中国からもアメリカからも規制を受けるIT企業の「存在の危機」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年7月6日 17時45分
19日、清華大学で行われた教師や学生代表との座談会で重要演説を行う習近平氏。習近平(しゅう・きんぺい)中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は19日、間もなく創立110周年を迎える清華大学を視察した。(北京=新華社記者/鞠鵬)= 配信日: 2021(令和3)年4月20日、クレジット:新華社/共同通信イメージズ
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月6日放送)に経済アナリストのジョセフ・クラフトが出演。配車アプリ「ディディ」のアプリの公開停止を中国政府が通知したというニュースについて解説した。
中国政府が配車アプリ「ディディ」に対し、アプリの公開停止を通知
中国当局は7月4日、日本でもサービスを始めている中国の配車アプリの大手「ディディ(滴滴出行)」が、アプリを通じて違法に個人情報を集めているとして、アプリの公開を停止するよう通知したと発表した。
飯田)ディディ、「滴滴出行」と中国語では書くようですが、6月30日にニューヨーク証券取引所に上場したばかりだということです。どうご覧になりますか?
クラフト)中国政府が「個人情報保護」などと言うこと自体、違和感を持ちますが、ポイントは2つあります。まず1つは中国政府がディディだけではなく、アリババ、テンセントなど、IT大手企業を軒並み抑制しているということです。この背景には、中国共産党100周年を迎えて、「中国が偉大なのはこうしたIT企業の発展ではなくて、党のおかげなのだ」ということをアピールしたい。したがって、若者が憧れるようなIT企業の抑制にかかっているということが考えられます。とりわけジャック・マーCEOとか。
飯田)アリババの。
クラフト)テンセントのCEOなどを個人的にも攻撃しているというところで、中国共産党の威厳を守るような意味合いがある。
米中の両国から痛い目に遭わされている米中それぞれのIT企業
クラフト)もう1つは、アメリカで上場を目指す企業に、集中的に取締をしている。アメリカで公開上場すると、その企業の事業内容や戦略が見えてしまうので、中国共産党としてはそういうところを抑制して、アメリカをけん制したい。実はアメリカも、同じようなことを中国企業にやっているのです。アメリカ政府からも制裁を加えられ、中国政府からも抑制される。中国のIT企業は両方から痛い目に遭っているのですけれども、実はこれは中国政府だけではないのです。アメリカ政府も、6月に下院でIT企業の抑制法案を6つ可決しています。
飯田)そうですね。
クラフト)今度、上院で通りますけれど、IT企業により税をかけたり、プラットフォームでも投稿内容の責任を持たせるなど、いろいろな制裁や規制強化を行います。これが世界的なトレンドになっているのです。特に米中でそのようになっているので、IT企業は今後のビジネスがやりづらくなるでしょう。
GAFAへの風当たりが強くなっている
飯田)ジェフ・ベゾスさんがアマゾンのCEOを退任するというニュースのなかで、ツイッターで「GAFAに対してのあたりも強くなっているから、退任するのではないか」という指摘もありましたが、どうですか?
クラフト)それでベゾスさんが退任するのかどうかはわかりませんけれども、GAFAへの風当たりは確実に強くなっていますよね。
飯田)風当たりという意味では、中国企業がアメリカで上場しようとすると、もっと風当たりが強い。
GAFAの規制強化を主張するリナ・カーン氏が米連邦取引委員会(FTC)に就任
クラフト)1つの象徴として、FTCというアメリカの公正取引委員会の委員長に、弱冠32歳のリナ・カーンさんという女性が就任します。彼女は以前から、GAFAの解体、GAFAの規制強化を主張していました。この人を公正取引委員会のトップに据えるということは、今後、明らかにGAFAへの風当たりが強まって行くことが伺えます。これは中国のIT企業も同じです。
飯田)リナ・カーン氏のアマゾンに関する論文では、アマゾンの小売事業は販売プラットフォームから分離すべきだと主張しています。
クラフト)彼女の主張のポイントとして、いままでの公正取引委員会の概念というのは、消費者への価格を見て、不利益がないのかということなのですが、実はその他に「目に見えない不利益なビジネス戦略」をGAFAは取っているということです。より根幹を狙ったGAFAのビジネスモデル、プラットフォームを狙うのが彼女の主張で、やりづらいと思いますね。
今後、GAFAに不利な州、あるいは裁判所で争うようなことになり、勝訴しにくくなる
飯田)そういう意味では、取り締まりの基準づくりからやって行くという感じですか?
クラフト)先ほど言った下院での法案がまず土台になります。その法案に基づいて、公正取引委員会がそれを執行して行く。例えば1つだけ挙げると、先日、フェイスブックに関する裁判で、独占禁止法違反の疑いで訴えられていた訴訟が棄却されて、フェイスブック側が勝ったのですけれども、今回の法案で何ができるかというと、公正取引委員会が「どこの裁判所で争うかを決める権限を持たされる」のです。そうすると、当然GAFAに不利な州、あるいは裁判所で争うようなことになり、勝訴しにくくなります。
飯田)アメリカの場合は、州によってビジネスに対するスタンスが違いますし、州法が違う。
クラフト)リベラルの判事か、保守の判事かによってもまた違う。そういうところを「ホームアンドアウェー」で、どこで試合をやるかを選ぶことができれば、有利になりますよね。
リベラルにも保守にも厳しい目で見られているGAFA~最高裁でも勝つことは難しい
飯田)判事のスタンスによっても変わって来ると。裁判は最終的には、最高裁に行くわけですよね。最高裁の顔ぶれはトランプ政権のときに話題になりましたが、かなり保守寄りが多いと言われています。
クラフト)いまリベラルも保守も同意できる事項は2つくらいしかないのです。1つは中国、対中強硬姿勢。これは双方が同じです。そして、もう1つはGAFAの規制です。
飯田)なるほど。
クラフト)だから左派も保守も対GAFAに関しては、厳しい目を持っているので、最高裁も厳しいと思います。
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