曲をつくる際、ヴォーカルに望むこと ~音楽プロデューサー・Yaffle
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年8月11日 23時30分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(8月4日放送)に音楽プロデューサー・作曲家・編曲家のYaffleが出演。学生時代の経験と現在の曲づくりについて語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。8月2日(月)~8月6日(金)のゲストは音楽プロデューサーのYaffle(ヤッフル)。3日目は、自身の曲づくりの糧となった学生時代と、音楽をつくる際にヴォーカルに求めていることについて—
黒木)きょうはYaffleさんのアルバムはどの曲をいかれますか?
Yaffle)2020年に出したアルバムから、「Rafter feat. Nick Moon」です。
黒木)(「Rafter feat. Nick Moon」を聴きながら)海外のミュージシャンとのコラボのときも、1人で海外まで出かけたりするそうですね。
Yaffle)そうなのです。誰も一緒に行ってくれないので。
黒木)「この人いいなあ」と思ったら1人で行かれるのですか?
Yaffle)そうですね。それか、行きたいところを決めてしまって、そこにいる人たちのなかからいちばん楽しい人をピックアップします。行く場所の方を先に決めてしまいますね。
黒木)この曲は?
Yaffle)この曲はイギリスのレスターという場所の出身のニック・ムーンという、ポストロック・バンドのヴォーカルの人なのですが、本人も日本が好きで、日本にいたりとかしていて、たまたまこのときは東京にいたので、東京のスタジオで一緒に書いて、という感じです。
黒木)もともとYaffleさんは子どものころからピアノをされていたということですが。
Yaffle)真剣な感じではなくて、惰性でやっていました。
黒木)惰性で。しかし、音大に行かれたのですよね。
Yaffle)現代クラシックですね。前衛音楽というか、尖ったところのカリキュラムをやる大学です。
黒木)その「尖った感覚」というのは説明が難しいと思いますが、教えていただけますか?
Yaffle)前衛なので、誰かがやってしまうともうダメなのです。「この曲誰々っぽいね」というような。ロックやジャズという枠組み自体は、誰かがもうやっているわけではないですか。前衛の場合はそれがもうダメなので、「曲がいい悪い」という以前に、「この曲はこのような曲です」というコンセプトを決めます。例えば、「この曲は痒い人の曲だから、ピアノを弾いている途中で全身が痒くなって来て最後に体を掻き毟る」という曲が既にあって、曲自体のクオリティもあるのですが、その「痒い」ということ自体がいちばん大事なのです。
黒木)そのようなことのあるのですか。確かに前衛的ですね。
Yaffle)それはエンターテインメントにつながるところも少しだけあって、この映画はこのような映画で、このアーティストはこのようなアーティストです、というのは、何となく「いい曲書きます」というものよりは、1つ芯が通ったものはできやすいとは思います。
黒木)大学時代もご自分の糧になっているわけですね。
Yaffle)いろいろと面白い経験はたくさんありましたが、それが自分のなかに残っているのだなという思いはあります。「この曲を聴いて、最終的に思って欲しいこと1つだけを絞って」というような考え方はしています。
黒木)日本のアーティストの方も海外のアーティストの方も、自分の好きな人や音楽で自由に仕事をするということが好きなのですね。
Yaffle)「ワーッ」と音を埋めてくような曲ではないので、ヴォーカルが浮くのです。よく言えば聴きやすいし、悪く言えば剥き出しというか、そのまま出るので、曲の力でどうにかするということには、あまり向いていません。そのようなこともあって、自分にとっても声だけで上がってしまうような人でないと、曲として成立しないところがあるので、そのような人とでないと、自分とはうまく行かないのだろうなということは思います。
黒木)「この人ならアレンジしたら面白くなるだろう」ということを手掛けているという感じですか?
Yaffle)自分がその声に惹かれるというか、歌のレコーディングが終わった後も、その歌の仕上がりを聴いて少し作業をします。そこで音楽の登りのところを引っ張って行って欲しいというところがあって、その人のいちばんいいテイクが録れた後に、それをボーッと聴いて、「歌はこっちの方向に向かいいのだろうな」というところにリードして欲しいという感覚で。
黒木)自分をリードして欲しい?
Yaffle)はい。声は人間みんな違うではないですか。お決まりの安牌な展開にさせないようにするヒントは、歌っている人の声質や歌い方にあります。生き方がその人の声質に出て来ると思います。
黒木)生き方が声に、ですか。そこに自分も乗っかって行きたい?
Yaffle)あるいは歌の人もすべて終わって、最後にそれを聴いて、「あと2パートだけ押させてくれ」ということを自分で作業したがります。
Yaffle(小島裕規)/ 音楽プロデューサー・作曲家・編曲家
■東京都出身。
■大学在学中の2010年末から作曲家・編曲家としての活動をはじめ、2014年、クリエイティブカンパニー「Tokyo Recordings (現・TOKA) 」を設立。
■その感度の高いプロデュースワークで、小袋成彬、藤井 風、iri、SIRUP、SANABAGUNの高岩遼、Capeson、柴咲コウ、Adieu(上白石萌歌)らのアレンジや楽曲提供、またCM音楽のほか、映画『響』『ナラタージュ』『映画 えんとつ町のプペル』『地獄の花園』『キャラクター』などの映画音楽を制作。
■2018年からは自身のアーティスト・プロジェクトを始動。海外アーティストとのライティング・セッションで生まれた楽曲をリリース。2020年9月にはファーストアルバム『Lost,Never Gone』をリリースした。
■6月11日から公開されている菅田将暉Fukase出演の映画『キャラクター』では、主題歌「Character」を手掛けた。「ずっと真夜中でいいのに。」のACAね、ラッパーのRin音と奇跡のコラボ―レーション。作品の劇中音楽も担当されている。6月9日には映画『キャラクター』のオリジナル・サウンドトラックもリリース。
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