自民党総裁選、影の主役は安倍元総理だった ~カギを握った“隠れ岸田派”
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年10月7日 12時5分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月30日放送)に朝日新聞編集委員で元北京・ワシントン特派員の峯村健司が出演。岸田氏が新総裁に選出された自民党総裁選について解説した。
自民党総裁選~岸田氏が決選投票で新総裁に選出
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飯田)決選投票の結果、新総裁に選出された直後の岸田文雄さんの演説の模様をお聴きいただきました。第1回投票で岸田さんが1位、河野さんが2位ということになり、決選投票の形になりました。「第1回投票では、河野さんがかなり離して1位なのではないか」というような下馬評でした。
峯村)そうでしたね。「2位・3位連合」などと言われていましたけれども。結果としては岸田さんがトップだったことが重要です。2日前くらいにいろいろな状況が動いたようです。
第1回投票で「隠れ岸田票」が河野氏から流れた
峯村)河野陣営としては前日の夜、議員票が120くらい行くのではないかと読んでいたという話を聞いたのですが、蓋を開けたら86票だった。
飯田)第1回投票で。
峯村)何人かの国会議員が自分の次期選挙のことを考えて、表向きでは人気の高い河野さんに「投票します」と公言していたけれども、やはり本心は「岸田さんの方がいい」という方が何人かいらっしゃると聞きました。たぶんその票が動いたようです。
飯田)“隠れ岸田”のような人がいたわけですか。
峯村)“隠れ岸田”の存在が河野さんの議員票が予想より伸びなかった要因の一つです。
キャスティングボートを握ったのは二階派~高市氏から岸田氏に票が流れた
飯田)その部分が岸田さんに流れていた。岸田さんは第1回で国会議員票が146票でした。派閥のグリップが弱いということも言われていましたが、固まった票も行ったし、隠れ岸田も多かったということですか?
峯村)高市さんの票の一部も岸田さんに流れています。キャスティングボートを握ったのは二階派だったのではないかと見ています。一時期、いろいろな噂があって、「二階派が全員高市さんに流れて、1回目の投票で2位になるのではないか」という話も出ていたのですが、結果としてはそうはならずに、自主投票という形になった。高市陣営としては120票くらい行くのではないかと読んでいたのが、実際は114票で少し減っているということを考えると、一部が岸田さんに流れて146票になったのではないかというのが、私の読みです。
飯田)直前にいろいろな噂が乱れ飛ぶなかで、「二階派が岸田潰しに動いている。自主投票はブラフだったのだ」というような話が噂として出ていました。
今回の結果は「派閥政治の1つの終わり」を表している
峯村)今回、初めて自民党総裁選を現場で見ることができました。いままでは海外の取材ばかりしていたので、興味があっていろいろ取材しました。多くの情報戦、心理戦があり、それに選挙を控えた、特に3回生以下の議員の人たちが右往左往している姿を興味深く観察しました。
飯田)福田達夫さんなどが「派閥の縛りは嫌だ」と言って、「党風一新の会」をつくりました。
峯村)今回、派閥に統制が効かなくなったということが言われていますが、ある種の派閥政治の限界が見えたように思います。実際、派閥として、しっかりまとまって同じ人に投票したのは、岸田派くらいしかないです。
飯田)岸田派は自分のところでトップを担いでいるのだから、ということですよね。
峯村)それで言うと、肝心の河野さんのいた麻生派も分かれていますし、かなり分裂している状況だったので、そういう意味では、「派閥政治の1つの終わり」ではないかと見ています。
飯田)派閥政治の1つの終わり。
峯村)いままでなぜ派閥が強かったかと言うと、派閥の長がいて、選挙のときにはお金や人事などを分配することで権力を集約してきました。それが、政治助成金を導入したことで、党が一括してお金の管理をするようになった時点で、少しずつ派閥トップの力が弱まって来たということを考えると、必然的な流れなのかなと思います。
安倍氏の影響力が誇示された選挙だった
飯田)「いまは派閥というものがお金やポストではなく、政策を議論する場なのだ」ということを言う議員の方もいらっしゃいますけれども、本当にそうなって来ているということですか?
峯村)そうですね。今回も「お金が飛び交うのではないか」という噂がありましたが、そのようには見えないですよね。衆議院選挙があり、そして参議院選挙も来年(2022年)に控えているので、「選挙では自分にとってどの首相が有利か」というところが大きかったのかなという気はします。
飯田)その辺りを見ると、「やはり河野さんしかないだろう」という意見もあったのですが、当事者である選挙を戦う人たちは、違う方を選んだということですね。
峯村)そうではない方を選んだということになります。今回いろいろな話を聞いたところ、安倍前総理の力がまだまだ強かったという気がします。高市さんが出馬た際、「泡沫候補に近い」と言う人もいました。ところが、安倍前総理がツイートしたら一気に伸びたという感じでしたよね。
飯田)支持しますよと。
峯村)松下政経塾ご出身の方なので、演説も上手ですし、回を重ねるごとに安定感も増して来たように感じました。安倍さんが高市さんにいろいろと指導をしていた影響があったのではないかと思います。一方の岸田さん自身も安倍さんとは当選同期ですし、2人とも安倍さんに関係が近いと考えると、安倍さんの影響力が誇示された選挙だったとも言えると思います。
第1回投票の「1票差での勝利」が示すもの
飯田)第1回投票で岸田さんが2位だったら、2位・3位連合で「民意も反映しないではないか」ということになりますが、1票差で1位を獲った。
峯村)1票差というのは、痺れましたよね。「2位・3位連合」というのは、民意というか、党員の意見も踏みにじる結果になります。それこそ派閥政治と言われても仕方がないと思うのですが、「1位・3位連合」であれば、そんなことにはならない。
飯田)順当ということになります。
峯村)しかもそれが1票差というのは、重い。逆に言うと、岸田さんとしても「決してあなたにすべて委ねたわけではないよ」という結果でもあります。選挙やコロナ対策も含めて、外交、安保、経済の辺りは早めに動き、権力の空白で失った時間を埋めていただきたいと思います。
飯田)岸田さん自身も「私は話を聞くのが得意だ」とおっしゃっています。
峯村)広島支局に勤めていたときに、岸田さんにお会いしたことがありますが、確かに人の声に耳を傾ける真面目な方だという印象があります。
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