黒木瞳、娘の家庭教師・山口真由と再会対談 ~「家族」は生々しい傷を負いながら、日々、自分たちでつくり上げ続けなければいけない
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年7月7日 9時0分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(6月30日放送)に信州大学特任教授・NY州弁護士の山口真由が出演。自著『「ふつう」の家族にさようなら』に書かれた「家族の問題」について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。6月28日(月)~7月2日(金)のゲストは、黒木の娘の最初の家庭教師を務めた、信州大学特任教授・NY州弁護士の山口真由。3日目は、自著『「ふつう」の家族にさようなら』に書かれた「家族の問題」について—
黒木)2021年にKADOKAWAから『「ふつう」の家族にさようなら』という本を出されました。タイトルは普通なのですが、とても中身の濃い問題提起のある一冊です。これは弁護士でいらっしゃるからこそ、いろいろなことを学んでメッセージとして伝えたいという思いが強かったのかな、と感じました。
山口)家族という問題について、自分のなかで葛藤を抱えていて、弁護士をしていたからこそ、それを感情的というよりは、「論理的に整理してお話をしてみたい」という気持ちになったのかも知れません。
黒木)これは、このような問題提起を発信して行く扉の1歩目であって、これからもっと発信して行きたいという、覚悟の表れのように感じました。
山口)私は自分でこれから家族をつくって行きたいと考えていますが、それは、私の親が私に与えてくれたような普通の家族ではないかも知れないし、それに対する批判があるかも知れません。私はいま妹と一緒に住んでいて、卵子を凍結しています。普通であれば、「結婚して子供を産もう」と思うところを、もしかしたら、違う選択肢があるのではないかということを、少しずつ考え始めています。いまは模索中なのですが、そのようなことを、自分の足で1歩ずつ築き上げて行きたいと思っています。
黒木)真由ちゃんは、自分は正直に生きたいと。
山口)そうですね。人を羨ましく思ったり、自分は結婚していないからと卑屈になるのではなく。私がこの本を書いたときに、主婦でお子さんが3人いて、すごく幸せそうに見える人が、「いや、私も実は葛藤があった」というメッセージをいただいたのです。「すべての人は闘っているのだ」ということを、まずはリスペクトして、自分もその闘いに身を投じようと思えるようになりました。
黒木)「結婚すれば、お互いに成長できるものだ」というような、よく人から聞くことではなく、そこには葛藤などがあり、それぞれが成長して行くべきものだと。
山口)結婚したって、どこにもゴールなんてなくて、毎日、家族になり続けているのだな、と思いました。
黒木)それはアメリカのハーバードで出会った教授のお話やご自分の経験などで、アメリカと日本の違いのようなところから、このような考え方になって行ったということですよね。
山口)そうですね。トニ・モリスンの『青い眼がほしい』という本に、私は衝撃を受けたのですが、1ページ目で、アメリカの平均的な教科書の、「お父さんがいます、お母さんがいます、お父さんは力強い、お母さんは優しい」ということを書いた後に、その文節をバラバラに分解して行くのです。それで、「普通の家族なんてものは、どこにもないのだ」ということを明らかにしてから、家族のリアルや生々しい葛藤の物語を書いているのですが、しかし、そこには自分が病気になったときなどには温かい手がある。「その温もりこそが家族なのだ」という話に、私は目を身開かされるような思いで衝撃を受けました。教科書に載っているような理想的な家族でなくてもいい。家族は生々しい傷を負いながら、日々自分たちでつくり上げ続けなければいけないのだな、と思いました。
黒木)学習の1つの力に、国語力というものを書いていらっしゃいますが、その国語力というものは大切なのですね。
山口)私自身は読み書き、特に読むということに関して、とても偏った勉強をして来ました。自分が読めない文章を書くこともできないだろうと思って、とにかく小さいころから何度も繰り返し本を読んでいました。それが自分の基礎体力のようなものになったのだと思います。
黒木)『「ふつう」の家族にさようなら』という本がKADOKAWAから出ていますが、いろいろな問題提起がされています。
山口)特に申し上げたかったのは、多様性についてで、それが普通の家族を攻撃している。分断ではなく、どこかに変わらない暖かさのようなものがあるのではないか、それを探しに行きたいと思います。
山口真由(やまぐち・まゆ)/ 信州大学特任教授・NY州弁護士
■1983年。北海道出身。
■東京大学法学部に進学し、3年生在学時に司法試験を突破。「法学部における成績優秀者」として総長賞を受けて卒業。
■卒業後、2006年に財務省へ入省。2008年に退官。その後、2015年まで弁護士として主に企業法務を担当。
■2015年9月、ハーバード・ロースクールに留学し、2016年に修了。
■2017年、ニューヨーク州弁護士登録。
■帰国後は東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に進み、日米の家族法を研究。
■2020年、博士課程を修了。2021年より信州大学特任教授。
■テレビ出演・著書多数。近著に『「ふつうの家族」にさようなら』(KADOKAWA)、『人生の武器になる「超」勉強力』(斉藤孝・中野信子共著/プレジデント社)がある。
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