常に高校生や中学生の自分が見ているという感覚を忘れないようにしたい ~音楽プロデューサー・Yaffle
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年8月15日 23時55分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(8月6日放送)に音楽プロデューサー・作曲家・編曲家のYaffleが出演。曲づくりにおける忘れてはいけない感性について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。8月2日(月)~8月6日(金)のゲストは音楽プロデューサーのYaffle。5日目は、自身が楽曲をつくる上で忘れないようにしていることについて—
黒木)きょうは何を聴かせていただけますか?
Yaffle)2020年に出したアルバムからYaffleで、「Lost, Never Gone feat. Linnéa Lundgren」です。
黒木)(「Lost, Never Gone feat. Linnéa Lundgren」を聴きながら)この曲で意識なさったのはどのような部分なのですか?
Yaffle)歌っているLinnéa Lundgren(リニア・ラングレン)という女の子がピアノの弾き語りで歌ってくれた曲が原型になっています。それはそれで1つ完成している、フォークソングのような曲だったのです。これを自分の曲として消化するときに、「どのように関わると、この曲のいいところが出て、かつ自分が喋っている感じが出るか」ということを考えてつくりました。
黒木)自分の声で歌っているような曲づくりをするということですか?
Yaffle)そうですね。Yaffle名義で出すという話でまとまっていたので、歌わない自分がこの曲を一緒につくって行くなかで、いかに自分が喋っているかのように、その曲のなかに入って行けるかということは意識しました。Linnéaのアルバムをプロデュースしているわけではなくて、Yaffle名義のアルバムにLinnéaが歌手として乗っかっていてくれるというものなので。
黒木)心地よさのようなものですか?
Yaffle)必然性という言葉の方が近いのかも知れません。会話のなかに綺麗に入って行ける人もいるし、周りを止めてしまう人もいるではないですか。それと同じように、最初この曲はピアノとLinnéaの声で弾き語りのような形から始まり、次々にドラムやシンセサイザーの音などが入って来て展開して行くという構成です。そこで自分が喋りだすというタイミングを弾き語りから受け継いであるのですが、そこに何かしらの流れがあって、そこに落ち着くということが好きで、そうあるべきだと思っています。1人のリスナーとして「こいつうるさいな」とは思わないで、かつ表現者としては、自分の言葉で喋りたいというエゴと美しさ。聴いている側として、「綺麗だな」と思うところとのバランスを取るのが大変でしたね。
黒木)高校時代は、聴いている側だったのが、今度は皆さんに聴かせる側になったわけですよね。音楽に対しての想いは変わりましたか?
Yaffle)この業界に入ってみてわかることは、たくさんあるではないですか。「こういう感じで回っているのか」とか、「こういうことにみんな気を付けているのだな」ということが、わかったことによって、変わってしまうことは避けようと思っています。自分が「パッ」と聴いたときに、「あまりよくないな」と思う他の人の曲であったとすると、いまは「きっとこのような事情があったのではないか」とか、「この違和感はこういう立場の人が、こう言ったからこうなったのではないか」とか、いろいろわかってしまうのです。
黒木)見えて来てしまうのですね。
Yaffle)すべて勝手な想像ですけれど。自分はそうならず、常に高校生や中学生の自分が見ているという感覚は忘れないようにしたいと思っています。制作とは関係がなく、「ただ聴いている自分」を常に置いておかないと、着地させる方向だけにフォーカスしてしまう危険があるのではないかと思うのです。
黒木)「丸く収めたぞ」というような音楽にならないように、そのころの自分を忘れないぞという。
Yaffle)そうですね。あのとき感じていた自分の価値観は、意外と芯を食っているのではないかと自分でも思っているのです。何も知らない素人なのだけれど、だからこそだと思います。
黒木)自分の好きなものをつくり続けて行くという思いは変わりませんか?
Yaffle)自分が喋っていけるような環境に自分でして行く。言いわけをしてしまいそうな状況にならないように、自分で持って行くということは、常に思っておかないと、流されてしまいますから。
黒木)本当ですね。音楽をやられて10年ですか。それでそのようなことを悟られるというのは、大人でいらっしゃるのですね。
Yaffle)誰しも、このような悩みはあると思います。流れに逆らうのがいちばん疲れるではないですか。言いわけが増えて行き、袋小路に入り込んでしまう。追い込まれていってしまう。そうなってしまった曲を後から、「あのときはいろいろあってさ」というのも楽しいのですが、そうなってしまう前のところで、自分で何とかしておかないと、誰も救ってくれませんので。
Yaffle(小島裕規)/ 音楽プロデューサー・作曲家・編曲家
■東京都出身。
■大学在学中の2010年末から作曲家・編曲家としての活動をはじめ、2014年、クリエイティブカンパニー「Tokyo Recordings (現・TOKA) 」を設立。
■その感度の高いプロデュースワークで、小袋成彬、藤井 風、iri、SIRUP、SANABAGUNの高岩遼、Capeson、柴咲コウ、Adieu(上白石萌歌)らのアレンジや楽曲提供、またCM音楽のほか、映画『響』『ナラタージュ』『映画 えんとつ町のプペル』『地獄の花園』『キャラクター』などの映画音楽を制作。
■2018年からは自身のアーティスト・プロジェクトを始動。海外アーティストとのライティング・セッションで生まれた楽曲をリリース。2020年9月にはファーストアルバム『Lost,Never Gone』をリリースした。
■6月11日から公開されている菅田将暉Fukase出演の映画『キャラクター』では、主題歌「Character」を手掛けた。「ずっと真夜中でいいのに。」のACAね、ラッパーのRin音と奇跡のコラボ―レーション。作品の劇中音楽も担当されている。6月9日には映画『キャラクター』のオリジナル・サウンドトラックもリリース。
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