中国の人権問題 ~日本からも明確なメッセージを出すべき
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年10月12日 17時55分
写真説明 2021年3月7日 cns2021-03-07-02 習主席、政協会議の医薬衛生・教育両界委員を慰労 習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は6日、中国人民政治協商会議(政協)第13期全国委員会第4回会議に出席している医薬品・医療衛生界、教育界の委員を訪ねて意見や提案を聞いた。〔新華社=中国通信〕
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月12日放送)にジャーナリストの有本香が出演。中国でのノーベル平和賞の報道規制について解説した。
中国でノーベル平和賞の報道を規制か
2021年のノーベル平和賞の受賞者が10月8日に発表され、独裁的な政権に立ち向かうフィリピンとロシアのジャーナリスト2人が選ばれた。中国ではノーベル賞に対して関心が高く、連日速報で伝えていたが、平和賞に関する記事を削除するなどしている。中国政府が報道を規制した可能性がある。
飯田)それどころか、民間が報道に参入するのも規制するなどということを言っています。
中国国内の人権状況の改善に力を尽くした人は受賞に至らなかった
有本)中国の報道に規制があるというのは、いまに始まった話でもないので、驚くことではありません。しかし、残念だなと思うのは、ノーベル平和賞に今回もノミネートされ、中国政府からさまざまな不当な弾圧を受けながらも、中国国内の人権状況の改善に力を尽くした人が結局、受賞に至らなかった。これは残念ですね。
飯田)人権を守ろうとして、活動している弁護士の方々も多数拘束されているという話が出ていますし。
有本)ウイグル人の知識人など、そういう方々の受賞も期待されたのですが、「中国に正面から喧嘩を売るのは避けているのかな」と邪推したくもなります。
飯田)日本の報道機関のインタビューなどでも、ノルウェーのノーベル委員会は、「特定の国を意識したものではない」と。
有本)言っていますけれどもね。
政治的なメッセージを配慮するノーベル賞 ~かつてはさまざまな問題を啓発して来たが
有本)常に言われることですけれども、ノーベル平和賞は、極めて政治的なものなのです。その政治的なものが、どういう方向で政治的メッセージや配慮をするのかというところです。中国の人権状況が悪くなっているにもかかわらず、その人権を守ろうとしている人が受賞しない。かつてのノーベル平和賞の方が、その辺りに対して批判的なメッセージを出していたと思います。
飯田)10年ほど前、2010年ごろでしたか、民主化と基本的人権を求める活動をしていた劉暁波さんが受賞しました。
有本)さらに歴史を遡れば、中国に侵略されて亡命を余儀なくされた、ダライ・ラマ法王14世がノーベル平和賞を受賞したこともありました。世界に対して、中国国内のさまざまな問題を啓発して来たノーベル平和賞なのですが、最近はその動きが鈍化して来ているのではないかなという気もします。
日本は中国とどう向き合うのか
有本)一方、中国国内でさらに報道の規制が厳しくなるということを考えると、今後、「日本は中国とどう向き合うのか」ということが大事になって来ます。岸田総理が就任早々、習近平国家主席と電話会談をした。「共通の課題については一緒に取り組もう」ということで合意したと。「何それ?」という感じです。
飯田)共通の課題、その具体例は特に報道されていません。
有本)間もなく北京で冬季オリンピックがあります。これについて、やはり政治的なボイコットを考えるべき時期だと思います。
飯田)アメリカでは、特に下院のペロシ議長が「外交的ボイコット」を呼びかけています。
有本)外交的ボイコットは、日本にとっても必要な選択肢です。そういうことが話題として聞こえて来ない。それから、いま国会が開かれていますけれども、14日にはもう解散です。中国の人権問題に対する非難決議はどうするのですか。
飯田)前の国会で棚上げになったままです。
有本)臨時国会の冒頭でやる、やらないという話もありましたけれども、「どうなっているの?」という感じです。議員方も、もう「選挙だ、選挙モードだ」などと言っていますが、「何か1つ忘れてはいませんか」と思います。戻って来たらやるのでしょうか?
飯田)そういうことになるのですかね。この問題に関しては野党とも既に話はできていて、あとは与党内だけという状態でした。
中国の人権問題へのメッセージが聞こえて来ない
有本)それを止めた自民党の幹事長室も体制が変わったわけです。岸田総理には、あの幹事長室の体制、つまり二階さんの体制を崩したということだけでも、大いに敬意を表したいと思っています。それなのに、その岸田総理・総裁の体制になっても、まだ中国に対してはっきりとしないということでは、困るわけです。
飯田)経済安全保障に関しては明快に、「対中国」ということは出ていますが。
有本)甘利幹事長もはっきりとおっしゃっているから、その分野は期待できるかなと思いますが、人権問題は価値観の問題なので、敢えて言うならば、経済よりも先にそれがあるべきです。本来は「日本は何を理想としているのか、どこへ向かおうとしているのか」という話があって、初めて経済安全保障ですから。そこに関してのメッセージがあまりにも聞こえて来ない。
飯田)しかも人権の部分は、アメリカやヨーロッパも非常に注目しているし、ドイツも政権が変わって左派的な政権になれば、ますます注目される問題になります。
有本)ドイツももちろんですが、いまフランスも相当大きく変わっていて、議員外交ですが、台湾との外交関係を結び直そうという動きがあります。
飯田)有力な上院議員が蔡英文さんと会っています。
有本)これは価値観を再確認しようということと同時に、やはり中国を抑え込まなくてはいけないと。それは一国では無理な話なので、「みんなで協調・連帯してやって行きましょう」ということです。ヨーロッパ各国が揃って軍艦を東アジアに向けて来るというのも、結局は対中国ということです。それについて、日本から明確なメッセージが出ないというのは、本当に残念だと言わざるを得ません。
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