藤井 風「きらり」アレンジで心掛けたこと ~音楽プロデューサー・Yaffle
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年8月10日 21時50分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(8月3日放送)に音楽プロデューサー・作曲家・編曲家のYaffle(ヤッフル)が出演。楽曲をアレンジするときの自身の信条について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。8月2日(月)~8月6日(金)のゲストは音楽プロデューサーのYaffle。2日目は、人間の持つ感性に基づいた、楽曲をアレンジするときの心がけについて—
黒木)(藤井 風の「きらり」を聴きながら)いま流れているのは、Yaffleさんがサウンドプロデュースを手掛けている藤井 風さんの「きらり」です。この作品は有名ですよね。Adieu(アデュー)の名義で音楽活動をされている上白石萌歌さんなど、話題の若手アーティストへの楽曲を提供、プロデュースなさっています。まず藤井 風さんの弾き語りの曲を聴いて、それをYaffleさんがいま風にアレンジするという形ですか?
Yaffle)本人のピアノの弾き語りのなかで、1つ世界観はでき上がっているのですね。でも「弾き語りのアーティストだけで完結したくない」という思いが彼のなかに強くあるようなので、その世界をさらに拡張するのですが、そのときに「自分ならどうするか」ということを考えます。
黒木)この「きらり」では、いまは楽譜も何もないのでお歌だけを聴いていますが、どのようなところをアレンジされて行ったのですか?
Yaffle)もともとこの曲は車のCMの書き下ろしだったのです。本人はドライブする感覚や躍動感を気にしながら書いたと思うので、それをよりプッシュするような感じにしました。車に乗っていて体が動きたくなるような曲というのは、何かしらのロジックをそこに見出したいのですよね。人間が聴いていて興奮する、体が自然に動いてしまうというような感覚は、昔のクラシック音楽でも、あまり研究して来なかったテーマなのです。楽器としてのドラムやロックというジャンルが出て来て、それがさらにファンクやディスコなどになり、次第に無意識につくって演奏する人が出て、それを聴いた人間の体が動いてしまうという、「音楽に通底する心理のようなものがあるのではないか」というところに興味を持ちました。
黒木)それはもう感性の分野ですよね?
Yaffle)そうですね。「快・不快」に感じるということで言うならば、歴史のなかで綺麗に響くハーモニーのようなものは一応あるのですが、感性を言語化するときに、どのようなヒントがあるのか。例えば、美味しいご飯を食べて、「美味しい」ということで、食べた人にとっては、それでもう感性としてはいいではないですか。しかし、つくる側としては、「たまたまつくったものが美味しかった」ということでは困りますよね。
黒木)そうですね(笑)
Yaffle)適当に塩と胡椒を入れてみたら、たまたまきょうは「美味しい」と言われた、ということでは再現性がないので、明日がどうかはわかりません。「美味しい」と言われた料理は、塩はこれくらい使っているのだなとか、胡椒はこれくらいだったのだ、ということを書き留めておく。「塩をかけ過ぎると人はしょっぱいと言うのだろうな」と、加減が段々とわかって来るではないですか。そのように感性に切り込んで行くというか、「紐解く」ということを進めると、音楽が新しいステージに、音楽の可能性の掘りどころとしてあるのではないかと思います。
黒木)現代の音楽ということをすごく意識していると思いますし、それを我々が「いまっぽいな」と感じてしまう。しかし、その「いまっぽい」ということをYaffleさんが創造しているのだなと感じながら聴いていました。
Yaffle)私は流行というものは、たまたま流行ったのではなく、そこに行き着いた理由があると思うのです。世の中を何百年と見たときに、変化していくトレンドがありますよね。 そこには、1つの方向にゆっくり向かって行っているものがあると思うのです。音楽であれば、より聴いた人々が興奮する、感動するという方向に何百年かけて、いろいろな人が試し試しやって行って、ゆっくり時代のうねりがそこに近づいて行っている。確信めいた文化としての前提がそこにあるのです。そのような前提があって、そこに向かって行かないと、ただの昔の懐メロのオンパレードのようになってしまい、文化として死んでしまう。ある種の保存されて行く芸術になってしまう。それは私の好きな音楽ではないのです。
黒木)そうなのですね。理由があって、この曲のアレンジが生まれたということなのですね。
Yaffle)そうありたいと思っています。
Yaffle(小島裕規)/ 音楽プロデューサー・作曲家・編曲家
■東京都出身。
■大学在学中の2010年末から作曲家・編曲家としての活動をはじめ、2014年、クリエイティブカンパニー「Tokyo Recordings (現・TOKA) 」を設立。
■その感度の高いプロデュースワークで、小袋成彬、藤井 風、iri、SIRUP、SANABAGUNの高岩遼、Capeson、柴咲コウ、Adieu(上白石萌歌)らのアレンジや楽曲提供、またCM音楽のほか、映画『響』『ナラタージュ』『映画 えんとつ町のプペル』『地獄の花園』『キャラクター』などの映画音楽を制作。
■2018年からは自身のアーティスト・プロジェクトを始動。海外アーティストとのライティング・セッションで生まれた楽曲をリリース。2020年9月にはファーストアルバム『Lost,Never Gone』をリリースした。
■6月11日から公開されている菅田将暉Fukase出演の映画『キャラクター』では、主題歌「Character」を手掛けた。「ずっと真夜中でいいのに。」のACAね、ラッパーのRin音と奇跡のコラボ―レーション。作品の劇中音楽も担当されている。6月9日には映画『キャラクター』のオリジナル・サウンドトラックもリリース。
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