野口啓代、クライミング「スピード」は東京五輪が決まってから取り組んだ
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年12月25日 11時45分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(12月15日放送)にプロフリークライマーの野口啓代が出演。クライミング3種目と東京オリンピックまでの練習について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。12月13日(月)~11月17日(金)のゲストはプロフリークライマーの野口啓代。3日目は、クライミングにおけるスピード、ボルダリング、リードという3つの種目、そして東京オリンピックに向けての当時の練習について—
黒木)クライミングには、スピード、ボルダリング、リードという3種目があるのですが、これについて野口さんから少し教えていただけますか?
野口)今回の東京オリンピックではスピード、ボルダリング、リードという3種目を1人の選手が登って、その合計点で争うというルールでした。この3種目のなかでスピードだけが世界共通の課題が存在していました。高さが15メートルぐらいの課題なのですが、どこの国に行っても同じ課題を「ただ早く登る」というものです。
黒木)15メートルですか。
野口)世界記録は男性で5秒、女性だと7秒弱ぐらいなのですが、15メートルを何秒で登れるかを競うのがスピード種目です。ボルダリングとリードでは高さが異なります。ボルダリングの壁はリードより3~4メートル低いもので、リード種目での壁は15メートル~20メートルほどの高のあるもので、この2種目は毎回、課題が変わります。大会のために課題が用意されていて、自分に与えられた5分間で1つの課題を登れるのか、登れないのか、どこまで行けたのかという高度を競うのがボルダリングとリードという競技になります。
黒木)この3つともやらなければならないのですか?
野口)そうですね。3種目やっていたのですが、それぞれ必要な要素が違います。得意な種目を伸ばしつつ、苦手を埋めるということが難しかったです。
黒木)野口さんは何が得意だったのですか?
野口)私はボルダリングが得意で、ワールドカップで21勝したのも、すべてボルダリングのワールドカップなのです。リードのワールドカップでは、2位が最高で優勝したことがありませんが、このボルダリングとリードが私は得意で、スピードはこれまでやったことがなく、東京オリンピックが決まってからやり始めた種目です。
黒木)スピードはやられていなかったのですね。
野口)スピードはトレーニングの方法も異なり、ボルダリングとは必要な要素が違うので、難しいです。
黒木)オリンピックに備えては、どのような練習をされたのですか?
野口)オリンピックに向けてスピードを練習し始めたのは2016年です。5年ほどやったのですが、まずは課題を見なくても登れるようにする、動きを覚えるところから始まりました。スピードが最も下半身や全体の筋力が必要なので、そのために筋力を鍛えるトレーニングや走り込みなど、主に下半身の強化をしました。
黒木)筋力を鍛える。
野口)スピードの選手は、スピードの課題か筋トレしかしないのです。私もスピードの選手を見習って、筋トレをし、スピードの課題をたくさん練習してタイムを縮めて行きました。
黒木)大変な練習だったと思いますが、東京オリンピックが1年延期したことによって、心境に変化などはありましたか?
野口)私はクライミングを好きで始めて、競技も好きでしたし、競技生活自体がすごく好きでした。東京オリンピックまでやったら。そのあとは引退することは決めていましたが、「続けたい」という気持ちもあったので、1年の延期を聞いたときは、「もう1年競技ができる、もう1年オリンピックに向けて準備ができる」と、ポジティヴに捉えられました。最後の1年はコロナ禍ではありましたが、充実した、クライミングと向き合う時間が取れたのではないかなと思います。
黒木)ずっと練習されていたのですか?
野口)ずっと練習していました。2020年は国際大会もなかったので、3種目の練習やオリンピックのシミュレーションをしていました。
黒木)モチベーションは?
野口)モチベーションがなくなることはありませんでした。
黒木)なくなることはない?
野口)なかったですね。練習が好きでしたし、クライミングは登っているだけで楽しいので、きついなというよりは「強くなりたい、登りたい」という気持ちの方が上回っていました。
野口啓代(のぐち・あきよ) / プロフリークライマー
■1989年・茨城県生まれ。
■小学5年生の時に家族旅行先のグアムでフリークライミングに出会う。
■クライミングを始めて・わずか1年、小学6年生の時に全日本ユース制覇。
■その後、数々の国内外の大会で輝かしい成績を残し、2008年には日本人としてボルダリング・ワールドカップで初優勝。2009年には年間総合優勝。以降、4度の年間総合優勝の栄誉に輝く。ワールドカップ優勝は通算21勝を数え、「クライミング界の女王」と呼ばれる。
■2019年・世界選手権で2位となり、東京2020の代表に内定。
■競技人生の最後の舞台となった東京2020大会では銅メダルを獲得。現役引退を発表し、現在はクライミングの普及のため・様々な活動に尽力。
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