岸惠子が映画『君の名は』でスカーフを「真知子巻き」にしたきかっけは
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年6月25日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(6月18日放送)に女優の岸惠子が出演。大流行したスカーフの巻き方「真知子巻き」ができた経緯について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。6月14日(月)~18日(金)のゲストは女優・岸惠子。5日目は、スカーフの「真知子巻き」が誕生した経緯について—
黒木)5月に岩波書店から『岸惠子自伝— 卵を割らなければ、オムレツは食べられない』を出版されました。ご自分の人生を歩みながら、年齢を重ねることについていろいろなことが書かれてあります。私が好きな岸さんの文章はたくさんあるのですが、「ハイティーンの女の子がお化粧をしている顔は花のように美しく、60歳ぐらいのおばあさんが待合室の隅っこで、こっそりとコンパクトを覗いている顔は抱きしめたくなるほど愛おしい」というものがあります。
岸)それを書いたときは、自分が40何歳で若かったから。いまはもう88歳ですよ。60歳なんてものすごく若いと思うのですけれど、私の60代は素晴らしかったです。
黒木)そうですか。
岸)ですから、その歳その歳に自分さえ求めれば、素晴らしい風景が広がって来るのです。黒木さんなんて、まだこれからですよ。
黒木)本当に美しい文章で書かれてあるので、すべて読破したいと思っています。
黒木)皆さんがよくご存知の映画の『君の名は』での「真知子巻き」がありますが、未だにスタイリストの方と「それではこれ、真知子巻きにする?」などと言っています。
岸)そうですか。
黒木)いまでもその言葉が残っているのです。
岸)残っているのですか。私はもう、消え果てたと思っていました。
黒木)いえいえ。
岸)そうですか。あのストールは、私が書いたように持っていないのです。写真家のアメリカ人に渡してしまいました。あれはフランス製のすごく綺麗なスカーフだったのですが、美幌峠で撮影のとき、雪が降って来てしまったのです。そこであれをかけたら、監督が渋られたのですが、雪が降り続けて来たので、仕方なく被ったのです。そしたら流行してしまったのです。
黒木)そういう経緯があったのですね。
岸)そうなのです。
黒木)岸さんの人生もいろいろなことがおありになって、いまがあるということだと思いますけれども、何かで読みましたら、いまの若者が人生をどんなふうに考えているかと、これから小さな私塾みたいなものをやってみたいということですが。
岸)そう思っていました。この自伝ですが、これは6か月くらいで書き上げたのです。私にしてはすごく短い期間で描いたのもですから。
黒木)本当に若い方々に読んでいただきたいと思います
岸)日本人は優しくて、教養もあるし、美質がいっぱいあるのですが、そこからパッと飛び出さない。だから鈍い生活を送っていると思うのです。だから、せめて若い人に、それを打ち破って外へ踏み出して欲しいと思います。
黒木)コロナ禍でフランスへも、お嬢様ともなかなか会えない日々でいらっしゃると思いますけれども。早く行き来できるような時代が来るといいなと思います。
岸惠子(きし・けいこ)/ 女優 作家
■1932年神奈川県生まれ。
■1951年公開の「我が家は楽し」で映画デビュー。「女の園」、「君の名は」が大ヒット。「亡命記」では東南アジア映画祭最優秀女優主演賞を受賞した。
■24歳で結婚のため渡仏。仏語・仏文化の専門校「アリアンス・フランセーズ」卒業後、ソルボンヌ大學にも進学。その後、「おとうと」「黒い10人の女」「約束」「細雪」「かあちゃん」など、多数の映画に出演されている。
■作家としても活躍され、『巴里(パリ)の空はあかね雲』で文芸大賞エッセイ賞を受賞。『ベラルーシの林檎』では日本エッセイストクラブ賞を受賞した。
■小説『風が見ていた』『わりなき恋』『愛のかたち』を発表し、そのほか数々のエッセイも出版。
■2004年旭日小綬章を受章。2011年にはフランス共和国政府より芸術文化勲章コマンドールを受章。
■2021年5月には岩波書店より『岸惠子自伝— 卵を割らなければ、オムレツは食べられない』を出版。
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