立浪和義氏が中日新監督就任へ 入閣が検討される中村紀洋との“意外な関係”
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年10月15日 17時20分
【PL学園野球部OB会】囲み取材に応じる立浪和義氏=大阪市内のホテル
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、10月12日、中日ドラゴンズが次期監督就任を要請したと発表したOB・立浪和義氏にまつわるエピソードを取り上げる。
ミスター・ドラゴンズが、13年ぶりにチームへ戻って来ます。シーズン終了前に、新体制構築に向けて舵を切った中日ドラゴンズ。14日現在、12球団トップのチーム防御率3.21を誇りながら、チーム打率はセ・リーグ最低の2割3分8厘に沈んでいます。
またチーム総得点は、セの他5球団がすべて500点台に乗せているのに、中日だけが393点と100点以上の差を付けられています(14日現在)。これだけ得点力が低くては、いくら投手力がよくても勝てません。
14日現在、53勝68敗17分、借金15で、首位ヤクルトから19ゲーム差の5位。DeNAに1ゲーム差に迫られ、最下位転落もあり得る状況です。球団が全日程終了を待たず、ドラフト会議の翌日(12日)に「来季は立浪監督」と発表したのは、改革路線を明確にして、ファン離れを何とかして食い止めたい、という危機感もあってのことでしょう、
2009年に引退後、候補として何度も名前が浮上しながら、なぜか監督の声が掛からなかった立浪氏。現役時代はプロ野球歴代8位の通算2480安打を放っており、通算二塁打487本は歴代1位。解説でもよく、独自のバッティング理論を語っています。
コーチ経験こそありませんが、今年(2021年)春のキャンプで中日の臨時コーチを務め、根尾昂選手ら期待の若手にも熱心に打撃指導を行いました。打線のテコ入れが急務のいま、球団首脳も、チームを託すなら立浪氏しかいない、という判断に至ったのでしょう。
立浪氏も、正式な回答はシーズン終了後と前置きした上で、中日の親会社発行・中日スポーツ紙のインタビューにこう語っています。
「現役を引退するとき、いやその前からいつかはドラゴンズの監督をやりたいというのが私の目標であり、夢でした。正直、ここまで空くと『もうないのかも』と思ったことがあります。でも、期待してくださる方がいたからこそ、頑張れた、我慢しようと思えたんです。『次は頼むぞ』という方がいらっしゃる限りは、しっかり野球を勉強しようとやってきたつもりです」
~『中日スポーツ』10月13日配信記事 より(立浪氏のコメント)
まさに「大願成就」。意欲のほどが窺えます。とは言え、打席に立つのはあくまで選手であり、監督は投手陣も含め、チーム全体のことを考えるのが仕事。補佐役の打撃コーチに誰を招聘するのかが注目されます。
各紙の報道によると、監督就任発表は10月末になる見込みで、その際に新コーチ人事も一斉に発表する模様です。現状、立浪氏とPL学園で同期生だった盟友・片岡篤史氏(元・阪神ヘッドコーチ)の入閣が確実視されていますが、違った角度で打撃指導ができるコーチや、若手育成を託せるコーチも必要。そこで急浮上しているのが、中日OBの中村紀洋氏と、森野将彦氏です。
「ノリ」の愛称で親しまれた中村氏は、近鉄時代の2000年、本塁打・打点の二冠王に輝き、2001年も2年連続で打点王を獲得。この年のリーグ優勝にも貢献しました。その後、メジャー移籍を経て、2006年に帰国しオリックスでプレー。ところが、シーズン中の故障を公傷と認めるかどうかで契約が折り合わず、1年で退団。この経緯から他球団は契約に二の足を踏み、中村氏は行き場をなくしてしまいました。
その中村氏を拾ったのが、落合博満監督率いる中日でした。「テスト生でいいなら来るか?」と落合監督が声を掛け、2007年、中村氏は中日の春季キャンプにテスト参加。まずは育成選手として契約し、開幕直前、支配下選手に昇格。サードのレギュラーに定着し、この年、53年ぶりの日本一に貢献しました。
翌2008年オフ、中村氏は楽天にFA移籍したため、立浪氏と一緒にプレーしたのは2年間だけでしたが、実は2人の間にはこんな出来事がありました。以下、立浪氏の著書『負けん気』(2010年/文芸社刊)からの引用です。
『キャンプに合流してすぐ、中村紀洋は私の部屋に真っ先にあいさつに来てくれた。その頭はサッパリと丸刈りになっていて、気合いが入っていることは伝わってきた。ノリとはオールスターなどの行事のときにしか話したことはなかったが、こうやって私を最初に訪ねてくれたら、ちゃんと面倒をみなくちゃいけない、やりやすい環境も作ってあげたいと思うのは自然な感情だった』
~立浪和義著『負けん気』より
当時、立浪氏はサードのレギュラーを剥奪され、代打の切り札としてプレーしていました。立浪氏はレギュラー復帰を目指していましたが、ポジションがかぶる中村氏の入団は、その可能性がほぼ消滅したことを意味します。このとき「代打に専念しよう」と決意したという立浪氏。
そしてこのエピソードは、立浪氏が礼節を重んじるタイプであることを示しています。同じ大阪出身ということもあり、「男気」で意気投合した立浪氏と中村氏。中村氏は現在、中学・高校野球の指導者ですが、アマ指導で得た経験をどう活かすのか、復帰が実現したら注目です。
もう1人、候補に浮上している森野将彦氏は、伝説の「落合ノック」に耐え、立浪氏からサードのレギュラーを奪った選手でもあります。2007年、中村氏の入団でレフトへコンバート。それが内外野どこでも守れるユーティリティプレーヤーとして活躍するきっかけになりました。
また勝負強いバッティングでも鳴らし、走者を2人置いた場面での本塁打が多かったことから「ミスター3ラン」の異名を取ったことも。引退後、2018年から2年間、2軍打撃コーチを務めました。レギュラーを狙う若手を指導するにはうってつけの人材です。
入団以来、ずっとレギュラーの座を保証されていた立浪氏にとって、年下の森野氏は、初めて真剣にポジション争いをした「元ライバル」でもあります。自分からサードの定位置をもぎ取った「負けん気」こそ、いまのドラゴンズの若手たちに必要なもの……森野氏の名前が浮上しているのは、そんな背景もあるのかも知れません。
上記3コーチの招聘が実現すれば、PL学園時代の盟友と、ドラゴンズの歴代サードでつくる新体制が完成。ファームには将来、サードのレギュラーを期待されている、2019年ドラフト1位の大器・石川昂弥がいます。
3年目の来シーズンは、高橋周平に勝ってサードの定位置を奪うつもりでプレーして欲しいところ。中村氏・森野氏はいい相談相手となるでしょう。早くも競争原理の導入を口にしている立浪氏がどうチームを立て直して行くのか、その手腕に注目です。
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