アフガン大使館員が退避 ~残されたアフガン人スタッフは救出しなくていいのか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年8月18日 11時30分
アフガニスタン東部ジャララバードに入った反政府勢力タリバンの戦闘員ら。
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月18日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。治安状況の悪化を受け、アフガニスタンの日本大使館職員12人が友好国の軍用機でアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに退避したというニュースについて解説した。
アフガンの日本大使館が一時閉館~大使館員はドバイに退避
外務省は8月17日、イスラム主義勢力タリバンが武力で政権を崩壊させ、混乱が広がっているアフガニスタンで、「15日をもって在アフガン日本大使館を一時閉館した」と発表した。現地に残っていた大使館員12人は17日に友好国の軍用機で出国し、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイに退避した。
条件に合わず自衛隊機を投入できない~その場所に領域国の政府の支配が及んでいること
新行市佳アナウンサー)トルコのイスタンブールに臨時事務所を設置して当座の業務を継続しており、トルコで日本人の保護などの業務に取り組むとしています。
佐々木)以前から、今回のような場合の邦人救出については問題になっていることです。2014年に一応、閣議決定で「邦人救出する場合は自衛隊機を出せます」となりました。ただし、自衛隊機を出す場合には要件がいくつかあって、領域国家、その地域を支配している国の政府の同意が必要であると。その上、自衛隊機を投入する場合に危険があってはいけないので、その場所、今回であればカブールの空港などに「領域国の政府の支配が及んでいること」が条件になっているのです。
新行)領域国の政府の支配が及んでいること。
佐々木)ですが、今回に関して言うと、「領域国って一体誰?」ということです。ガニ大統領は国外に逃げてもういない。事実上タリバンが政権を握ってしまっているので、「タリバンの同意を得て、タリバンから邦人救出って何?」という話になってしまう。今回のように内乱が起きて、しかも政権を握られてしまっている状況では、この要件は成立しなくなってしまうのです。
大使館などで働いていたアフガン人のスタッフは残されたまま
佐々木)そうすると、自衛隊機を出せないのです。今回は運よく友好国の軍用機で出国できたのですが、大使館員12人のみです。朝日新聞などの報道によると、JICAや大使館で働いていたアフガン人のスタッフの家族も含めた数百人が、現地に置き去りになっているのです。これは救出するべきだろうと思うのですが、現状の日本の法律と閣議決定ではできないのです。
新行)できないのですね。
佐々木)則を超えて救出できるようにした方がいいのではないかという議論がずっとあるのです。2014年の閣議決定の翌年、2015年にイスラム国(IS)でジャーナリストの後藤健二さんが殺害された事件がありました。あのときも「救出すべきなのではないか」という議論があった。ところがあの段階では、ISがその場所を支配してしまっていてできなかったのです。
邦人だけでなく戦場で大変な目に遭っている人たちをどう救出するか~各国と協調して取り組むべき
佐々木)シリアやイラクの権限が及ばない土地であるとなると、自衛隊機を出せない。邦人奪還に関してはずっと議論になっているし、さらに今回のように邦人だけでなく、現地で日本を助けてくれたスタッフたちを助けなければいけない。もしくは、日本と関係がなくても、大変な目に遭っている人たちがたくさんいるような戦場で、そこから非戦闘員をどう救出するのかということは、日本だけではなく、各国で協調して取り組まなくてはならない課題なわけです。
新行)各国と協調して。
佐々木)そこに「どうやって日本が参加するのか」という重要な問題にもなっているわけです。こういう話になると、必ず「軍隊を海外に送るな」とか、「軍靴の響きが」などと言う人が出て来るのだけれども、そもそも日本国憲法は前文に「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」ということが書いてあるわけで、その名誉ある地位というのは、国際秩序に日本としても参加するということだと思います。
新行)そうですね。
佐々木)決して海外に行って戦争するという意味ではなく、海外で困っている人を戦場から救出するということも当然含まれるはずです。それが「海外に軍隊を送るからダメだ」というような話で議論が終わってしまうのは、非常に残念だし、もう少し日本が海外に積極的にコミットして、国際秩序を一緒に守って行くという方向に踏み出して欲しいと思います。
バイデン政権になっても「世界の警察」から撤退せざるを得なくなって来たアメリカ
新行)各国の動きでは、マクロン大統領がフランス軍に協力したアフガニスタン人や現地のフランス国民を救出するために、軍用機2機と特殊部隊を現地に派遣したということも明らかにしています。
佐々木)今回の件にもう少し踏み込むと、そもそもアフガンからアメリカが撤退してしまった。バイデン大統領が会見して、「アメリカ人にとっては、軍隊で人が死ぬのを避けるために、撤退はやむを得ないのだ」ということを正当化しています。確かにアメリカ人にとってはそうなのです。
新行)アメリカ人にとっては。
佐々木)でもトランプ前大統領になるまでアメリカは、仮に米軍の被害が出たとしても、国際秩序を我々が守るのだと、世界の警察の役目を果たして来ました。これがトランプ政権の時代に「アメリカファースト」と言って、「やらない」と言い出した。バイデン政権になっても、オバマ時代のことをそのまま継承できなくなっているので、撤退せざるを得なくなって来た。
新行)バイデン政権でも。
佐々木)そこに中国がタリバンと手を組んで、仲よくしようという話になって来ている。国際秩序のバランスが崩れるという危険性もあり、日本としても、かなり注意しなければならない状況だと思います。
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