東京都医師会・尾﨑治夫 ~コロナ禍で築いた医療システムをコロナ後の「超高齢社会」に活かす
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年1月11日 11時20分
東京都医師会会長の尾﨑治夫氏が1月4日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。地域包括ケアシステムについて解説した。
治す医療から支える医療へ
飯田浩司アナウンサー)会長は年頭所感で「治す医療から支える医療へ」ということを掲げていらっしゃいましたが、「治す」から「支える」というのは、どういう概念なのですか?
尾﨑)いままでは病気になったら治す。患者さんも治りたいということで、病院で病気を治すという意識だったのですが、簡単には治らない病気もあります。
高齢社会での「地域包括ケアシステム」
尾﨑)ガンもそうですし、脳卒中を起こすと、後遺症でいろいろな麻痺が残ることもあります。高齢者になって、繰り返し心臓を悪くすると、機能が徐々に落ちて来る。つまり、治りきらない病気や障害を抱えている方が多くいらっしゃいます。私のクリニックでも、大腸ガン、肺ガン、前立腺ガン、脳卒中、心筋梗塞など、10以上の病気を抱えている方がいます。でも、身体は弱っていますが、いまもきちんと過ごされている方がいるわけです。
飯田)それでも暮らしていらっしゃる。
尾﨑)そういう方は、単に病気を治すということではなく、いろいろな方がその人を地域で支えて行く。高齢社会では、これを「地域包括ケアシステム」と言うのですが、そういうものが必要になるということなのです。
飯田)地域包括ケアシステムが。
尾﨑)医療だけではなく、介護を含めて予防する、住まいをどう提供するか。あるいはその方の生活をどのように支えて行くか。いろいろな方々の協力体制で、その方を地域で支えて行かなければならない。そういう社会にしなければ、その方たちが暮らすことができない社会になってしまう。
チームをつくり、そのリーダー的な役割をする
飯田)いままでのお医者さんは治すことのプロフェッショナルで、どんなお薬を出したらいいかというような知識が中心だったけれども、コーディネーター的にいろいろな人たちを巻き込むということがお仕事の1つのテーマになって行くわけですか?
尾﨑)私たちがドクターになった40年前は、「患者さんに向き合って病気を治す」というドクターでよかったのですが、いまは患者さんの生活を支えるために、介護の方とどう協力するか、そこに福祉の方をどう入れて行くかということも考えなくてはならない。
飯田)40年前とは変わって来ている。
尾﨑)チームをつくり、そのなかのリーダー的な役割をする必要がある。そのためのコミュニケーション能力なども、今後のドクターには求められることになります。
コロナ禍で築いた体制をコロナ後の超高齢社会に活かす
新行市佳アナウンサー)お医者さんと地域や自治体の方々など、いろいろな人との関わりが大切になりますが、そういうネットワークはあるのでしょうか?
尾﨑)今回、コロナ禍のなかで、「自宅で療養せざるを得ない人を、みんなで支えよう」という見守り体制ができて来ました。その体制はコロナ後も、地域の高齢者や、弱者の方などを支える仕組みとして活かせるのです。
飯田)そうですね。
尾﨑)在宅医療の先生や、介護の方、訪問看護の方など、みんなが協力して、コロナ禍でやって行く体制をつくっているわけですから、それをコロナ後の、超高齢社会と言われる2025年からの社会に使えるのです。
飯田)コロナ対応もとても大変で、いろいろなところに負荷がかかったけれど、何かを残せるとしたら、これは大きなレガシーですね。
尾﨑)大きなレガシーだと思います。
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