙1枚持っていくのも嫌だと思いました。
黒木)その潔さというか。
岸)これは、日本人が持っている美質でもあるし、悪癖でもあるけれど、美意識という役にも立たないものをぶら下げているのです、私たちは。特に昭和初期生まれの私なんかは損得なんか考えられない。綺麗に行こうという自分に対する見栄でもあるのでしょうか。そういうものがありました。未だにあります。
黒木)痺れました。
岸惠子(きし・けいこ)/ 女優 作家
■1932年神奈川県生まれ。
■1951年公開の「我が家は楽し」で映画デビュー。「女の園」、「君の名は」が大ヒット。「亡命記」では東南アジア映画祭最優秀女優主演賞を受賞した。
■24歳で結婚のため渡仏。仏語・仏文化の専門校「アリアンス・フランセーズ」卒業後、ソルボンヌ大學にも進学。その後、「おとうと」「黒い10人の女」「約束」「細雪」「かあちゃん」など、多数の映画に出演されている。
■作家としても活躍され、『巴里(パリ)の空はあかね雲』で文芸大賞エッセイ賞を受賞。『ベラルーシの林檎』では日本エッセイストクラブ賞を受賞した。
■小説『風が見ていた』『わりなき恋』『愛のかたち』を発表し、そのほか数々のエッセイも出版。
■2004年旭日小綬章を受章。2011年にはフランス共和国政府より芸術文化勲章コマンドールを受章。
■2021年5月には岩波書店より『岸惠子自伝— 卵を割らなければ、オムレツは食べられない』を出版。
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