中国のICBM格納庫増強、本格的にアメリカと対決する意思の表れか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年8月15日 11時40分
ニッポン放送「飯田浩二のOK! Cozy up!」(8月9日放送)に朝日新聞編集委員で元北京・ワシントン特派員の峯村健司が出演。中国の「核」の、日米関係への影響について解説した。
高齢化する被爆者 ~「核」への新たな警鐘の方法が必要
8月9日、長崎に原爆が投下されてから76年となった。長崎市の平和公園では長崎原爆犠牲者慰霊平和記念式典が行われ、被爆者やご遺族、菅総理大臣のほか64ヵ国の代表らが参列。
飯田)広島、長崎、原爆の日……今回は核兵器禁止条約が発行してから初ということも論点として報じられております。
峯村)私も20年程前に広島支局で原爆問題の担当をしていたので、非常に感慨深いものがあります。
飯田)20年前というと、被爆された方々というのもかなりご存命の方も多いし、そこを前々から準備して報道するという形でしたよね。
峯村)そうですね。当時は被爆者の方々からの証言を聞いて報道することに力を入れていたのですが、いま既に被爆者の方の平均年齢が84歳になっています。私が当時お付き合いしていた被爆者の方々も相当亡くなられています。今後被爆体験をどういうように伝えていくかが課題です。これまでのパターンは段々通用しなくなってくるので、なにか新しい技術をつかった、警鐘の方法というのを我々メディアも含めて考えていかなければならないなと思っています。
飯田)そこのところ、記憶をどうつないでいくかというのは様々な災害でテーマとなるところですけれども、この技術の進歩等々でどう追体験をしてもらうかというところですかね。
中国がかなりのスピードで核ミサイル・格納庫をつくっている恐れ
峯村)そこは重要ですよね。この技術の進歩でいうと、この20年間、違う技術の進歩が行われていて、やはり核兵器は我々の望みに反して、数を増やしている国があります。そのいちばんが中国なんですよね。中国はアメリカとロシアが進める核軍備管理やミサイル制限の枠組みには入っていません。更には最近アメリカの研究者らは相次いで、中国が核ミサイルの格納庫を内陸部のウイグル自治区に110個、甘粛省には119ヵ所新たにつくっていることを突き止めました。かなりのスピードで核ミサイル、格納庫をつくっているのではないかという疑惑が出てきています。
飯田)この格納庫、サイロという言われ方をしたりしますが、これって基本的には弾道ミサイルを格納しておくところ。大陸間のものですか。
峯村)大陸間弾道ミサイル(ICBM)だけではないですが、メインはそのようですね。そうなってくると、どこを狙うんだという話になってきますね。いままで中国の核戦略は、ミサイルもそうなんですけれども、基本的には日本とか周辺国、中距離、もしくは短距離を中心に力を注いでいたわけです。ところが最近それほど数が多くなかったとみられるICBMをどんどん増やしてくるとなると、本格的にアメリカと対決する意思の表れとも受け取れる動きだと思っています。
飯田)しかも今回報道されているのは、衛星で分かったということを考えると、見せている部分もありますか。
峯村)ありますね。中国の軍の内部文書なんかを見ていると、わざわざ「相手国の衛星に核やミサイル施設を映るように見せる」というのが記されている部分もあるのです。そう考えると、所謂心理戦が始まっている可能性というのは考えられます。
アメリカの「核の傘」が頼れない場合の準備が必要なフェーズに入った日本
飯田)これ、ここで我々日本として考えなければいけないのが、じゃあ弾道ミサイル同士でお互いの都市を一発で破壊できるもので睨み合っている国が2ヵ国あると。日本はそのうちの1つのアメリカの同盟国で、アメリカの核の傘にいるよというのがいままで安心材料の1つでもあったわけですが、どうですか、その状況になったときに、日本を、東京を守るに当たって、サンフランシスコだとかホノルルをリスクに晒せるかというアメリカ側の問題も出てくるのではないでしょうか。
峯村)いまのご指摘の問題がいちばん重要です。中国が正に狙っているのは日米の同盟の間に楔を打ち込むということなのです。そのためにアメリカ本土に届くICBMを増やすことを狙っているとみています。よく中国の軍人とかが「ロサンゼルスとかワシントンを火の海にしてやる」とよく言っています。これはあながちうそではないのです。アメリカ側を脅しておいて、中国に対して反撃をできないような状態にすると。そうなってくると、じゃあ日本が攻撃されたらどうするんだというところになってくるんですね。日本として考えなければいけないのは、アメリカの「核の傘」が頼れない場合にどうすればいいかということです。そのための検討と準備をしなければならない時期に来ていると思います。
飯田)これ、もちろん核禁止条約の理念というのは絶対に正しいと思うし、全部の国が核を廃絶すれば、それは素晴らしいことなんだけれども、他方、この状況に置かれている日本がどうこの国を守っていくかというのは、本当に残念だし皮肉なんだけれども考えなければならないこと。
峯村)そうですね。そこは本当に唯一の被爆国として、核は廃絶しなければいけない訴えることは人類の義務なのです。言わなければいけないのです。一方で、核兵器を増やしている国があるという現実もあります。これは矛盾するわけではなく両方をしっかり進めるということが唯一の被爆国である日本の役割だと私は思っています。現実的な対応が大事だと思っています。
飯田)だから本当はあのサイロの写真とかって、アメリカでも大きく報じられましたが、日本こそ衝撃を受けなければならないニュースなんですよね。
峯村)本来はそうなんですよね。そこがやはり反応が鈍いと言わざるを得ません。「そうかアメリカなんだ」という話ではなく、台湾や尖閣有事に直結する話なのです。
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