「食品ロス」削減は「生き方改革」である ~食品ロス問題ジャーナリスト・井出留美
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年7月16日 11時55分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(7月9日放送)に食品ロス問題ジャーナリストの井出留美が出演。食品ロスをつくり出す現在の社会構造、そして食品ロスをなくすための今後の取り組みについて語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。7月5日(月)~7月9日(金)のゲストは食品ロス問題ジャーナリストの井出留美。5日目は、食品ロス問題に対する今後の取り組みについて—
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黒木)食品ロスの問題について、今後どのような取り組みに力を入れて行きたいと思っていますか?
井出)賞味期限というものを誤解されている方が多いのですが、「あくまでも美味しさの目安なのですよ」ということを、本であれば、自分がいなくなっても後に残って行くものなので、そのような形で伝えて行きたいと思います。
黒木)「賞味期限を過ぎているから捨ててしまおう」という食品は山ほどありますよね。
井出)世のなかのほとんどの加工食品には、賞味期限表示が入ってしまっているので、日本もそうですし、ヨーロッパやアメリカでも、その問題を解決しようと思って、いろいろな人がいろいろなことをやっています。
黒木)表示しないわけにはいかないし、難しいところですが。
井出)デンマークでは、牛乳の1リットルパックの1面を使って、賞味期限について説明を入れています。「目で見て、鼻で匂いを嗅いで、少し舌で味わって大丈夫だったら、飲食できますよ」ということを、イラストで説明しています。
黒木)「食品ロスに関してのヒエラルキーが生じる社会をなくしたい」という思いもあるということを書かれている本で読みました。
井出)食品業界では、上下関係が食品ロスを生み出している1面が多いのです。売り手が強くて、つくり手が弱い。品切れをすると、「おたくの商品は売りません」と言われるから、仕方なく、つくり過ぎてしまう。コンビニであれば、本部が契約を握っているので、お店はそれに従わないといけない。値引きがしづらくなっているから、スーパーに比べると、賞味期限の近いものを値引き販売するというようなものがないのです。そうではなく、フラットな、平等な形で解決して行きましょうというのが、「コレクティブインパクト」と言われていて、事例もたくさんあるそうなのですが、そのような社会になったらいいなと思います。
黒木)上下関係がなくなれば、食品ロスの問題も事業の方から少なくなって行くだろうということですよね。
井出)そうですね。出したくないのに、出さざるを得ないというのが、本当に理不尽なのです。
黒木)ケーキ屋さんやパン屋さんを見ていると、職人さんたちが苦労してつくられたものなのに、「捨ててしまうのかな」と思い、胸が痛むような光景を見ることがありますよね。
井出)消費者としては、「そのようなものを捨てるお金も自分たちが払っているのだ」ということにも、気付かなければいけないと思います。
黒木)捨てているお金は私たちの税金なのですよね。
井出)税金でもありますし、食料品価格にも乗っていると考えなくてはいけません。「捨てる為のコストは誰が払っているのか」「売れ残りのコストは誰が払っているのか」と言うと、ボランティアではありませんから、やはり誰かが払っている。となると、それはお客さんなのです。
黒木)地球規模なので、本当に1歩1歩ということなのだと思いますが、私たち1人1人にもできることがあるということは、お話を聞いてわかりました。私も努力したいと思います。井出さんのこれからの目標は何ですか?
井出)7月の終わりに、『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』という新刊を出します。
黒木)どのような内容のものでしょうか?
井出)昔は捨てていたのだけれども、あることがきっかけで捨てなくなった、というパン屋さんを営んでいる方がいらっしゃるのですが、その方の物語をノンフィクションで書きました。子どもたちにも読めるようにわかりやすいものです。
黒木)ノンフィクションで。
井出)食品ロスを減らすということは、単に無駄を減らすということだけではなく、その方の働き方や生き方をいいものに変えることができるのです。余裕ができて、休みがたくさん取れ、幸せな気持ちで働くことができる。「食品ロスを削減するということは、働き方改革であり、生き方改革」だということなのです。
井出留美(いで・るみ)/ 食品ロス問題ジャーナリスト
■株式会社office 3.11代表取締役。
■奈良女子大学食物学科卒。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。
■ライオン、青年海外協力隊を経て、日本ケロッグ広報室長などを歴任。
■東日本大震災での食料支援で食料廃棄に衝撃を受け、自らの誕生日であり、東日本大震災の発生日でもある3月11日を冠した「(株)office3.11」を設立。食品ロスの問題を訴え、2019年施行の「食品ロス削減推進法」成立に協力。
■政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。
■食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門、Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018、令和2年度 食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞を受賞。
■著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』『捨てられる食べものたち 食品ロス問題がわかる本』など。
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