佐藤友祈 「東京パラ」二冠達成までの青写真と走り続けた5年間
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年8月30日 17時20分
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、東京パラリンピックの陸上競技で、金メダル2つを獲得する偉業を成し遂げた、佐藤友祈(ともき)選手にまつわるエピソードを取り上げる。
連日、日本選手のメダル獲得のニュースが続く東京2020パラリンピック。そのなかでもひときわ輝く偉業が、陸上男子車いすのクラス、400メートルと1500メートルにおける、佐藤友祈の二冠達成です。
8月27日の400メートル決勝では、この種目で大会2連覇中のレイモンド・マーティン(米国)に残り100メートルの時点で大差をつけられながら、最後のスパートで一気に抜き去る大逆転劇も大きな話題を呼びました。
そして29日、1500メートル決勝でも同じくマーティンとデッドヒート。今度はマーティンが佐藤の背後にぴたりと張り付くという逆の展開になりましたが、佐藤は焦ることなく残り100メートルを切ったところで一気にスパート。マーティンを一気に引き離し、2個目の金メダル獲得となったのです。
どちらのレースでも一騎打ちとなったマーティンとの死闘はパラリンピック史に残る名勝負でしたが、5年前の前回リオ大会では今回とはまったく逆の構図でした。佐藤は400メートルでも1500メートルでもマーティンに敗れ、銀メダルに終わっていたのです。
その差を埋め、世界一になるためには何が必要なのか? ニッポン放送のパラスポーツ応援番組「ニッポンチャレンジドアスリート」の取材・構成も担当している筆者は、昨年(2020年)6月、宿命のライバルであり絶対王者のマーティンを倒すため、リオ以降、佐藤がどんな取り組みをして来たのかを本人にインタビューしました。
佐藤の答えは、まず「リオの翌年(2017年)に行われる世界パラ陸上でマーティンにリベンジする」という短期的な目標を設定したこと。その実現のため「休むことなく走り続けた」ことでした。以下、本人のコメントです。
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「パラリンピックが終わると、通常の選手はトレーニングのトーンを落として体を休めるんですが、僕の場合はリオで負けてマーティン選手との差が明らかだったので、この差を埋めるためには残り1年もない期間で調整する必要がありました。パラリンピックが終わってからすぐに練習を再開して、一度も落とすことなく上げて行ったというのが結果を出せた要因ですね」
(2020年6月放送「ニッポンチャレンジドアスリート」より 佐藤コメント)
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この計画どおり、佐藤は2017年の世界パラ陸上400メートル、1500メートルで、ついにマーティンに勝利、金メダルを獲得しました。リオのリベンジを果たすとともに、確かな自信をつかみます。
佐藤の非凡な点は、この「世界一」で満足せず、次なる高い目標を設定してさらに走り続けたことです。それは「世界新記録」でした。
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「マーティン選手が当時の世界記録を持っていたので、まずその記録を抜けなければ東京パラで金メダルを獲ることはできないだろうと考えていました。だから、2018年には1回世界記録を出して『これくらい走れるようになっているんだ』というのを示して、2019年の世界パラ陸上で優勝して、2020年に向けて弾みをつけて行こうと」
(2020年6月放送「ニッポンチャレンジドアスリート」より 佐藤コメント)
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この青写真に沿って、佐藤は2018年7月、両種目で実際に世界新記録を樹立してみせました。しかし、これほどまでに計画的で、そのための努力を惜しまない佐藤にとっても、予想だにしなかったのが新型コロナウイルスによるパラリンピックの1年延期でした。
筆者が佐藤にインタビューした2020年6月は、初めて全国に発令された緊急事態宣言が、ようやく解除された直後でした。普段は岡山を拠点に活動している佐藤ですが、当時はいつも使用している陸上競技場も使えないという厳しい状況だったのです。
それでも佐藤は、1年後(2021年)のパラリンピックに向けて走り続けました。陸上競技場は使えなくても、ロードであればトレーニングを続けられると、いまできることを明確に見定め、今年のパラリンピック本番につなげたのです。
常に目指すべき目標を定め、そのゴールに向かってやるべきことを愚直に続けることができる佐藤。「アスリートとしての将来の夢は?」という問いに、こう答えてくれました。
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「あんまり理想のアスリート像みたいなものがなくて。好きだから競技を続けているし、好きだからパラリンピックをどんどん狙ってメダルを獲って行きたいなと思っているので。僕にしかなれないというか、僕だからできることを突き詰められるような競技者になって行きたいと思います」
(2020年6月放送「ニッポンチャレンジドアスリート」より 佐藤コメント)
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この言葉どおり「僕だからできること」を突き詰め、悲願を達成した佐藤。これからは多くのパラアスリートが、「佐藤友祈」という選手を理想のアスリート像として追いかけて行くことでしょう。
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