「デジタルの基軸通貨を中国がつくる」という脅威 ~デジタル人民元
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年9月27日 17時35分
17日、SCO・CSTO加盟国首脳によるアフガニスタン問題合同サミットに出席した習近平氏。中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席は17日、上海協力機構(SCO)・集団安全保障条約機構(CSTO)加盟国首脳によるアフガニスタン問題合同サミットに北京からオンライン方式で出席し、重要演説を行った。(北京=新華社記者/黄敬文)= 配信日: 2021(令和3)年9月18日、クレジット:新華社/共同通信イメージズ
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月27日放送)にジャーナリストの末延吉正が出演。中国人民銀行が9月24日、ビットコインなどの「暗号資産」の関連事業を全面的に禁止すると発表したニュースについて解説した。
デジタル人民元
中国は9月24日、ビットコインなどの暗号資産について、経済の秩序を混乱させ、犯罪の温床にもなっているとして、関連サービスを全面的に禁止すると発表した。中国は2022年にも電子通貨の「デジタル人民元」を正式に発行する見通しで、政府の管理が届かない民間の暗号資産を締め出す狙いがあるとみられる。
飯田)これを受けて、いわゆる暗号通貨と呼ばれるものが大暴落し、一旦、値を下げたという話もありました。中国はこういうことをやって来ますね。
デジタルでの個人認証が進んでいる中国~プライバシーもすべて見られている
末延)ビットコインは詐欺や犯罪の温床になるので、それはそれで何らかの規制が必要だったのだけれど、怖いのは中国なのです。中国ではデジタル化が進んでいます。デジタルでの個人認証があるでしょう。無人のコンビニが最初に中国でできたではないですか。
飯田)そうですね。
末延)犯罪もすぐ捕捉できるけれど、逆に言うと、全部見られているわけです。
飯田)プライバシーも何もかも。
末延)人民元が初めてデジタル通貨として出て来るということは、いまアメリカと日本がクアッドなどで、中国包囲網をつくっているでしょう。いま経済はドル基軸ではないですか。
デジタルの基軸通貨を中国がつくると脅威になる
末延)これからデジタル化が進んで行くなかで、どこがいちばん先にデジタル世界の基軸通貨をつくるか。これを人民元にする実験を、2022年2月の北京オリンピックで大々的にやると。中国はまた仕掛けて来ているわけです。
飯田)北京冬季五輪で。
末延)これに対して、先につくってしまうと、そこの経済圏ができてしまうわけです。デジタル化ですから。日本はその部分が遅れているので、このニュースはすごく重要で、中国がここも抑えてしまうと非常にまずいことになるのです。いろいろなサプライチェーンから始まり、クアッドをやっているのだけれども、問題はデジタルの基軸通貨を中国がつくると、やはり強くなってしまう。これは脅威ですよ。
中国がデジタル通貨の基準をデジタル人民元で広げる危険が
飯田)基軸通貨として、原油もすべてドルで決済している。そこはやはりアメリカの強みの源泉ですか?
末延)それはそうですよ。ドルが基軸になって、どちらかと言うと、人民元は下駄を履かせた状態で来ている。しかもまだ中国の情報がオープンになっていないということは、世界経済全体のリスクでもあるわけです。情報公開をしない独裁体制の中国が、デジタル通貨の基軸を、自分たちのデジタル人民元で広げて行く。例えばASEANの国が寄って行くという形なると、ものすごいパワーになります。
飯田)ASEANの国が。
末延)日本の関係者なども、わかっている人は「まずい」と思っていますよ。ただ、経済界のなかを見ても、「とりあえず中国は商売が早いから」とまだ言っている人がいるけれど、それはどうなのかなと。やはり情報が公開されないと、本当のマーケットは成立しません。ある意味では国家資本主義でしょう。政治はあのまま独裁体制で、そういうところがイニシアティブを取るというのは、改めて言いますが、危険だと思います。
飯田)このニュースについてスタッフと打ち合わせをしていて、スタッフが素朴に言っていたのが、「いきなり政府の意向で“銀行口座のお金は全部ゼロ”のようなことをされてしまうということ?」と言っていましたが、「おお」と思いました。
末延)何でもありになってしまうのですよ。そこが怖いわけです。中国は政府が全部コントロールできる社会です。一般の人々が経済を動かしているシステムや、民間が政府をウォッチするということができませんから、恐ろしい話です。
「デジタル社会がどうなって行くのか」ということを日本はもっと考えなくてはいけない
飯田)いまはドル基軸で、「何かあったらドルを使えなくしてしまうよ」というところで制裁が効くという話がありましたが。
末延)そうです。
飯田)それが人民元になるかも知れない。
末延)いままさに米中が対立するなかで、通貨の話がデジタルのなかに出て来たということは、来るべきものが来ているということです。「デジタル社会がどうなって行くのか」ということを、もっと我々は興味を持って話さなければいけないと思います。
飯田)かつて、アジア通貨危機があった時代や、もっと前の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代に、「円を地域的に流通させる通貨にしよう」という構想が言われていた時期がありました。しかし、アメリカが絶対に許さなかった。
末延)そういうものは許さないわけです。軍事と基軸通貨の話は、「誰が世界を動かすか、世界のスタンダードになるか」という話ですから、非常に重要なのです。
アメリカが中国包囲網をつくる理由
飯田)重要ですし、センシティブだし、こうやって中国が掲げるということは、アメリカも相当動きますか?
末延)5Gも含め、デジタルの世界では、皆さんが思っているより何倍も中国が前に出ている。アメリカはそれに気が付いたから、ヨーロッパや日本、インドを入れて包囲し、中国だけにリードさせない方向に動き始めているのです。
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