各論ばかりで、リーダーに問われる「国家観」の議論がない ~自民党総裁選に向け公開討論会開催
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年9月21日 11時30分
インターネット動画中継サイト「ニコニコ動画」主催の自民党総裁選候補者による討論会を終え、ポーズをとる(左から)河野行革相、岸田前政調会長、高市前総務相、野田幹事長代行=18日午後、東京・銀座
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月21日放送)にジャーナリストの有本香が出演。自民党総裁選挙について解説した。
自民党総裁選に向け、公開討論会が開催
自民党総裁選挙に向けた、党の青年局と女性局が主催する公開討論会が9月20日に開かれ、河野規制改革担当大臣、岸田前政務調査会長、高市前総務大臣、野田幹事長代行の4人の候補者が出席し、憲法改正や拉致問題、選挙改革などについて激論を交わした。総裁選の投開票は29日に行われる。
飯田)あと1週間あまりです。
有本)全国の党員の方々には、先週末にもう投票用紙が配られましたから、投函されたという方もかなりいらっしゃると思います。党員の方は待っているでしょうからね。
飯田)決めていらっしゃる方もいれば、それ以外の方もいると。
有本)そうですね。
飯田)週末は討論会が行われました。久しぶりに「政策の議論を見たな」という感じがします。
外交や安全保障に関する緊張感のある議論を聞きたかった
有本)そうですね。もちろん年金などが大事ではないとは言いませんけれど、不満なのは、例えば外交や安全保障に関して、これだけ日本の周りが緊張して来ている、世界が激動して来ている。それなのに、記者クラブでやったものにしても、もっと緊張感のある議論が聞きたかったですね。時間的にも長くやるべきだったと思います。
飯田)時間的にも。
有本)日本に関して言うのならば、長年大きな課題としてありながら、まったく解決できていない、北朝鮮の拉致問題。しかも総裁選の最中に、北朝鮮がミサイルを撃って来ています。
飯田)そうですね。
有本)EEZ内に着弾しているわけでしょう。その緊張感は残念ながら「なかったな」と思いますね。
各論に入る前に、「日本はどうするのか」という大きな話をするべき
飯田)かなり細かいところに入っている。
有本)各論に入り過ぎなのですよ。
飯田)敵基地攻撃能力に対して「イエスかノーか」というような。
有本)それを最初から明確に言っている高市さんと、若干茶化す河野さんというような感じでね。そういう話ではなくて、「日本は大筋としてどうするのだ」ということを、もっと真剣に話し合って欲しかったですね。論戦というものを期待したのですけれど。あの建て付けでは、なかなか火花散る論戦にはなりにくいのかも知れませんが。
飯田)日本をどう守るかについても、日米同盟をどう位置付けて、アメリカのミサイル等々も入れるような抑止力を保つのか、日本独自に何ができるのかというように、各論へ入る前に全体論を話してからでないとわからない。
有本)大きな話をね。ミサイル防衛に関しても、河野さんは当事者としてイージス・アショアを止めたということがありました。
飯田)そうでしたね。
有本)しかし2年くらい前に、アメリカがアジアのどこかに中距離ミサイルを配備すると言っていました。
飯田)ありました。
有本)では、日本としてはどうするのだという話で、「いりますか、いりませんか」、「あなたはいりますね」「はい、この人はいりません」というようなことを言っているのだけれど、そういう話ではありません。北朝鮮のミサイル技術が飛躍的に上がっている。中国はもともと日本が射程に入るようなミサイルをたくさん持っています。
飯田)核弾頭も入れられる。
有本)ロシアも極東地域に、ミサイルをもっと置こうという方向に来ているわけです。日本はさまざまな地域から向けられているミサイルの脅威に対して、全体としてどのように向かうのかと。大枠としては日米同盟があるわけだけれど、「ではアメリカのミサイルを日本に置いてもらいましょうね」となっても、それで「はい、おしまい」という話ではないですからね。さまざまなミサイルの種類もあるし、最近、韓国が新しいタイプのミサイルの実験をやったでしょう。
飯田)潜水艦から発射する形の。
有本)あれは非常に高度なものですよね。あのような技術についても、日本はどう考えているのか。これは各論ですけれども、全体像として、日本を周辺国のミサイルの脅威からどのように守るのかという、上の方の議論がない。それで、「このミサイルはいりますか、いりませんか」という話になっているのは、違うのではないかなと思いますよね。
リーダーとして国家観が問われる ~各論ばかりで上の議論がない
飯田)まさに上の方の議論というのが、国家観であったりとか。
有本)むしろ、それが国家観なのですよね。
飯田)リーダーとして問われるところ。
有本)そうですね。
飯田)各論は各大臣に任せれば、官僚に任せればいいかも知れない。
有本)極論すればそうですよね。国家観というのはいろいろな言い方がありますけれども、歴史や国柄という部分もあれば、これから先、日本はどのように存続して行くのだということもある。
飯田)それは経済力もあるし、軍事的な抑止力もあるし。
大きな戦略が話し合いに登場しない
有本)抑止をどう定義するのですか、と。「ミサイル防衛」と言うけれど、抑止をするのか、それとも防衛システムに頼って行くのか。何に重点を置いて行くのですか、という方向性や大きな戦略などが、全然話し合いに登場しないという感じを受けました。非常に残念だなと思います。日本人の苦手な議論かも知れません。
飯田)質問する方も、そういう質問を投げない。
有本)投げかけないから、議論の仕立てもそうなっていないですしね。これはあらゆる面で言えて、年金だってそうなのです。皆さんよくご存知で、いろいろな知識を披歴されるのだけれど、残念ながら「ではどうするのですか」となったときに、ほとんど止まってしまうという感じですよね。
飯田)Aだとこういうリスクがある、Bだとこういうリスクがある、Cだとこういうリスクがあるから、話し合わないといけませんね、というような。
有本)「検討しましょう」という話になってしまうでしょう。
「子どもをセンターに」とは何なのか、深堀りして欲しい
飯田)女性候補の2人、高市さんと野田さんの方が、腹が据わった感じで「私はこうします」と言っている。「北朝鮮に乗り込んで行きます」というように高市さんがおっしゃったり。
有本)実は意外と慎重な言い回しで、「乗り込むくらいの気持ちで」という感じで言っていましたけれどね。
飯田)気持ちか。
有本)私もそう思ったのですよ。野田さんは少し準備不足という感じはするのですが、他の男性2人は何かと言うと、全部最後が「検討します」とか、「議論しなくてはいけない」という話になる。そこを、「私はこうします」「私はいままでこういうことをやって来たのだけれども、こうすべきだ」と言っているのは、腹が据わっている。個人的には野田さんの政策に対して共感するところは少ないのですが、彼女が繰り返し言っている、「日本は子どもが70万人しか生まれない国になってしまっている」というところ。
飯田)80万人を今年(2021年)は割るのではないか、と。
有本)かつては270万人生まれていたのが、80万人を割るのではないかと。
飯田)昭和24年ですか。
有本)それがもう70万人になってしまっているのですよ、と。この危機感は、国防に対しての認識がないのと、ある意味で同等くらいの危機感を本来持たないといけないことだと思います。そこは正鵠を射た指摘だと思うのだけれど、具体策が「ヤワッ」としていて、「子どもをセンターに置く」「子どもに投資して行く」などと抽象的なのです。問題意識としては正しいわけだから、そこをもう少し深堀りして欲しいですね。あるいは「子どもをセンターに」とは何なのか、細かい各論ではなくて、「日本はこうすれば子どもが増えるのだ」と、思い切って「ドン」と言って欲しいですね。例えばお金をそこに付けると言っても、どうやって付けるのか。
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